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天鏡記  作者: 藤桜
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2-6

天文22年(1553年) 陸奥国耶麻郡猪苗代

蘆名 四郎丸


ダーン!

雷でも落ちたかのような大きな音があたりに響き渡った…

俺と共に来た護衛の者達が音に驚いているとさらにもう一発、

ダーン!

と音が響きわたる。。


「こうして直に見てみると凄まじい音だな」

近くで見ていたせいもあるのか耳がキンキンする…

「いかがでございましょう?

 四郎丸様がご所望された種子島は?」

簗田は笑顔を浮かべながら俺に聞いてきた。

「そうだな…

 自分で頼んでおいてなんだが凄まじい音だな。

 それに威力も大したものだ。弓とは比べ物にならないな」

俺は的にされていた鎧が地面に落ち、さらに命中した部分が穴をあけているのを見ながら言った。

「そうですね。威力は確かにすごいですが…

 射程や撃つまでの準備を考えると弓の方が取り回しは良さそうに思えます」

一緒に見ていた右衛門大夫が武士目線からの評価をしていた。

確かに右衛門大夫の言う通り撃つまでの準備などの問題点はある。

だがそれは数をそろえればある程度何とかなる事を俺は知っている。

まぁ銭は馬鹿みたいに掛かることになるだろうが…


「ひとまずは四郎丸様に頼まれていた種子島3丁、堺の納屋さんから仕入れてまいりました」

「あぁ、簗田ご苦労だったな。

 種子島の玉薬の仕入れなどこれからも頼むことになるだろうからよろしく頼む」

1丁は父上に献上しお見せするとして、あとの2丁は鍛冶師たちに預け量産体制を作らないとな


「これが最近噂に聞いた種子島ですかな?」

「叔父上とてつもない音でしたね。まるで雷でも落ちたのかと思いました」

種子島を初めてみるであろう清顕殿の反応は至極妥当な所だな。

だが月斎殿は種子島の存在を知っていたか…

「この度手に入れることができてな。

 せっかくだから二人にも見てもらった。月斎殿にはぜひとも感想や戦での運用方法などを聞いてみたいものだな」

俺が月斎殿に話をふると、月斎殿は少し考えた後答えてくれた。

「威力、音と共に凄まじく戦場で初めて見るもには脅威に映るでしょうな。

しかし運用方法は限られてくるかと。

籠城などでは使い道もありましょうが野戦では色々と使い勝手が悪く見えます。

ですが四郎丸様には何か考えがあるように思えますが…

と今のところ儂が思ったのはこのあたりですな」

感想を言い終えた月斎殿が意地の悪そうな顔でこちらを見た。

こういうところはやはり油断のならない爺さんだな。

「まぁ案はあるにはあるがそれはおいおい話すとしようか。

 さてそろそろ戻るとするか」

ひとまず一通り見終わったところで皆で屋敷に戻ることにした。


天文22年(1553年) 陸奥国耶麻郡猪苗代

蘆名 四郎丸


屋敷に戻り俺は一息ついていた。

清顕殿と月斎殿は着いて早々に連れ出した為、家族の元へ戻り片づけをすることになった。

「四郎丸様よろしいでしょうか?」

外で護衛をしていた平太郎が声をかけてきた。

「いかがした?」

「簗田様と一緒に来られていた商人が四郎丸様に会いたいと申しておりますがいかがいたしますか?」

あぁ…そういえばいたな

すっかり忘れていた…

「そうか…そう言えば時間をとる約束していたな。簗田も一緒なのか?」

「いえそれが…どうやら一緒ではないようです」

さてどうするかな

「お断りいたしますか?」

俺が迷っていると平太郎が声をかけてきた。

「いや会おう。

 平太郎悪いが右衛門大夫を呼んできてくれ。

 それと片づけで忙しいだろうが月斎殿にも声をかけてくれるか?」

「月斎殿にもですか?」

「あぁ…少し思う所があってな」

「かしこまりました」

平太郎が他の者に俺の護衛を任せ二人を呼びにむかった。


「四郎丸様お連れしました」

「入ってもらってくれ」

平太郎が段蔵という商人を連れ立って部屋に入ってきた。

段蔵は部屋に入ると一瞬表情が動いたがすぐに元に戻り戸の前に座った。

まぁいぶしがるのも無理はないだろう。

俺の隣は右衛門大夫はともかく月斎殿も座っていたのだから。

月斎殿には悪いことをしたと思ったが平太郎が言うには月斎殿にも気がかりがあるらしくすぐ同道してくれたらしい。

俺もそうだが二人もこの段蔵という商人に思う所があったらしいな…

「さて段蔵とやら俺に会いたいとの事らしいがいかな用向きかな?」

「まずは会って下さり、まことにありがとうございます。

 ただ内容ですが少々込み入った事ゆえこの場でお話して良いものか…」

そう言って段蔵は月斎殿に目をやった

「かまわない。この二人は私が意見を聞きたくて呼んだのだ。

それよりも込み入った話とはどういうことかな?」

段蔵は少し考えたところで話し始めた。

「実はある御方への支援をお願いしたいのでございます」

「ほう…支援か。詳しく話を聞いてみない事には判断が出来んが…

 してあるお方御方とはどなたのことかな?」

「ご内密にしていただきたいのですが先代の古河公方様に御座います」

まさかの名前が出てきたな…

俺はびっくりして隣に座っている二人に顔をやったが、二人も同じように驚いていた。

「公方様にご支援となれば吝かではないが詳しく話を聞いても良いか?」

「もちろんにございます。

 しかしその前に少々お人払いをお願いいたします」

そう言って段蔵は外に目をやった。

確かに俺の護衛で結構な人数が近くにいるからな

俺は右衛門大夫に言って人払いを頼んだ。

さてやっと一息つけると思っていたところで厄介ごとが舞い込んできたな…

どうしたものか…

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