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アンダーワールド  作者: そのAaron
第二章 募集試験
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Layer-009

「倫也!練習に付き合って!!!」


孤児院に戻ったリリコは制服を着替えるや否や、一直線に倫也の部屋へ飛び込んだ。そのとき倫也はベッドに座り、ヘッドホンをつけながらタブレットでアニメを見ていた。


「今度は何?」


問いかけると、リリコは体育館で起きた出来事を一気にぶちまけた。


倫也は少し考え込んでから答えた。


「そう言うけどさ、君、本当に練習が必要なの?」


「う…うん、やっぱり必要!」


少し興奮したリリコは、家族との距離感を気にすることなくベッドに上がり込み、倫也の顔の間近まで迫ってきた。


「近いって。」


「お願い!お願いだから!!」


「……わかったよ。週末に15層で場所探してやろう。」


これ以上リリコが迫ってくるのを防ぐため、倫也は仕方なく答えた。


「ありがとう!絶対助けてくれると思った!」


「僕を道具扱いしてない?」


「そんなことないよ!つまり、それだけ信頼してるってこと!」


「はいはい、ありがとさん。」


「何やってんの?」


隣の部屋から聞こえてくる騒ぎを聞きつけ、廻が様子を見に来た。


「倫也に試験の練習をお願いしてたの。」


「まあ、そんなとこ。」


「お、そっか?」と微妙な表情を浮かべつつ、廻は自分の部屋に戻ろうとしたが、途中で足を止めた。


「そういや、お前らの試験っていつだっけ?」


「二週間後の週末。」


「15層に行くなら、例の『アレ』を買っとけよ。」


「了解。」


リリコは倫也の部屋を出る廻を見送った後、首を傾げた。


「……『アレ』って、何?」



時の流れは早いもので、二週間があっという間に過ぎた。世界各地の高校生や大学生たちは、まもなく「北門連軍」の青年メンバー募集試験に挑むことになる。


凌奈たち三姉弟の試験会場は孤児院からかなり離れた場所に割り当てられていたため、一日前に出発しなければならなかった。


「着替えは持った? ハンカチは? ちゃんと準備できてるの?」


三人の受験者よりも、むしろ燈ママのほうが一番緊張していた。


「私は準備できたよ。」


「僕も、ほぼ完了。」


そのとき、リリコがリュックを背負って階段を駆け下りてきた。


「できたーっ!!」


孤児院のみんなが玄関に集まり、三人を見送る。


「凌奈お姉ちゃん、頑張って!」


「リリコお姉ちゃん、絶対みんなぶっ飛ばしてきてね!」


「試験、うまくいきますように。」


子供たちの声援が響く。凌奈とリリコは、それだけで胸の奥に力が湧いてくるのを感じた。


燈ママは三人が出発する前に、凌奈をぎゅっと抱きしめる。


「あなたたちなら絶対大丈夫。私はね、あなたたちのことを誇りに思ってるのよ。自分の足で未来を切り開いていきなさい!」


そう言って、三姉弟の肩を優しく叩き、激励した。


「じゃあ、駅までは俺が送るよ。」


「それじゃ、頼むわね、廻。」


廻がこの提案をしたのは、1016-136441区を出る三人を直接見送るためでもあったが、それだけではなかった。試験に持っていくものもあったのだ。


四人は倉庫へと向かう。


「最後に装備のチェックをしよう。予備電源も忘れずにな。倫也、充電はちゃんとできてる?」

「問題なし。」


姉たちはそれぞれの武器をバッグに詰めていく。一方、倫也が手にしたのは一本の機械式グリップのみだった。


凌奈はいまだに、倫也が言う「秘密」が何なのか分からずにいた。


タクシーを呼び、駅へと向かう。


今まで駅に来るのは、孤児院のみんなと一緒の遠足だったり、クラスメートとの旅行だったりと、いつもワクワクするような楽しい時間だった。


だが、今回は違う。三人とも、心の中に緊張を抱えていた。


「よし、お前ら。『北門連軍』からの通知には『合格』の二文字しかないからな!」


「それ、君が決めることなの?」


「だってさ、お前らめっちゃ緊張してるじゃん? だから、少しでも場を和らげようと……。とはいえ、三人の中で一番心配してないのは、やっぱり凌奈姉かな。」


倫也とリリコの視線が姉に集まる。ほんの少し緊張していた表情は、すでに闘志に満ちたものへと変わっていた。


「だよね、だってこれは『挑戦』なんだから。」


「倫也、君も凌奈姉の『挑戦理論』を受け入れるの?」


「いや、それはない。」


駅を向いていた凌奈は、くるりと振り返り、弟と妹を見つめる。


「あなた達、今までいろいろ隠しごとしてたみたいだけどさ、試験の準備を手伝ってくれたことには、ちゃんと感謝してる。ありがとう。」


不意に姉から感謝を伝えられ、三人はどう反応すべきか分からなかった。


「……は、はいはい、とにかく、早く行けって! 遅れるぞ!」


「廻、珍しく照れてる?」


「もういいから、さっさと行け!!」


「はいはい。」


三人は駅の中へと歩いていき、改札の前で最後に振り返り、廻に手を振った。


やがて、その背中は人混みに紛れ、視界から消えていった。


「……っ!」


突然のめまいが、天才のバランスを奪った。


霧が思考を覆い、頭の中に嵐が吹き荒れる。まるで、悪いことをした子供が母親に家の中へ閉じ込められたかのような罰が、廻を襲った。


「……最近、疲れてるのかな。」

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