第八話 武者震い
「お前ほんとに羽振りいいな」
「まあな、レンも頑張りたまえよ」
上からの物言いだが、言い返せない。
なんたってタケルが高級レストランを奢ってくれるのだから。
「それにしてもレン。頼みすぎじゃないか?」
「あのな、タケル。人はいつ人生が終わるか分からないんだぞ。だったら今のうちに贅沢をしないとだな……」
「金を払うのは俺なんだがな」
タケルのツッコミをよそに俺は追加注文をするためにメニュー表を見る。
値段は高いが、名前だけでも美味しい味が想像できる。
「このフカヒレスープ。お願いします」
店員に一言告げたその時、タケルが俺に指摘してきた。
「レンの携帯、震えてね?」
それを聞いた俺は携帯の画面を見る。
平川先生からだ。
俺は席を外してトイレに向かい、電話に出る。
「何ですか、平川先生。今忙しいので手短にお願いしますよ」
「そうか。簡潔に伝えると重要な依頼が入った。明日来い」
そう言い残して電話が切れた。
席に戻り、タケルが声をかける。
「誰からだった?」
「仕事だよ。タケルには言ってなかったが俺の職場は不定期なんでね」
「何だよそれ。自慢にもなってないぞ」
他愛のない会話を続けて、出てきたフカヒレスープを飲み干した。
あくる日の昼
いつもの道のりをたどり目的地に着く。
重要な依頼と言っていたが何が重要か検討もつかない。
俺はとりあえずドアを開けた。
「本当にやってくれるんですね」
その声が聞こえたのはドアを開けたすぐだった。
俺は声の方向へと目をやる。
すると依頼者と目があった。
依頼者はよれよれの服をきていて、靴もお世辞には綺麗と言えない。
「レン、遅いぞ」
平川先生に促され、席に座る。
「話を知らない人も来たし、もう一度依頼内容を教えてくれるかな?」
すると依頼者は手慣れたかのように話始めた。
「簡単にいうと、ある賭博の大元を破産させて欲しいのです」
「は?」
思わず聞き返してしまう。
訳が分からない。
「まぁ、初めて聞いたら驚くわな。私も最初は冷やかしかと思ったわ」
聞きたいことは山ほどある。
俺は一旦深呼吸をし、冷静を取り戻す。
「ある賭博とは?」
「沖縄に本部を置いてる違法賭博です。内容は……」
その時、平川先生は話を止めてきた。
「レン、依頼の内容は後で伝える。成功報酬は?」
「賭博で勝った金額全てです」
ますます訳が分からなくなってきた。
「なぜそんなことを?」
俺はそう聞くと、依頼者は目を悲しませて口を開く。
「私の全財産を奪った原因なんです。その賭博の大元に家族を人質に取られ、その賭博に賭けろと言われたんです。その結果全財産を失いました」
さらに依頼者は喋る。
「私はその大元が憎くてしょうがない。ただこのやるせない気持ちをどうにかできなくて……。そこであなたたちに頼ったんです。警察にも行きましたが相手にされなくて」
依頼者の目が潤んできた。
「分かった。依頼は成功させる。だから安心して私たちに任せろ」
その言葉を聞いた依頼者は目を拭いアパートを後にした。
「さっきから訳が分からないんですが……」
「ようは沖縄に行って、ギャンブルで大勝ちすればいい」
平川先生は腰掛け、笑いながら喋る。
「久しぶりだよ、こんなにゾクゾクした気持ちは」
俺はこの平川先生の発言に少し恐怖が芽生えた。
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