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エピローグ 物語は永遠に続いて行く

「みんな準備は良い?」


「ええ」


「もちろんよ」


「大丈夫だ」


 三人は一斉に頷いた。

 みんな緊張してるわね、マリアったら普段しない化粧までしてるじゃない。


「サイリオン様」


「あ...ごめんなさい」


 女神を睨むなんて、良い度胸してるわね。

 それだけ待ち焦がれていたんだ、私もだけど。


「来たれ!勇者よ!!」


 王宮の地下室に設置された魔法陣を起動させる。

 今回も直接この世界に召喚させる。

 女神である私自身が、この世界で生きているからね。


 光が収まり、魔法陣の中に佇む一人の男性。

 17歳の若々しい姿に召喚が成功したと確信する。


「ケンジ!!」


「マリア、それにルーシー、ナシス、元気だったか」


 我先にと魔法陣へ入る三人。

 仕方ない、譲ってあげよう。

 だって、今回は()()()だから。


「あら、私をお忘れ?」


「サイリオン...」


 私を見上げるケンジの視線が熱い。

 我慢、我慢よサイリオン、今はね。


「...ケンジ」


 ゆっくりとケンジに歩を進める。

 彼はマリア達に組伏せられ、動けないでいた。


「...みんな若いな」


「ケンジもよ」


 みんなの姿に目を細めるケンジ。

 そりゃそうだ、前回の最後はみんな100歳近くまで生きたから。

 に、しても...


「そろそろ離れなさい」


 いつまでケンジに抱き着いているつもりだ。


「嫌...」


「...お願い」


「もう少し...」


「駄目です」


「「「チェ」」」


 三人揃って『チェ』って言ったな、私は女神だぞ?

 今は人間の姿で転生しているが。


「王国は?」


「大丈夫よ、今回も絶対にケンジを害さないから」


「そっか」


 ケンジが心配する気持ちは痛い程分かる。

 何しろ、最初の召喚では二回も裏切られたんだから。


「何かしたら絶対許さない...」


「...当然よ」


「そうしたら、また殺るだけ...」


 マリア達から殺気が迸る。

 忌まわしい記憶。

 最初にケンジが亡くなった後、私はケンジに授けた神のギフトで復活した。

 ケンジは言ったのだ、

()()()を回復してくれ』と。


 私は女神として復活を果たし、人間に罰を与える事にした。

 ただし無辜の民を殺したりしない、それは神として、やってはいけない。


 だが、同じ人間のマリア達はそうでは無かった...

 国王を始め、ケンジを裏切った者に容赦ない制裁を加えるマリア達。


 彼女達の怒りは凄まじく、私は国王達を何度も生き返らせてやるのが大変だった。

 そして私は罰は与えた。


[記憶の継承]

 国王達には殺される記憶を何度も頭に刻みつけさせた。

 それは何回巻き戻っても、生まれながら、ずっと記憶から消えない様に。

 だから安心、世界の国を始め、ギルドも教会も、ケンジを害する心配は無いのだ。


「魔王は?」


「大丈夫、大人しいもんよ」


「討伐しなくて良いんだな」


「「「「当然!!」」」」


 当たり前の事、ケンジを危ない目に遇わせるものか!

 本当なら魔王を先に倒しておきたいが、奴が居ないとケンジを召喚出来ない。

 だから魔王の存在は必要だった。


「ケンジに殺されたのが、余程堪えたのね」


 記憶継承は巻き戻り、生き返った魔王にも行った。

 以来、何回繰り返しても、魔王はずっと魔王領から出ようとしない。

 進攻すれば、最後に殺されると分かっているからだ。


「今回で...」


「4回目よ」


「そっか」


 4回目の召喚。

 ケンジが言った『全て元通り』を繰り返している。

 そして二回目以降は最後まで生を全うしていた。


「今回は?」


「私が聖女」


「マリアが?」


「ええ、前回は賢者だったから」


 マリア達の神託は二回目から変えさせて貰った。

 今回はルーシーが剣姫、ナシスが賢者。

 そして私はずっと女神、でも人間として生きている。


「...幸せだったな」


「そうね」


 ケンジの言葉にマリアが微笑む、前回二人は夫婦だった。

 その前はルーシー、そして...


「今回は私よ」


「サイリオンが?」


「ええ」


 今回は私がケンジと結ばれるのだ。

 順番はケンジを召喚前に話し合って決める。

 決してみんな同時に妻とならない。

 ケンジと人生を共にし、関係を結ぶのは一回の人生につき、一人だけ。


 それはケンジが決めたルールだった。

 そして彼は一人の妻を一途に愛する。


「宜しくね、ケンジ」


「こちらこそ」


 ケンジの手を握る。

 心が満たされて行く、神が人間を愛するのは変かもしれないが、抵抗は無い。


「次はナシスよ」


「...うん」


 小さな声で呟くとナシスは笑顔で頷いた。

 本当はケンジを元の世界に還さなければならないが、出来ない。

 女神として申し訳ないが、今は許して貰おう。


「今回は何をする?」


「そうだな、前回はマリアと冒険者だったから、

 今回は宿屋でもしようかな」


「良いわね」


「私も手伝うわ、治癒魔法でお客様を癒すの!」


「料理はこのルーシーに任せて」


「私は...近くで学校でもしようかな、せっかく賢者なんだし」


 勇者と女神が営む宿屋、楽しい人生になりそう!!


 新たな人生に胸を膨らませた。

ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] おお大団円。
[良い点] 裏切った結果、般若となったマリアとルーシーに殺される記憶を継承させることで反抗心を削ぐとは、面白い視点ですね。予想外でした。 また、あそこまで尽くしたナシスに救いがあってよかったです。 そ…
[一言] なるほどです。とりあえず魔王は国王よりまともでした。記憶を継承しておきながら国が存続しているのが凄い。国民ほとんどが裏切っているので、国民が鬱になっていてもおかしくないんですけどね。 良い具…
感想一覧
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