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天鏡記  作者: 藤桜
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天文20年(1551年) 出羽国置賜郡米沢城

蘆名 四郎丸


とりあえず面倒くさい挨拶は終わったな。

大事なことなのはわかってはいるが、情報を漏らさないように話すのは気疲れするからな。

ただ残してきた母上から何か漏れるかもしれんが、そこは右衛門大夫がうまい事やってくれるだろう。

「さて嫡男の総次郎様のところへ行こうと思うが…えっと」

「中野常陸介様が家臣、遠藤内匠助基信と申します。某が総次郎様のもとまで案内いたしますのでついてきてください」

ずいぶんと温和そうな男だな。今までこういったタイプの人物と会ったことが無いせいかどことなく好感が持てるな。

「ところで遠藤殿、総次郎様はどのような御方であろうか?好みなどがわかれば話もしやすいのだが…」

「四郎丸様、某に敬称は不要にございます。

 そうですね…某は総次郎様とそこまで話したことがないのでわかりませぬが、次期当主になる為真面目に学ばれていると聞いたことがございます」

そんなことを言われても他家の目上の方と話すのに敬称を付けぬ訳にもいかないだろに…

俺が困っていると思ったのか、遠藤殿は「では内匠助とお呼びください」と言ってきた。

「わかりました。では内匠助殿とお呼びいたします」

内匠助殿は苦笑いしていたが納得してくれたらしい。

しかし総次郎様の事はよくわからなかったな…

仕方ない。あって確かめることにするか。


少し歩いていると素振りをしている子供が見えた。

「あちらにおられるのが嫡男の総次郎様にございます」

「鍛錬をしているなら終わるまで待った方が良いであろうな」

しかしこちらの視線に気づいたのかむこうから話しかけてこられた。

「内匠助、父上達の話し合いは終わったのか?」

「いえこちらの四郎丸様を総次郎様のもとへお連れするように命じられましたので、某達のみ座を下がったのでございます」

「ではこちらが蘆名家の嫡男か。

 四郎丸殿お初に御目にかかります。某伊達左京大夫が嫡男伊達総次郎にございます」

さすが伊達家の嫡男といったところか。

幼子にしか見えない俺にもとても礼儀正しく挨拶してくれた。

「総次郎様、私たちは従兄弟ですし総次郎様の方が年嵩なのですから、ぜひ四郎丸と呼び気さくに接してくださいませ。」

「そうか…なら私の事も総次郎で良い。

 それにしても四郎丸は幼いわりにしっかりしているようだな」

「それは某も思いましたな。まるで同じぐらいの年の者と話しているような気になります」

「総次郎様も内匠助殿もやめてください。私などまだまだでございます」

本当にやめてもらいたい。伊達家の人間にまで目をつけられると動きずらくなってしまう。

もう少し子供っぽいところを見せた方が良いか?

でも今更な気もするしなぁ…

「四郎丸、総次郎と呼べと申したであろうに…

 それにしてもせっかく四郎丸が来てくれたが何をしようか?」

そうだな…この機会に伊達の領内のことを調べてみるのも良いかもしれんな。

「総次郎様私は初めてこちらに来たので伊達家の領内でのことを聞いてもよろしいでしょうか?」

「領内の事か?それだと私よりも内匠助に聞いた方がいいであろうな。

 私も領内のことは知っておいた方が良いであろうし内匠助頼めるか?」

「わかりました。某が話せる程度の事で良いのであればお話いたしましょう」

そこから母上達が来るまで内匠助の話を聞きながらすごした。


天文20年(1551年) 出羽国置賜郡米沢城

伊達 晴宗


「蘆名家の嫡男を常陸介はどう見た?」

蘆名家の嫡男を見極めるつもりでこの米沢城を招いたわけだが、直接話す事はあまりできなかった。

代わりに姉上より話を聞こうとしたわけだが、話の途中で蘆名家の重臣が入ってきた為当たり障りのない話しか聞けなかったしな…

「某もあの場で印象のみになりますがとても利発そうなお子ではありましたな。

 一応家臣の遠藤をつけましたが、これといった情報はほとんど聞けなったそうにございます」

「そうか…詳しい情報をもっていなかったのか、それともあえて漏らさないようにしていたのか…どうみる?」

「おそらくは後者ではないかと。

 金上殿もこちらに情報を漏らさないように立ち回っておりましたし、あらかじめ打ち合わせていたのでは?ただそれをあの嫡男が考えたとは到底思えませぬが」

そうだな。儂もそうは思うがどうにも気になるな…

「もし気になるようなのであれば総次郎様をお使いになって如何ですか?」

「総次郎を使うとはどういうことだ?」

「遠藤の話によるとお二人は従兄弟同士という事で、とても楽しく話されていたそうにございます。

 であれば文のやり取りでもさせたうえで情報を聞き出させてはいかがでございましょう?」

ふむ。一考の余地はあるか…

しかし総次郎に出来るであろうか?

いやそこは儂や常陸介がうまいこと誘導すれば良いか。

「わかった。後で総次郎には儂から話をしておこう」

「それがよろしいかと思います。それよりも某が気になるの金上殿の方にございます。

 某が調べたところによると長尾家との同盟しかり、ここ最近での動きのほとんどに金上殿が関わっているとの事でございます」

金上か…今回の挨拶にも同行しておるし修理大夫殿も重宝しておられるのであろうな。

「では金上の方は常陸介に任せることにする。

 引き続き調べ何かわかり次第知らせてくれ」

「かしこまりました」


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