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Session 2

結望

「こちらにいるアリスと、男女の触れ合いをしてください」


海斗

「……は?」


予想だにしなかった言葉のせいで、思わずタブレットを落としそうになる。


結望

「不明点は適宜アリスに。解決しない場合は私までお願いします」


海斗

「待ってください。あの、アリスってこの子のことですよね?」


結望

「はい」


海斗

「でも求人にはAIの仕事って……ていうか男女の……?」


アリス

「こういうことするんだよ~」


混乱する頭をどうにかして整理しようとしたその時、腕が柔らかな感触に包まれる。


見れば俺の腕にアリスが腕を絡めていて、形のいい胸がむぎゅむぎゅと押し付けられていた。


海斗

「お、おい!? 何して……」


アリス

「腕を組んでます!」


海斗

「そういうことじゃないから……! とにかく離して!」


アリス

「あれ? ダメ?」


海斗

「普通にダメ!」


アリス

「そっかぁ」


慣れない感触に慌てふためく俺の腕からアリスの温もりが遠ざかる。


海斗

(なんなんだ……)


結望

「……なるほど。今の様子を見る限り、見た目は合格と言えそうですね」


海斗

「え……?」


結望

「紹介が遅くなりましたが、この子はアリス。プロジェクトの要となる試験型AI搭載アンドロイドです」


アリス

「でーす♪」


海斗

「!?」


海斗

(アンドロイド? この子が……?)


生気に満ちた声、温かい体、くるくると変わる表情。

どこを取っても、俺の知る機械やAIとは異なっていた。


結望

「信じられませんか?」


海斗

「はあ、まあ……」


とはいえ館花さんはドッキリを仕掛けてくるようなタイプじゃないし、何よりそんな暇はないはずだ。


まだ懐疑的な部分は残っているものの、俺は事実を受け止めることにした。


海斗

「えっと、ひとまずアリスがアンドロイドだっていうのはわかりました。ただ、その、男女の触れ合いというのは?」


結望

「性交渉を含む心身の触れ合い、と言えばわかりやすいでしょうか」


海斗

(性……)


結望

「現在、世界規模で少子化が進んでいることはご存じだと思いますが。複数ある要因に男性の性への消極化も含まれています」


結望

「異性愛者ではあるものの、女性とのコミュニケーションに回避傾向を示す男性。彼らの苦手意識を取り除き、性への興味を促すこと。それがアリスに課せられた使命です」


アリス

「課せられた使命! なんかカッコいいよね!」


海斗

「まあ……そうかもね」


結望

「アリスにはターゲット層と触れ合う機会がなく、現状のまま果たせるとは言い難い。しかしそこに貴方が現れてくれた」


海斗

(つまり……アリスは冴えない男が人間の女性と付き合うための練習台で、俺は冴えないから内定をもらえたってことか)


海斗

(なんだかな……)


凡人中の凡人だという自覚はある。けど、多少なりとも実力で内定をもぎ取ったとも思っていた。

プロジェクトの荒唐無稽ぶりや知りたくなかった事実が、容赦なく心を折りに来る。


海斗

(けど、断ったら当然クビだよな。そしたらまたゼロから就活……)


少子化が進んでいるとはいえ今はAIや機械が発達している。

大抵の仕事において、人間はコスパに見合わないお荷物だ。


見ず知らずの相手から不要の烙印を押されまくった暗黒時代と、今の状況を天秤にかけるものの、答えなど出せるはずもなく。


海斗

(……今日のところは無難にこなして、帰ったらどっちがいいかソフィアに聞いてみよう)


結望

「他に質問は?」


海斗

「大丈夫です。どこまでお役に立てるかわかりませんが、頑張ります」


アリス

「うん! 一緒に頑張ろうね~♪」


結望

「話が早くて助かります。ではアリス、一条さんに業務内容のレクチャーを」


アリス

「はーい!」


元気よく答えたアリスが近づいてくる。

そして、俺の耳元に顔を寄せると――


アリス

「最初はわたしが先生だけど、これから色々教えてね?」


海斗

「……っ!」


先ほどから思っていたが、アリスは妙に距離感が近い。

きっと、ある程度は男が喜ぶ言動を学習しているんだろう。


海斗

(でも、機械は機械だよな)


一瞬ドキリとはさせられたものの、機械だとわかった以上、心も体の熱もすぐに冷めていく。


本当にこんな計画が上手くいくのか。仕事を辞めるか、続けるか。

いくつもの面倒ごとを頭の中から追い出した俺は、とにかく今日をうまく乗り切ることだけを考えていた。

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