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天鏡記  作者: 藤桜
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天文19年(1550年) 陸奥国田村郡三春城

田村 月斎


「月斎叔父上とうとう蘆名家が攻めてきたがどうすれば良いだろうか?」

「正直に申しますと当家だけではどうしようもありませぬな。

敵の兵数は1万2千、こちらは集めても3千が限界です。

この場合常道は籠城になりますがその場合領内はひどい有様になるでしょうな」

「籠城か…そうなると相馬に援軍を頼むしかないか…」

確かにご嫡男清顕様のご正室を相馬家より迎えたが相馬だけではおそらく足りまい。

となるとどこに頼むか…

「殿”佐竹家にも援軍を頼み蘆名家と膠着したところで伊達家に仲裁を求めましょう」

「なぜ佐竹にも援軍を頼むのだ?相馬の力添えがあれば問題ないのではないか?」

「蘆名はこれだけの大軍を用意したのです。甘く見てはなりませぬ」

「それもそうか。わかった。叔父上の申す通りにしよう。

 それにしても蘆名家はこの時期によくもこれだけの大軍よく集めたものだ」

そう普通ならば刈入れ前のこの時期にこれだけの軍を起こすことはないはずだが、最近の蘆名家は領内が潤っているせいか物資が豊富だ。

「なんでも噂では蘆名家の嫡男のおかげで領内に人と物があふれているとか」

「叔父上…さすがにそれはないだろう。確か蘆名家の嫡男はまだ元服もしていないはずだ。

 そのようなものがその様なこと出来る訳もあるまい」

確かにその通りではある…

だがもし噂が事実であれば蘆名家には傑物が生まれたことになる。

これは戦の後に少し調べてみる必要がありそうだな。

とはいえまずは此度の戦を無事に終わらせることが先だが…

「それでは各家への連絡は叔父上に任せる」

「かしこまりました」


天文19年(1550年) 常陸国常陸太田城

佐竹 義昭


田村家の攻めの月斎殿より援軍を乞う使者が参った。

なんでも蘆名家から攻められているらしいが…

「禅哲と和田はこの援軍の要請どう思うか?

 なんでも蘆名家は1万を超える兵を出したらしいが、どう考えても田村は分が悪いと思うのだが」

「確かに分は悪うございますが、ここは田村に恩を売っておくのもよろしいかと」

「しかし禅哲様、此度田村家に援軍を送れば蘆名家はどう思いましょうか?

 後々厄介なことになりませぬか?」

「だが使者の話通り相馬も援軍を出すというなら、

我らが援軍を出せば兵の数はそこまで差はないはずではありませんか?」

二人の言い分は分かるがこちらも小田や里見、そして北条と考えねばならん。

特に北条の勢いは川越城で勝って以来とどまるところをしらない。

「禅哲の言い分はわかったがこちらもそこまでの兵は出すことは出来ぬぞ。出せても2千が限界だ」

「よろしいのではないでしょうか。

 先ほども申しましたが兵数の差が無くなれば蘆名も無理はしないでしょう。

 そうなれば両家で和睦という道も出てきますでしょう」

和睦の可能性か…それならばこちらも無理をする必要もないな。

それならば兵を出す事も問題ないか。

後は誰を向かわせるかだが…

「田村に援軍を出すことにする。

 大将は和田に任せる。しかし無理をする必要はない。

 状況によっては兵を退くことも考慮に入れて事に当たってくれ」

「かしこまりました。

 御屋形様がそう決めたのであれば従いましょう。」

さて使者に返書を書いて渡すとするか。


天文19年(1550年)出羽国置賜郡米沢城

伊達 晴宗


どうやら蘆名が田村を攻めるようだな。

しかしこちらは本城を移したばかりなうえに家中のいざこざを鎮めねばならん。

それというのも父上との長年による戦のせいではあるが致し方あるまい。

しかし父上にも困ったものだ。

公方様と蘆名家の仲裁でことを治めたというのに未だに不穏な動きを見せているとは…

「常陸介その方は此度の蘆名家の戦どう思う?」

「さすがに本拠の三春城まで落とすことはできないと思いますが、安積郡と田村庄の一部は蘆名家の領地になるのではないですか。おそらく相馬より援軍も来るでしょうし城攻めは苦労しましょう。

 そうなれば雪が降る前には蘆名家も兵を引き上げるかと」

そうだな。儂もそのあたりではないかと思っている。

田村も相馬も儂ではなく父上に付いた家だ。どれだけやられようともこちらとしては問題はない。

だが蘆名が大きくなるとこちらはどう動くかべきかそれが問題だな…

やはりさらに誼を深める必要がありそうだな。

「常陸介、確か蘆名の修理大夫殿には嫡男がいたはずだな?

 機会があれば一度会ってみたいのだが可能だと思うか?」

「そうですね、修理大夫殿の正室は殿の姉君ですからそちらに話を持っていけば可能性はあるかと御見ますが…いずれは伊達家から蘆名家に姫を嫁がせるご予定ですか?」

「ああ。いずれはと思っているがその為にも相手の器量を見ておくのは必要であろう?」

「わかりました。そういうことであれば場を整えるように手配いたしましょう」

さて蘆名家の嫡男の器量はどれほどのものか楽しみなものだ?

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