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そこまでするなら殺し合いだよね

 ビサニティ東部。


「おーう、やっとるのう」


 エンルマは草原地帯で提灯パイプをとろ火であぶりながら、ヘロインをふかしていた。


 視線の先は陽昇ヨウショウに向いていた。


 否、それより上。天空に浮かぶ都市戦艦を、と言った方が正しいか。


「全くだね。なんなんだい、ありゃ?」


 彼女の正面にいるのは、少年のような、いや少女と言えばいいのか、なんとも判断の困る顔立ちの幼げな人物がいた。


 口を曲げて、なにやら空の都市に眉をひそめている。


「飛行都市戦艦『東方不敗とうほうふはい』。ワシの最高傑作じゃな」


「自分で『最高傑作』とか言っちゃう?」


「なんじゃ? 人に出すモノに『粗品』とかの蔑称言うタイプか?」


「うーん、『自分で言うのは良いけど、他人が言うのは腹立つ』タイプ、かな」


 (仮として)彼は片手を腰に、もう片方を顎に添えて、思案する。


 ダブルスタンダード系か、とエンルマは呆れるながらも、パイプの中身を肺に隅々と行き渡らせている。


「静脈注射の方がもっとラッシュるんじゃないの?」


「そこまでの刺激は求めとらんわい。細く長く味わいたいのでの」


「そこで日和るんだ」


 両者の間に煙がくゆる。


「ところで、赫鴉カクアの呪殺はどこまで進んどる?」


「ああ、あれね。駄目だ。表層の千まではどうにかイケるんだけど、それ以降はすぐ呪詛返し(攻性防壁)に焼かれるや」


「なんじゃ、その程度で手こずっておるのか」


「腕の良い術師を雇ってるみたいだね。白星ハクセイちゃんや黒狼コクロウ君達にも仕掛けてるけど、大体同じトコで焼かれる」


「んでは、定石通りに物理干渉で殺るしかないかの」


 そうなるね、と彼は肩をすくめて首を振る。


 エンルマは二律空間にパイプをしまうと、抜く動作で大地から一本のひどく細い糸を取り出す。


「龍脈経由の有線接続……、よくもまあ、この荒れた脈の中やってるもんだ」


「羨ましいじゃろ。ワシにかかればこの程度、造作もないわい」


 彼女がひどく歪んだ顔で、喉を鳴らす。


 それと同時に糸を弾いて、鈍い振動音が響いた。


 光


 次いで衝撃波が天を揺らす。


 遅れてやったきた爆音が事の大きさを如実に表す。


 地平を埋め尽くす濁った爆発の光が、低空に乱舞。


 何万とある爆発物からの光であった。


「たーまやー!」


「……あの、鉄塊共、オヌシの子供じゃろう?」


「そう言ったら、白星ハクセイちゃんの子供でもでしょ? あと、鉄塊じゃなくて、スライム。ウーズでもいいよ」


 深い吐息。


 エンルマは糸を引き抜くと、それを束ねて棍を展開する。


「ま、弟子の子を殺した人でなしと、弟子に無理矢理子を産ませた人でなし同士、一方的に殺されてくれ」


「酷い言いがかりだな。そもそも産ませたのは君の弟子になる前なのに」


「可愛い弟子が泣くなら、その前後は些末じゃ」


 彼は明るい夜空でも映える淡い桜色の鉄傘を展開。


 開いたその下に涼しげな笑みが浮かんでいる。


「あーあ、あれ作るの結構大変だったのに」


「子供をアレ呼ばわりとは、品が知れるな」


「だって、母体を搾りカスのカスになるまで産ませて、ぐちゃぐちゃになるまでコテンパンに心をへし折らないと作れない代物なんだよ?」


「で? 発狂すると手がつけられなくなるから、術式で脳内分泌物を操作して無理矢理正気にした、と?」


「そ、そ。いやあ、致死量のボーダーが高くて助かったよ。色々無茶がやれて楽しかった」


「そうか、コチラも遠慮なく殺せるから助かる」


 エンルマは緑の耳長の中量級『鎧』を展開。


 対する彼も桜色の軽量級『鎧』を展開。


陽昇ヨウショウ所属。『十方不敗とうほうふはい』、エンルマ。推して参る……!」


「ビサニティ所属。『毒病蝕仙どくびょうしょくせん』、オウカ。まかり通る!」


 一合。


 地が裂け、月より明るい火花が散る。

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