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天鏡記  作者: 藤桜
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1-4

天文17年(1548年) 陸奥国会津郡黒川城

蘆名 四郎丸


1年がたった。

右衛門大夫から周辺の状勢を聞きながらいろいろこの時代の事を勉強していき、右衛門大夫の信頼を得るために頑張っていた。

その合間にできることとして、まず米の収穫量増加の為塩水選と正常植えを右衛門大夫に伝えたところ塩水選は出来るが正常植えはすぐには難しいとのことだった…

なんでも土地を均すだけで人も時間もかなりかかるとのいうのだ

そして俺に好きに出来る領地など無いというのもあった…

仕方ないので右衛門大夫の領地の土地で支障が出ない程度に試していくことが決まった。

なんでも右衛門大夫は越後国蒲原郡津川城の城主というのだ!

そんな重要な所の人材を俺の監視に置くな!!と父上に言いたくなったが、まぁそのおかげでこうしてある程度好きに出来てもいるのだ…

ただ右衛門大夫も他に勤めもあるのでずっと俺についているわけではない。

その間は母上に字の書き方等の手習いを教えてもらっていた。

成果としては俺の字が少しうまくなった程度…

「これから頑張って励めばよくなりますよ」

昔から字を書くのは得意じゃなかった為不貞腐れていら母上が笑っていた

そのおかげか少し雰囲気が前よりやわらかくなった気がする。

米の方はまだ収穫時期ではない為まだこれからといったところだろう。

さてどうなるのか…こればかりはその時なってみないとわからない。


右衛門大夫とも話しあった末に目指す所は富国強兵に決まった!!

しかし蘆名家は何だかんだでこの奥州では伊達家に次いで石高があるとの事だ。

その伊達家も今は父親の伊達稙宗と跡継ぎの晴宗とで内乱の真っ只中との事だ。確か天文の乱だったか?

まぁ父上が晴宗の方に味方した結果こちらが優勢に進めているらしい

俺は結果を知っているが…

確か公方様の仲裁で戦は終わったものの父親は隠居に追い込まれたんだったか⁇

やはり所々しかわからないというのは不便だ…

有名所の織田信長なんかはある程度分かるんだが…

とにもかくにも自分が今出来ることなんて殖産興業について考える事ぐらいだろう。

父上は金山開発に力を入れているとの事だがそれだけではまだ足りないだろう。

百姓兵から常備兵への移行に加えその常備兵を増やし養うための金銭、他にも外交政策などどれをとっても金がかかる…金がないわけではないと思うが湯水のように使えるわけでもない

どうしても領地に海辺が無いのが悔やまれる

この時代輸送経路がほぼ海路に頼っているところある。その為港のある所はおのずと人も金も集まるというわけだ。結果港をうまく使っている所は軍事外交の面で強い国ができるという事になる。

まぁ中には武田みたいに港がなくても強いところもあるが…あそこは甲州金もあるから一概には言えないけれども…

やはり海辺の領地を攻め取るしかないか?

ここから近いとなると直江津の港だがあそこは長尾家の領地だ!

どう考えたって攻めるのは分が悪すぎる!!

反対だと岩城か相馬だが…相馬は伊達を通しての同盟関係なので無理だが岩城は攻めれるはずだ!

問題は間にいる田村と岩城の同盟相手の佐竹か…

こうやって考えるとどっちもどっちな気がしてきて嫌になってきた…

取りあえず右衛門大夫が来たら相談してみよう!!

そう思いながら黒川城からの景色を見ながら考えていた。


天文17年(1548年) 越後国蒲原郡津川城

金上 盛備


今年も収穫の時期が来たか

四郎丸様から話を聞いた時は薄気味悪さがあったが、協力すると申し出て話をする内にあまり気にならなくなっていた。

そして自分の知っている知識で出来る事をしようとはじめられたのが米の収穫高を増やす事だった。

最初は半信半疑であったがこの光景を見れば信じも出来ようというもの!!

「まさかここまで変わるとは…」

眼前には明らかに例年よりも多くの稲穂が実っているのだ!!

最初は少しの土地で試す予定だったが戦に出ていないこともあり約半分近くの土地で試していた。

城下の百姓は驚き騒ぎ、指示を出した私を褒め称えるという嬉しくも少し申し訳ない気持ちもあった。

何故ならこの結果をもたらした功績は私ではなく四郎丸様に奉げられるべきものだからだ!

「しかしまた困ったことになってしまったな…」

ここまでの豊作となると殿にもしっかりと説明をしなければなるまい…

しかし四郎丸様の事は約束もあり全てを明かすことも出来ぬ

まぁ明日登城した時にでも四郎丸様と諮るとしようかの

そんな風に考えていた。


次の日登城し真っ直ぐに四郎丸様の所へ向かった!

普通に考えれば先に殿から挨拶に赴くのが先だが、他の方が挨拶をしているというのに甘えこちらに来たのだ。内心では助かったと思った。これで四郎丸様と諮る事が出来ると!

四郎丸様に豊作の件を伝えると「そうか!!よかった!!」と殊の外お喜びであった。

なんでも本当にうまくいくかわからなっかったらしい

実際に見て教えるのではなくやり方をただ教えただけというのが不満だったようだ。

しかし簡単に出歩けるわけでもないのだ

これは後々問題かもしれん…

それはおいておいて今回の件どのように殿に報告するか相談をはじめた。

「右衛門大夫が儂と話しているうちに思いつき実行してみた所うまくいった。ということで良いのではないか」

何とも軽く答えるものだと思ったものだ。

「四郎丸様それでは少し説得力に欠けるのではありませんか?正常植えはまだしも塩水選はどこの知識だと聞かれかねません」

四郎丸様は「それもそうか…少し考える」と右手の人差し指で頭を押しながら考えはじめた。

最近になって気づいたのだが四郎丸様は考え事する時必ずこのような行動をとる

はたから見ればどう見ても子供の姿ではない…

しばらくして「よしこうするか!」と四郎丸様が呟いた。

「明の時代の書物に廃れてしまったがそのような記述があったと聞いたことがあると。という事にせんか?異国の事なら早々簡単にばれる事もあるまい!どこで聞いたのか聞かれても噂話だったのでどこだかは忘れてしまったと言えばいい」

なんとも悪知恵が働くものだ…

確かにそれなら疑問がうかんでもそれ以上は聞いてはこないだろう。

「わかりました。取りあえず今回はそれでいきましょう!しかしいずれは四郎丸様の手柄にしなけば困りますぞ!四郎丸様は蘆名家の嫡男なのですからな!!

では某は殿へ挨拶と報告に行ってまいります」

「わかった!わかった!」と笑いながらこたえていた。


「殿!金上右衛門大夫挨拶と報告にまいりましてございます」

「おお右衛門大夫かよう来たな!して今回は何ようだ?」

相変わらず殿は儂に気さくに声をかけてくださる。歳が近いからもしれぬが…

「実はこの度の収穫量なのですが豊作となっております!実に例年の倍に近いほどではないかと思うほどです」

「なんだと!!倍とはどういうことなのだ!!」殿は目を見開き驚愕しておる。

その気持ちは私も思う。私もあの光景を見た時は驚愕したものだ。

それから私は四郎丸様と話しあったことをそのまま殿に伝えたのだ。

「ほう。四郎丸と話すうちに思いついたと…

まぁそのことはいい!今後他の土地でも試していってみよう!

結果次第では滅多なことでは食労不足になることもあるまい。なんなら他に恩を売れることも出来るかもしれんしな!」

「は!さようにございますな!!」

殿はご機嫌のようだった。戦の方もうまく事が運んでいるうえにこの度の報告だ機嫌良いのもわかる。

さて報告も終わったし下がるか…

「ところで右衛門大夫よ四郎丸の様子はどうだ?最近ではお千も普通の我が子のように接するようになってきたのでな!おぬしの意見も聞いておこうと思ったのだが!」

不意に殿から四郎丸様の事を聞いてこられた!さてどう答えるか…

ついでに四郎丸様出歩けるように許可ももらっておくか

「そうですね。相変わらず手習いや修練に励んでおります!まぁ他の稚児に比べれば明らかにでき過ぎの部分もありますが…間違いなく立派な蘆名家の跡継ぎになられるかと!

それと出来ますればこの機会に四郎丸様を城の外に出歩ける許可をいただきとうございます!!

早いうちから見聞をひろめるのも良いかと…」

「そうか…右衛門大夫がそこまで言うか…

わかった!四郎丸のことはその方に任せる!!許可も出そう。しかしその方の領地と儂の直轄地のみに限る事とする!!」

「は!!畏まりました!!」

そして私はその場を下がった。

よしこれで四郎丸様ももう少し自由に動けるだろう。

そんな事を思いながらもう一度四郎丸様の所へ足を向かわせた




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