この『クウナ』と書かれたお弁当は、誰が何のために置いたのか?
なろうラジオ、投稿作の1000字未満の短編です。ホラージャンルに初挑戦してみました。すみません。私のメンタルは最貧弱なので、これでホラー小説のつもりです。(◎_◎;)
「なっなんだこれは? 」
会社で持ってきた弁当の蓋を開けて驚いた! 弁当箱いっぱいに白米がぎっしり詰め込まれ、上に海苔で 『クウナ』 とデカデカと書かれていたのだ。
思わず上げてしまった声に驚いたのか、オフィスに残っていた部下たちが怪訝そうにこちらを見ている。
慌てて弁当の蓋を閉め、膝に置いた。
結婚してもうすぐ30年、今までこんなことは無かった。
MAINで妻にメッセージを送る。
『今日の弁当はどういうことだ? 』
送信したら、少し頭が冷えた。
今朝、妻とは顔を合わせなかった。台所のテーブルの上に弁当が置いてあったので、そのまま持ってきたのだが。
この嫌がらせ、もしかして妻は俺に何か不満でもあるのだろうか? 確かに子どもふたりが進学の為に家を出てから、会話が減っているが……
悶々としていると返信が来た。
『なんの事? 今日のお弁当を、私が作れる訳がないじゃない』
それで思い出す。妻は昨日から実家の法事で、里帰りしていることを。
じゃあ、あの弁当は? 昨夜は確かに机の上には無かった。
そんななか、スマホを見ていて気が付いた。今日は10年前に亡くなった父の命日だ。
生前の父を思い出す。
父は息子の自分から見ても、自分勝手だった。家事は一切やらず子育ては全て母に任せっきりだった。
忙しく立ち働く母に、毎日弁当も作らせていた。にもかかわらず「忙しかった」「食べる気分じゃなかった」と言って、手つかずのまま持って帰って来ることも度々あった。
母が泣きそうな顔で弁当の処分をしていたのを、深夜の台所で見た事がある。
そこまで思い出し、ふと手元を見る。海苔で『クウナ』と大きく書かれた弁当を。
大人しかった母は、父が亡くなってから数年後、この世を去った。不満は沢山あっただろうに、何も言わず。
もしかして、この弁当は母からのメッセージ……
思わず己を顧みる。
今まで妻が弁当を作ってくれているのを、当たり前に考えてきた。一度として美味かったと礼を言っただろうか?
思い返してみれば、子どもが小さい時も仕事で疲れているからと妻の話を遮ったり……
今日は、妻が帰って来る前に夕食を作ろう。そして、今までの感謝を伝えよう。
いつの間にか、誰が弁当を置いたかなんて気にならなくなっていた。
手の震えにより、それはカタカタと音を立てていた。
目指したのは『世にも奇妙な物語』風の超短編。ホラーは難しい~( ;∀;)