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第十話 前夜祭

 勝ちと負けが混沌とするこの賭博場。

 俺は平川先生の隣で賭博の様子を見ていた。

 平川先生が場にある山札からトランプを三枚、スーツの男性が次にトランプを三枚引いた。


 「なるほど……」


 平川先生が呟く。

 俺は先生の呟きが気になり、手札を見る。

 そこには十三のカードと二枚の十二のカードが引かれていた。


 「いきなりチャンスですね!」


 そう嬉しながら、小声で話しかける。

 しかし平川先生はここで長考した。

 なにかあったのではないかと考え、一つの結論に至る。


 「もしかして、お金を持ってくるの忘れたんですか!?」


 「ちゃんと持ってきてるぞ、私の全財産だ」


 そう言い、手元にあるポーチから札束を見せてきた。

 ざっと五十万円くらいの数だった。


 「そういえば、トランプが同数の場合はどうなるんだ?」


 平川先生がいきなり疑問を投げかけた。


 「おっと!説明し忘れてましたね。同数の場合は私の勝ちです」


 スーツの男性はそう答える。

 俺はそのことを聞き、不利だと思う。


 「こちらの不利ですね」


 平川先生に耳打ちする。


 「まぁ、焦るな。今日は負けにきたと言ってるだろ」


 確かにそう言った。

 ただやっぱり意味が分からない。


 「今日は視察を兼ねた日なんだよ。それに今日負けることで、明日絶大な意味を持つことになる」


 やっぱり意味が分からない。

 そう考えてるところに男性が答える。


 「そろそろ賭け金を……」


 俺はさっぱり忘れてた。

 平川先生に促すと、出した金額は三万円だった。


 「では、そちらの手札からトランプを二枚引かせていただきますね」


 スーツ姿の男性はそう言い二枚のトランプを引いた。

 引いたトランプは十二と十三。


 「そちらもトランプを引いてください」


 平川先生は男性の手札から二枚引く。

 出たトランプの数字はこちらと同じく十二と十三。


 「では見せ合いましょう」


 そして同時にトランプを見せ合う。

 場に出た数字はこちらが十二。相手は十三だった。


 「あらら、惜しかったですね~」


 男性はそう言い賭け金をとる。


 「チャンスだったのに……」


 俺はそう嘆き平川先生を見る。

 先生はかなり考え込んでいた。

 

 勝負は続いた。

 こちらが勝った勝負もあったが勝率でいうと三割前後。

 かなり負けが込んでいる。

 場にある山札がなくなりかけた時、俺はそろそろ引き上げた方がいいと考え、平川先生に声をかける。


 「もうやめましょう。また明日来ましょう」


 そう促すが先生は聞く耳を持たなかった。


 山札が残り四枚になった時、別の男性がトランプを追加する。

 残りのトランプを上にして追加した。

 その一巡後、またチャンスがやってきた。

 こちらの手札は十二が一枚。十三が二枚だった。


 「来ましたよ!平川先生!」


 小声で言うが、その声を抑えきれたか分からない。

 平川先生は今度は四万円を賭けた。

 相手がこちらの手札に手をかけ二枚引く。

 引かれたトランプは十二と十三。

 そして平川先生は相手の手札から二枚引き、出た数はまた同じく十二と十三。

 今回は勝ったと確信した俺だったがその期待は裏切られた。

 こちらと相手は同じ十三だった。


 そうして補充されたトランプがなくなりかけた時、平川先生は席を立つ。


 「今日はこんなもんかな」


 俺はやっとこの負けから解放されたのだ。


 予約していたホテルへの帰り道、俺は平川先生に質問する。


 「今回の戦果は?」


 「二十万負け」


 かなりボロボロだ。

 ただ平川先生は少し笑っていた。

 

 「なにか分かったんですか?」


 「まあな」


 「例えば?」


 すると平川先生は答える。


 「ゲーム性が分かったのさ」


 「何ですか、そのゲーム性は」


 俺はトボトボ歩きながら先生に聞く。


 「この勝負の肝は、同数だったら相手の勝ちというところだ」


 「確かに、圧倒的にこちらが不利ですもんね」


 「違う。そこじゃない。こちらが不利なのは当たり前だ」


 じゃあ何かと俺は問う。


 「結論から言おう。相手はイカサマをしている」


 「やっぱりか……。こちらのチャンスをことごとく潰していましたもんね。ただどんなイカサマなんですか?」


 俺には分からなかった。袖から出すといった行為はしていなかった。


 「かなり単純だよ。トランプがなくなったら補充していただろ。あの時残りのトランプとシャッフルしていたか?」


 「あ!していませんでしたね!」


 俺は気づく。


 「ていうことは、相手は引くトランプをコントロールできるということですか!」


 「そのとうり。ただ全部が全部勝つとさすがに怪しまれる」


 俺は平川先生の言葉を聞く。


 「勝負は最初。トランプの一番上だ。そこに十二と十三のトランプが交ざっている」


 平川先生は続ける。


 「さらにトランプをカウントしてみた。どうやら一山、一から十三が四枚づつの五十二枚で出来ている」


 「なるほど、ただどうやってこの賭博を勝てばいいんですか?」


 俺は頭の中を巡らすが検討もつかない。


 「たまには自分で考えないと頭はよくならんぞ」


 「もう成長期は過ぎてますよ」


 「まぁ、答え合わせは明日で」


 そう言い平川先生は俺の前を歩いて行く。

 ホテルに着いたが俺は安堵など出来なかった。

誤字脱字があったら教えてください。評価などをしていただくと物凄く嬉しくなるので是非お願いします!

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