昔話は早くに切り上げたい
「そうだな。あれは白星を拾って数年後だ」
***
「赫鴉はまだ部屋か」
長城砦の一画。
炎成筆頭エンルマは抱えている案件に四苦八苦していた。
「一週間になるの」
彼女は投影端末を開くといくつかのブレる情報画面を整理する。
一つは赫鴉の体調だ。
「尻の裂傷はもう塞がった、と」
***
「待て待て待て待て!!」
「んだよ、レイプされたんだから当たり前だろ?」
「チンコ挫傷なら分かるが、どうしてケツなんだよ⁉︎」
「私、当時は体が不安定でしたので」
「そういうことかよ!」
「いやー、コイツ人体形成マテリアルイジれる種族だからな」
「……じゃ、再開してくれ」
***
「おう! エンルマ師父!」
「おや、首鷹」
横から響く威勢の良い声は炎成邑の嫡子だ。
弟より十歳年上、彼と同じ鮮やかな赤の髪は綺麗に整えられて、その上背は遥か高い。
「ソッチはどうかの?」
「ハッハ! 無問題だ! 大事な未来義妹、丁重に眠らせておいたぞ!」
「そうかの。新薬の調子は万全じゃな」
緑髪のエルフは白星の体調がモニターされてる一枚を見る。
「にしても首鷹は元気じゃな」
「当たり前だろう? 今日もこれから愛しの妻達との夜伽なのだからな!」
「流石『胎動大巣』、女ネタには事欠かん」
それほどでもある、と首鷹。
彼は共有画面を開き、赫鴉の情報を見た。
「うむうむ。愚弟の尻も治って重畳重畳」
「良かないわ。いくら必要栄養素を生成出来るからって、引きこもって飯も食わんのはイカンじゃろ」
「命があるだけマシ、と考えられないか?」
それは最低限じゃ、と炎成筆頭。
「それもそうだ。して、師父。アイツは何か言ってただろう?」
首鷹の用件はこれのようだ。
彼女は端末を閉じると、
「合わせる顔が無い、じゃと」
溜息。
「それだけは引き出せたか」
「具体はもうしばらくかかるかの。ま、気長に、と行きたいところじゃが」
「義妹の件だな」
「やれやれ、手のかかる小童共じゃな」
エルフは二律空間に手を入れ、提灯パイプを取り出す。
中のヘロインを炙ろうと、指で火をつけようとした。
だが、トロ火どころかプスッと気の抜けた音しか鳴らない。
「ええい、まどろっこしい……!」
「本調子ではない、とはいえ流石は三禍憑だな」
首鷹は懐から術式符を出して、それが点火。
細い火がパイプを炙る。
エンルマはようやく中身が染み出した煙を肺に収め、諸々の感情ごと吐き出した。
「不甲斐ないの」
「愚弟達の問題だ。貴女が気に病むことはない」
「名を出した者の責任じゃよ」
炙ること幾許。
「不便をかける」
「いいさ。義妹の不機嫌程度、笑って許すつもりだとも」
「オヌシが良くても民はどうかの?」
先程の術式の不発。
現在炎成では、一定以下の出力や符などを介さない術式が不安定になる事象が発生している。
つまりは、インフラ広域に多大な障害が発生しているのだ。
その元凶が白星である。
「龍脈由来のバケモノと聞いていたが、中々どうして。領地全域がこうとは」
「緘口令を敷いてはおるが、いつまでもつやら」
「それが分からない愚弟達ではないだろう?」
「……信じておるのじゃな」
ぷかぁ、と円を吐き出す。
肺で接種した化学物質が、脳内を巡る覚醒で濁る心に傘をさす。
「ソイツが信じられない時に、ソイツを信じてやらないほど無情ではないのだからな」
「いつかオヌシを蹴落とすかもしれないというのに、温情じゃのう」
「その時はその時さ。ま、私の女に手を出すなら容赦はしないが」
「へいへい、ではの。ケツ追っかけるのもほどほどにな」
ああ、そうするとも! と首鷹は軽快に去って行った。
「ソッチは赫鴉の部屋なんじゃがな」
***
「愚弟はいるな」
疑問系ではなかった。
首鷹もまた炎成筆頭──エンルマに師事する武侠である。
聴勁にて部屋にいる弟の赫鴉を知覚しているのだ。
「返事はいらん。尻が治って良かった」
無音。
しかし、扉を境にいる少年の勁はどこか不安定に流れていた。
「白星なら安心するといい。私が抑えている」
兄は顔が見えないながら、弟が心配しているだろう事項を伝える。
流れてきた勁が少し落ち着いたのがその証拠だ。
だかすぐに濁る。
「確かに世間は龍脈不順で荒れている」
だが、と、
「お前が気に病むことはない。皆、天気が悪くて少し不機嫌なだけさ」
扉一枚隔てて、素直に流れてくる勁を読み取る。
いま一歩正常に流れないのは、何か引っかかるモノがあるからか。
「……なんなら私が引き取ってもいい」
ふと、流れが速くなる。
「『胎動大巣』の由来は知っているな。陽昇随一の好色漢。なあに、訳アリの女を引き取るなんて今に始まったことではない」
だから心配ない、と言おうとした首鷹の口が遮られた。
否、押し倒されたのだ。
「──ッフ! ──ッフ!」
「……どうした? 私は手に余る女を引き取ってやると言っただけだぞ?」
力任せに破られた扉から出たのは、頭髪の痛みが激しい赤髪──赫鴉だ。
久方振りに顔を合わせた兄弟は、兄が真っ直ぐに見上げ、押し倒している弟が顔を歪めて、口を固く縛り、目に一杯の涙を浮かべていた。
「……違う」
「何が違う?」
「それ、は、絶対、違う……!」
「何が違うか聞いている」
首鷹はウェイト差から、甘いマウントの取り方から容易にポジションを入れ替える。
愚弟、と彼は前置き、
「お前は義妹に犯され、泣き寝入り。それを私が助けてやろうと言うのに何が不満だ?」
「……知れてない」
「さっきから主語が抜けているぞ?」
「俺はアイツのことを何も知れてない!!」
赫鴉はとうとう泣き出してしまった。
***
「で? 弟泣かした兄の言い分はなんじゃ? わざわざ白星取るまで言って」
「愚弟がいつまでも愚図っているのが悪いでーす」
「うぅ……、えっぐ……」
「これこれ、ベソをかくでない。男前が台無しじゃぞ」
エンルマは泣きじゃくる赫鴉をあやして落ち着かせようと抱いていた。
とはいえ、十歳に行かずとも背丈が平均を遥かに越える彼を抱いているのは、小柄な彼女だといささか滑稽に映る。
「あのなぁ……、気長にと言ったじゃろ」
「ショック療法でーす」
「それで出てこなかったらどうするつもりじゃ?」
「殴ってでも連れ出しましたー」
首鷹は不貞腐れるようにそっぽを向いて答えた。
大人気ない対応の男に、エンルマはハァと呆れてため息。
「んじゃ、罰じゃ。赫鴉に動機を説明してやれ」
「……分かった」
ようやく顔を正面に向けた兄は、泣きじゃくる弟の目線に合わせて膝をつく。
エルフの師父も、腕の中の男をなんとか向かわせた。
兄はいいか、と前置き。
「義妹──白星も泣いていた」
赫鴉はそこで息を飲む。
「何故お前を襲ったのかは聞いていない。だが、暴れてる間ずっと泣き叫んで謝っていたぞ」
聞いている赫鴉は涙をこらえるように息をすすっている。
首鷹は弟の様子を見計らいながら、続ける。
「お前は言ったな。『白星の面倒は俺が見る』、と。普通なら投げ出しても良いとは思う」
だがな、と兄はつなげる。
「俺達は背負ってる立場だ。加えて白星は少なくとも何かしらを想っている」
真っ直ぐ見つめる首鷹と目を伏せる赫鴉。
兄は酷だと理解しながら、幼い弟へ自分達が立っている場所を諭す。
「泣くのはいい。けれど、言ったことを背負わず、想われている相手からも目を逸らすのは俺が許さん」
聞く少年は未熟をそれとなく分かっていながら、それを真っ直ぐ受け止められないことに憤りが処理出来ず、再び目に涙を溜めてしまった。
「皇族の義務か?」
エンルマが口を挟み、
「それでもあり、侠であるなら示さねばならない事だ」
師父も分かっているだろう? と首鷹。
「言わないと分からんからの」
エンルマはいつの間にかパイプをくゆらせて二人を見守っていた。
兄はそれを気にせず、師父に向く。
「貴女に教えてもらった『知らぬに振るう拳の傲慢』。道をつけたつもりだが?」
「ま、及第点じゃな。今度はもっと穏やかにするように。さて、次はオヌシじゃ」
エンルマはパイプで赫鴉をさす。
「本当は時間をかけるつもりだったんじゃがの。首鷹のアホが前倒ししたんじゃ。容赦なくいく」
ついてこい、と二人の師は彼らを先導した。
すすり泣く赫鴉は、しかし、覚束ないながらもそれについていく。
***
長城砦新設地下室最下層。
昇降機から降りて廊下を渡ると、分厚い耐爆扉があった。
「ここじゃ」
エンルマが扉に手を伸ばそうとすると、扉が勝手に開いた。否、倒れたのだ。
その先の光景は白い壁と天井に大小様々な破壊痕がある部屋だった。
「どうする? ワシが言った手前アレじゃが、今なら引き返せるぞ」
赫鴉は息を飲む。
いくらか泣きじゃくるのが収まっていた彼だが、扉の先にいる相手が分かってしまい、一歩が踏み出すのを躊躇っていた。
「半歩とケツは私が持とう」
すると、背後の首鷹が肩を叩いた。
彼は恐る恐る振り返ると、兄と目が合う。
「スパルタじゃのう」
エンルマは呆れながら扉の先へ進む。
それを赫鴉は見て、眉間に力を入れる。
そこから何度か深呼吸すると、震える呼吸で半歩を踏み出した。
「善し、いいぞ」
弟の両肩に手を置く兄は、宣言通りに半歩を押した。
半歩踏み出せば、半歩押す。
それを繰り返すこと、何度か。
耐爆扉を越えて部屋に入れたのだ。
「はく、せい……」
赫鴉はたどたどしくも、部屋で寝ている彼女に声をかける。
そこには四足。金色の小麦畑に似た体毛の大きなバケモノが寝ていた。
彼が言った通りに白星である。
「Gruru……」
気怠げに喉を鳴らして身を動かそうとする彼女だが、引きずるようにしか動かない。
しかし、それでも赫鴉から離れようとするのが見てとれた。
「想っておるって言っとらんかったか?」
「ハハ、恥ずかしがっているだけだろう」
二人の歓談を尻目に、赫鴉は白星をじっと見つめる。
それには自身を犯した生き物に対する鈍い刃のような痛みや、まだ捨てたくないという入り混じった感情があった。
「今日はここまでにするか?」
肩越しに兄からの勧め。
再会に喜びだけということはなく、締め付けられるような痛みもある。
今回はそれだけでいい、という思い遣りだろう。
だが、赫鴉は肩の両手を離すよう剥がした。
振り返って、揺れる心臓を抑えながら一礼。
「兄貴、有り難う。けど、俺は知りにいくよ」
「そうするといい。ちなみに、口説くコツは頷くことだ」
うん、と弟は受け止め、前を向くと恐る恐る歩を降ろす。
彼は一つ一つ、離れようとする四耳二角の獣より早く近づいて手を伸ばした。
数瞬止まってしまうが、袖口を引くように心細げに触れる。
***
白星はいなくなりたかった。
「白星、悪い。俺はお前を知らなかった」
今にも折れてしまいそうな赤髪の恩人が毛先を掴み、言う。
金の獣は喉を弱いが荒く鳴らして、なおも身を引きずっていた。
見られたくないものを見せて、あまつさえ大きな不義を犯して、自己嫌悪にまみれていたのだ。
謝るべきは自身であって、彼ではないと否定したかった。
「Guruu……」
けれど、今赫鴉の顔を見る勇気がなかった。
「辛いんだよな」
毛先を掴まれる力が強まる。
痛くはない。
別のところが痛いのだから、それが気にならなかった。
「今じゃなくていい。けど、言いたくなったらお前の辛さを教えてくれ」
幼い男は幼いなりに、知ろうとしている。
己が背負うと決めたのだから、背負うものの中身を知ろうとする。
「師父と兄貴が言ったんだ。『知らぬに振るう拳の傲慢』って。多分、俺はお前に振るっちまった」
白星は喉を鳴らすのも億劫になる。
体は沈静剤が効いて思うようにいかない。
自由が効くのであれば、飛びついて叱りたかった。
だが、思いが詰まる今は上手く喋れるだろうか。
「だって、あの時のお前は辛そうだったから。俺がなにかしてお前の辛さになった」
少年自身も辛い思い出なのに、俯いてでも思い返して犯された惨状を整理する。
「お前は俺になにかを見たんだろう?」
***
察しが良いのも考えものじゃな、とエンルマ。
彼女は赫鴉の聡さに呆れていた。
「師父はどう思う?」
いつの間にか隣に立っていた首鷹が問いかけてくる。
彼の手には無針機構注射器があり、白星の錯乱に備えていた。
用意がいいと思う反面、薄情ではとも少し苦笑する。
「どうもこうも、肉体改造の一環で生やすのや暗示、催眠でイジられたのがフラッシュバックしたんじゃろ」
「乳房に胎を植え付けられるなら、そういうのは朝飯前か」
「オヌシのシュミではないの」
横目で見る弟子の顔に暗い鋭さが宿る。
『胎動大巣』の名の通り、女を多数を抱いて孕ませているからこそ、義妹が受けた仕打ちが腹の底から煮え滾っているのだと感じている。
「それより、ワシは赫鴉の献身が頭にクる」
「ガキらしくないからか?」
「だって、理不尽振るわれたのはアヤツじゃろ? 怒るべきは赫鴉であって、ガキならガキらしく喚け。戯けが」
「私達はそうも言ってられないのが辛いことだ」
暗さから一転。首鷹は困ったように眉をすくめる。
自身が属する地位というのに思う所があるのかもしれない。
「……たまに自分の信条が嫌になる」
「私や妻達はそれに救われてきたのだが?」
「だからって、苦しむのを見るのは毎度シンドくなるんじゃ」
「だが知らねば何も始まらない。それは貴女が一番分かっていることだろう」
「ったく、誰かに教えを説く、とはいつも難儀じゃの」
***
『……犯した』
「おう」
赫鴉は兄の助言通りに頷いた。
喉から搾り出したというより、術式に乗せて頭に響かせる言葉だ。
彼は毛先と指からの接触回線による意思疎通だと理解する。
『貴方、の……』
「おう」
少年は腹の底が冷たく締まるのを感じる。背を伝う雫は粘り気があり、呼吸にも心音の早さが混じる。
それでも、聞きたかった。
『……』
「言いたくないなら、今日はもういい」
しかし、目の底が辛くなりながらも、相手の歩調を見定める。
『……ごめん、なさい』
「ああ」
今は引くと思い、毛先を離そうとした。
『ちがうの』
「……おう」
彼女がすがる。
引きずる身で向きだけを合わせた。
視線はその巨体と言えど、地に伏す彼女と彼では高さがあったのだ。
すがる雌は見上げながらも、目を伏せたかった。
「悪い、今膝を折ると動けなくなる」
笑いそうになる膝を気力だけで直立に縛ろうとするが、少し震えてしまっていた。
情け無い、と赤髪は鼻で息を深く吸う。
『……犯した、前に』
ざぐり
鈍い刃が身を荒く大きく削ぐ。
もちろん、現実ではない。比喩と分かっている。
白星が発する気配が、そう勘違いさせたのだ。
少年はこれを身をもって知っている。
「……そうか」
思い出しながらも、赫鴉は頷いて、その奔流に二足の錨を降ろしたままだ。
彼は白星の言葉を思う。
彼を犯すより前に犯した経験がある、ということ。
乳房までも生殖器に変えるような、肉体改造されてまで、囚われの身であった彼女が誰を犯せるのか。
少年はその考えをむごいと思った。
そして、まとめたことを告げる
「《《産んだ子を犯したんだな》》」
『……っ』
噛むような呻きが響く。
しかし、否定がされないという事はそういう事であった。
***
「どう見る?」
「用途は知らんが、濃く混ぜるのが目的じゃろう」
「……全くもって悪趣味だな」
「それだけ白星に価値を見出したと見るべきじゃな」
「悪者振るのは関心しない」
「こうでもしないとな」
エンルマは横に滴る薬液と血で出来た水溜まりに目をやる。
「心配するな。この鎮静剤はよく効いているよ」
「あとで医務室行くように。本来は白星用じゃからの」
「そうする。愚弟もそろそろ限界だろう。回収を任せたい」
「応」
緑髪のエルフはひと段落したであろう一人と一匹に近づこうとする、と、
「赫鴉っ!」
首鷹が倒れる弟を叫んだ。
***
「悪い」
「Grr……!」
豊かな毛並みに抱かれる弱々しい少年は謝る。
白星はこの日何度目かになる満足に動けない体を呪った。
「ええい、もうちょっと上手くやらんか……!」
エンルマはすぐさま駆け寄って、彼を介抱する。
剥がそうとして、彼女は未だに毛を掴む手に気付いた。
「俺も悪い」
冷や汗にまみれ、目を伏せながらしっかりと掴んでいる。
「お前を想っている感情の先を良く分かってなかった」
唾を飲んでせめて、と言葉を繋ぐ。
「嫌だよな。気持ちを一方的に向けられるのは」
この場を預かる師は呆れたように彼を支え、締めの言葉を待った。
「俺、もっとお前を知るからさ」
同じ髪色の兄も駆け寄って彼の言葉を聞く。
「お前と一緒に歩きたいよ」
そう言って、赫鴉は気を失った。
***
「という聞くも涙、語るも涙な過去があった訳よ!」
「ま、泣いてたのは赫鴉様だけですが」
「聞く限り、お前はお前でガチヘコみしてたようだが」
赫鴉、白星、黒狼は皇族専用居室で麻花(小麦粉を揚げた菓子)を三人でつまんでいた。
軽く固まっている揚げ菓子が、噛まれる程度で崩れる音を立てながら、それぞれの胃に収まっていく。
「まあ、これが転機で、あとは根気よくエンルマ師父とカウンセリングやら投薬やらで好転させていきましたね」
「あそこからイチャイチャ出来るようになったのも割と後だしな」
赤髪の少年は金髪の妻を膝に乗せてその肩に顔を乗せている。
妻も妻で肩に乗っている顔へ菓子を持って行っていく。
「……泣くというより焼けだな」
「お? 羨ましいか? お?」
「やかましい」
黒髪はつまむ菓子を手首のスナップだけで赫鴉の顔面に飛ばす。が、
「ふぁむ!」
口で受け取れられた。
そのまま口へ吸い込まれるそれを見て舌打ちが一つ。
「中央流の作法は随分とお上品ですね」
菓子が飛ぶ。
「はも」
白星もまた口で受け止めるのだった。
「お前らにムキになるのがアホらしくなって来たな……」
「そんなこと言わずにカマン!」
「継承一位には菓子投げマシーンの役目を与えましょう」
黒狼は半目になって麻花をかじる。
「ま、龍脈不順から回復の原因がノロケ話だったのは本当に胸焼けだがな」
「おう! 掘り返せばまだまだあるぜい!」
「どうせ夜ネタだろうが」
「よく分かりましたね。ま、赫鴉様はエロいですので。チンコも尻の味も上々です」
は? と皇太子。
「待て、待て待て……! 尻掘りでトラウマあったのに、なんでソッチに飛ぶ⁉︎」
「いやー、カタルシス療法の要領で生やしたりしてたら、俺が興味持っちまってな」
「私は嬉しかったですよ。こんなモノがあっても受け入れて貰えましたかたら」
「おう! 前立腺から結腸までドンと来いだ!」
夫婦揃ってのサムズアップ。
黒狼はこの色ボケ夫婦に頭を抱えるのだった。




