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アンダーワールド  作者: そのAaron
第二章 募集試験
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Layer-006

締切日当日、倫也は校長室に呼ばれた。


最近、校則に違反するようなことは何もしていない。罰則ではなさそうだ。


校長室の前に着くと、すでに5人の生徒が待っていた。中には姉のリリコと凌奈の姿もあった。


「おっ、倫也!」


リリコが手を振る。倫也は軽く頷き、列の最後尾に並んだ。


リリコがいるってことは、大体の理由は察しがつく。


でも、凌奈はなんで?


彼女が北門連軍に入るとしたら、科学部のはずじゃ……。


そうこう考えているうちに、校長室の扉が開いた。


6人は順番に中へ入っていく。


校長室には校長だけでなく、何人かの体育教師もいた。


「6人か……。あなたたちは全員、『北門連軍』戦闘部の試験を受けるつもりだね?」


「はい。」


教職員の一人が校長の問いに答える。校長は数秒考え込んだ後、口を開いた。


「どう言えばいいのか、たった6人ですが、みんな学校の中でも優秀な人たちですね!野球部のエースや『北門連軍』の指揮官に師事した才女、高校生の部のトライアスロンチャンピオン、そして世界トップクラスのアスリートです。軍事学校ではありませんが、もし皆さんが試験に合格すれば、学校にとっても非常に良い宣伝になりますね。」


「ただ、軍事学校ではないので、その方面の教育は準備できませんが、もし少し体力を鍛えたり、施設を提供することが必要なら、学校は特別なカリキュラムを用意することができます。」


「はい!よろしくお願いします!!!」


誰かがやたら大きな声で叫び、周りの生徒は耳を抑えた。


「それにしても、雪山さんが戦闘部に行くとは意外だね。」


教師の一言に、凌奈は苦笑いを浮かべる。


「そして、時見さん、あなたの実力なら試験を順調に通過して、夢に一歩近づけるでしょうね!あなたがその才能を社会の平和維持に使ってくれることを嬉しく思います。」


「まあ、校長先生が言うほどすごくはないですよ。」


自分が褒められたことに対して、リリコは喜びを全く隠すことができなかった。


「ま、何か必要なことがあったら遠慮せずに言ってくれ。みんな、試験合格を目指して頑張ってくれよ。」


「はい!全力を尽くします!!!」


「よし、じゃあもういいだろう。みんな、自分の教室に戻ってくれ。」


「ありがとうございました!!!」


(……こいつ、マジでうるさいな。)


校長室を出ると、みんなバラバラに帰ろうとしていた。


が、例の大声の生徒が全員を呼び止めた。


「なぁ!せっかくだし、みんなで試験の対策をしないか!!!」


その提案に、何人かが足を止めた。


倫也は振り向きもせずに立ち去り、リリコと凌奈はお互いの反応を伺いながら、さらに倫也を引き止めるべきか迷っていた。


結局、二人はその場に残った。


「お互いに苦手な部分を補いながら練習すれば、効率よく成長できると思うんだ!」


「賛成!」


「……ん。」


「じゃあ、雪山先輩とリリコはどうする?」


「そうね……。確かに、こういうのは助かるかも。私たち全員、初心者みたいなもんだしね。」


凌奈がそう言うと、みんなの視線がリリコに集まった。


彼女は目の前の4人と、去っていく倫也の背中を交互に見つめ、悩んでいるようだった。


最後に視線を自分の胸元へ落とす。


「わ、あたしは……もうちょっと考える……。」


「まあ、そうだよね。だって、体育に関しては時見さんって世界トップクラスでしょ。」


「それな~」


「焦らなくていいよ!じっくり考えて!」


「ありがと……。」


そのリリコの反応に、凌奈は違和感を覚えた。


どんなに優柔不断でも、リリコはこんな態度を取るタイプじゃない。


その違和感は、放課後まで続いた。


いつものように校門を出ると、孤児院の子たちと合流した。


ただ、今日の3人の顔は、いつもよりずっと真剣だった。


「……本当に言うの?」


「まずは凌奈姉の意見を聞いてから……。あっ、凌奈姉!」


「ん? 何かあった?」


3人がヒソヒソ話しているのを見て、凌奈はさらに疑問を抱く。


口を開いたのは、廻だった。


「いやさ、凌奈姉が戦闘部を選んだの、びっくりしたんだけど。頭、打った?」


「打ってないよ。ちゃんと考えて決めたの。だって、『北門連軍』の他の部門って、科学系の知識が必要でしょ?私、文系なんだよね。」


凌奈は歴史が好きだった。


それは記憶を失った後でも変わらず、自分が覚えている数少ない「好きなもの」の一つだった。


彼女が語る物語は、孤児院の子どもたちの間で大人気だった。


話に抑揚をつけて語るのが得意すぎて、逆に「もう一話!」とせがまれ、寝る時間がどんどん遅くなることもあった。


「でもさ、それなら別に『北門連軍』じゃなくてもよくない?」


「格闘技だってできるし、戦闘部に入ればいろんな場所を回れるから、私たちの失った記憶を探す手がかりが見つかるかもしれないでしょ?」


倫也とリリコは、凌奈が自分の記憶を気にしていることに驚いた。


廻は深く息を吐き、こめかみに手を当てた。


「凌奈姉……。俺たち四人とも、記憶を取り戻したいのは一緒だ。でも、『北門連軍』の試験は甘くないんだぞ?リリコから聞いたけど、みんな、試験を甘く見すぎてる。」


「どういうこと?」


廻は、一度大きく息を吸った。


「……凌奈姉、電磁兵器の使い方、学びたいか?」


その言葉が出た瞬間、倫也とリリコは気まずそうに視線を逸らした。


でも、凌奈の脳内には衝撃が走る。


「……はい?」

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