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ほのぼの溺愛しています。

今日は学園の入学式。

学園の正式名称は魔法王立学園と言うんだ。

王城から学園までは馬車で15分ほどかかる。


僕は今、理性が欲望と戦っている最中なんだ。

理由かい?

馬車にリリーを乗せて隣に座るのは僕。

僕の前にはウイリアムが座ってる。

ウイリアムも入学の前日から王城の敷地内にある騎士団の宿舎に引っ越しているから、護衛騎士として一緒に登校している。


分かるかい?

いつもリリーと馬車に乗る時は対面なんだ。

それが今日からは隣!

学園に行く時はウイリアムも一緒だから、これからは毎日リリーの隣なんだよ!乗ってから気付いたよ!


リリーからすごくいい匂いがするんだ!

それはもう()()()()()()欲がね!

腰にしようか肩にしようか手が動きそうになるたびに、前に座るウイリアムの靴の爪先が僕の靴の爪先に当たっては理性が勝ってるんだ。


ウイリアムがいなければ対面なのにと思うのと、リリーの隣に座れて嬉しいけど理性を保つのが大変でウイリアムがいてくれて良かったと思うのとで、僕の頭の中は大変な事になってるんだ。


「アンソニー様?緊張されてるのですか?」


「そうなんだ。リリーが隣に座ってるから嬉しくてドキドキしてるよ?」


「ありがとうございます。私も嬉しく思いますわ」


ふわりと頬笑むリリー。

可愛い。リリー?ドキドキはスルーなの?

いつもの調子で何よりだね。僕の頭の中はリリーでいっぱいだけどね!


コツンと僕の靴の爪先にウイリアムの靴の爪先が当たる。


ウイリアム。絶妙なタイミングをありがとう。

君のお陰でリリーを僕の膝の上に乗せて抱き締めて匂いをかぐ事が阻止されたよ!

母上!密室の中で近い距離で隣にいるのは、理性が危険だと初日から理解したよ!

15分て意外と長く感じるものだね!


ウイリアムのお陰で無事学園の馬車止めに着いた。

ウイリアムが扉を開けて先に降り、周りを確認して頷くのを見て、僕も降りてリリーをエスコートするために手を差しのべた。

リリーの手が僕の手に添えてステップに足を乗せるとピタリと動きが止まったんだ。


「リリー?どうしたんだい?」

リリーの表情が一瞬強張った…?


「…っなんでもありませんわ」

リリーは僕の声で我に返った様で動き始めた。

何事もないように振る舞っていたから、僕はそのまま歩いて入学式のホールへエスコートして向かったけど、リリーは僕の手をきゅっと握っていた。


入学式中リリーは僕の手をきゅっと握っている事に気付いてないんだ。

話も聞いてない様で考え込んでる。


何か気になる事があった?


ウイリアムに目を向けるけど、特に何かあった様子は

ないみたい。

僕はリリーの手を両手で包み込んでみたけど、大丈夫かな?

リリーが気になって、式の話が頭に入ってこないよ。



「本日の入学式はこれで終了ですが、新入生の皆さんに周知してもらいたい事があります」


学園長が再び壇上で話出すと、リリーの意識が戻ってきた様で、僕の手を握っていた力が弱くなった。


「王族の方が入学する年は、王子と王女には護衛騎士が着くことはご存知でしょうが、今年は異例にミラ・ハークスレイ伯爵令嬢にも護衛兼執事見習いが付きます。

本人が入学式にいないようなので紹介は出来ませんが、ハークスレイ伯爵から相談を受けましてご令嬢と面談した結果、怪我をする危険性が多くありすぎるため、護衛兼執事見習いが付きますので周知してください。


それから、教室からの距離のある移動などでは、護衛兼執事見習いの者がハークスレイ嬢を抱き上げて廊下を移動する事がありますが、時間短縮のためなので気にしないようにしてください。

周知してもらいたい事は以上です」


学園長の話に皆ポカンとしてるよ。

話聞くだけだとそうなるよね。

リリーも不思議そうに周りを見渡して首を傾けてるね。その仕草も可愛いね。


その後、後ろの席から順に退場して行くから、リリーの離れなかった手をそのまま繋いで教室へ向かった。


教室へ着いたからリリーの席の椅子を引いたら自然と座ったよ。

僕はリリーの隣に座る。


リリー?僕にされるがままだけど大丈夫かい?


リリーは席に座るとキョトンとした顔してるよ?

リリーの中で何があったのかな?


不思議に思っていると、教室の入り口からほんのり淡いストロベリーピンクにグラデーションのように毛先に向けて淡いピンクベージュになっている髪色をしたご令嬢が入って来たよ。


リリーの席の前に来ると躓かれ、体が倒れていくところを、後ろにいたご子息がさっと抱き止めたかと思うと、ご令嬢を縦抱きにして歩き出して窓際の一番後ろの席へ向かいご令嬢を席に座らせ、ご子息はその後ろにある椅子に座った。


ああ。今のがハークスレイ令嬢だね。

護衛兼執事見習いの彼も上手く立ち回ったね。

()()()倒れていく姿を見せてから抱き止めて、ご令嬢を抱き上げて席に座らせるなんて、説明しなくても皆が学園長の話を納得するよね。


頭が切れるタイプかな?

長身で細身だけど、ほどよく鍛えてるよね。

凄い、彼は僕の理想の体型してるよ!

彼みたいに僕もリリーをさっと抱き上げたいよ!


トンッと腕を軽く叩かれて我に返る。

隣に座るウイリアムが僕の腕を軽く叩いたのだ。


ウイリアム、リリーの事を考え始めたのをよく気付いたね?

もう少しで口から駄々漏れそうだったよ。


え?彼の仕草を見て、僕は目を見開いて見てた?

彼が僕の理想の体型だとすぐに分かった?

なんでだい?

え?目がキラキラしてたから分かるって?


そんな事を小声でウイリアムと話してたら、その後すぐに先生が教室に入って来た。

今日は自己紹介と明日からの日程と教材を受け取り終了。


自己紹介の時にハークスレイ嬢の護衛兼執事見習いの名前を聞くと、リリーが考え込み出したと思ったら嬉しそうな表情になったよ!?

何か決意したみたいで、両手をぐっと握り締めてるよ!?

彼が気になるの!?

僕はリリーの事で悶々としながらその日は帰ったよ。


次の日からリリーがハークスレイ嬢の護衛兼執事見習いのマーフィー様を気にするかと思っていたけど、まったくそんな素振りを見せずに穏やかな日常を過ごして1週間が経った。


毎日平和に過ごしてるから気のせいだったのかな?


講義が終るたびにリリーと話せる…

毎日一緒に行動出来る事がとても嬉しい。

隣を見ればリリーがいる。

ニマニマと顔が緩みそうになるたび、ウイリアムが誰にも分からない様に腕を軽く叩いてくれるのがとても助かっているよ。

なんて頼もしい護衛騎士なんだ。

ウイリアムは僕の護衛騎士兼側近兼従者じゃないかな。


「アンソニー様、学園の一部に手すりがありますわ」


「リリーも気付いた?なんでもハークスレイ伯爵が支援して、春休暇の内に1学年の夏休暇までに使う場所を急遽付けたそうだよ」


「そうなんですの?」


「夏休暇中には全校舎に付ける予定だと聞いたよ。ご令嬢の癖を学園在籍中になくさせたいようだよ」


僕はクスクス笑いながらリリーと会話する。

ハークスレイ伯爵の過保護ぶりに微笑ましく思うよ。


光魔法は希少で、今まで貴族からは光魔法を持つ者が現れた事がないんだ。

私利私欲で光魔法の子供を養子にして不当な扱いをする貴族が過去に多くあった。

浅薄(せんぱく)な貴族が後を絶たなかったため、光魔法を発動した子供が現れると、保護して護衛を付けるのが風習になった。

その後、光魔法の子供を不当に扱った貴族達は悲惨な末路を辿っていた事が明らかになると、そんな事をする貴族は少なくなった。

いなくなったのではなく、少なくなっただけなんだ。

いつの時代も浅薄(せんぱく)な人間はいなくならないものだね。

ご令嬢はいい人の所に養子になった様で良かったよ。


そんな事を話していたら、あっという間に1週間が過ぎた。



週が明け、毎日リリーを愛でるのが日課になってきたんだけど、リリーはハークスレイ嬢を頻繁に気にし出した様だ。


始めはマーフィー様を気にし出したのかと焦ったけどよく見て見れば、ある日、抱き上げられるハークスレイ嬢を見てほんわかしてたから、気になるのはご令嬢の様だと安心した。


マーフィー様に抱き上げられるハークスレイ嬢の様子が可愛らしいからか、周りを見ると微笑ましそうに見ているクラスメイトが多いしね。


まだ一月(ひとつき)も経っていないけど、クラスのご令嬢、ご子息からは見守る会でもあるかの様に彼女を見てるよ。


「ハークスレイ様を見てると微笑ましいですわ」


「リリーもかい?異性とあんなに密着してるのに、一生懸命に頼らないようにしてるのが微笑ましくて、マーフィー様に抱き上げられるとほっとしてしまうよ」


「恥ずかしがられて可愛らしいですわ」


「そうだね。彼に抱き上げられるのに慣れないうちに癖が治るといいね」


僕の言葉にリリーが明らかにホッとして安堵してるよ?


あれ?

リリーは僕がハークスレイ嬢の事を気にしていると思っていたのかな?


…………!


もしかして、今までの可愛いと思っていた仕草は僕にアプローチしてたのかい?


ちょこちょこ可愛らしい事をされていたから、嬉しくてニコニコ微笑むばかりだったんだけど。


学園に入ってから少し雰囲気が変わってますます可愛いと思っていたけど、まさか心境の変化があった…?


え?それで可愛さが割増になってるの??


ウイリアムを見てもリリーの変化に気付いてないみたいだし…


僕の溺愛が増しただけかな?


僕はコテリと首を傾けるも疑問は解決しなかったよ。


リリーはその後もハークスレイ嬢を見ていた。

と言うか、観察してるのかな?


今日の講義が終ると、リリーから少し用事があるから帰るのを待ってほしいと声をかけられたから、ウイリアムと教室で待つ事にしたよ。

僕は教室に誰もいなくなってからウイリアムに問いかけた。


「学園に通いだしてからリリーの雰囲気が変わったと思わない?」


「そう感じますか?」


「うん。可愛さが増した」

頷きながら真顔で言ったら、ウイリアムが呆れた顔をした。


うん?いつもの事だと思っているかい?

根拠はあるよ?


「最近、リリーからちょこちょこ可愛いらしい事をしてくれる事があって嬉しくてね」


「…気付きませんでした」


「あの仕草に気付くのは僕だけでいいよ」


「…それなら俺に問いかける意味あります?」


「ないね」


僕の言葉に思わず素が出てしまったウイリアム。

一人称が『俺』になってるよ?


あれ?

僕のリリー大好きが駄々漏れしただけになったかな?



「お2人共お待たせしました」

リリーが教室に戻って来たので、王城へ帰るよ。



「ウイリアムがリリーの可愛い変化に気付かないなんてどうかしてるよ」


「その変化に気付くのはご自身だげでいいと殿下は言ってましたが?」


「そうなんだけど、そうじゃないんだよ」

学園が終わり、執務の時間にポロリと独り言を言ったら、ウイリアムに気付かれてしまった。


「学園生活でローズマリー嬢に変化がありましたか?」


「ウイリアムにその変化は気付かないですよ」


「どうしてだい?」


「ウイリアムは殿下の護衛騎士ですから、気にする対象が違います」


「ローズマリー嬢に気を配る事は出来ても、些細な変化は殿下しか気付かないですよ」


年上の側近達はウイリアムの立場を教えてくれる。


なるほど。

僕しか気付かないか……


「「「殿下………」」」


おっと。いけない。

顔がニヤけてたのを見られて、3人に呆れられたよ。

仕事を真面目にしますか。

その日の執務と勉強は、いつもより(はかど)った。



次の日の朝の馬車の中。

「アンソニー様、私今日の講義が終わった後に用事がありますので、アンダーソン様と先に王城へお帰りください」


「そうなのかい?今日は王城での教育はないから待っていられるよ?」


「ありがとうございます。ですが終わる時間がわからないのですわ」


「それなら仕方ないね。アンダーソンと先に帰るとするよ。僕が王城に着いたら馬車は学園へ戻るよう伝えておくよ」


「はい、ありがとうございます」

リリーと2人でのんびりお茶出来る日だけど、用事があるなら仕方ないよね。


僕がしょんぼりしていると、心なしかリリーもしょんぼりしている様に見えた。


あれ?

リリーも残念に思ってくれてる?


今日はいつもよりたくさんリリーを愛でたよ。

休みの日に一緒にすごさない事が初めてだからね。

ウイリアムが引いてたけど、仕方ないよね?

愛でられる時に愛でないとリリー不足になるからね?


1日の講義が終わり、ウイリアムと王城へ帰る。

今日はウイリアムも休みだから、王城に着いたら別れた。


リリーとすごさない初めての休日。

服をラフな格好に着替えてソファーに座る。


何しようか?


休日は必ずリリーとずっとすごしていたから、晩餐の時間まで手持ちぶさただ。


そうだ。

仕事を手伝いがてら彼らに聞いてみようかな。



カチャリ


「殿下?どうされました?」


「今日は休みですよね?」


執務室の扉を開ける音に振り返った年上の側近達。

僕に気付くと目を丸くさせた。


「今日はリリーとすごせないから仕事を手伝いながら聞いてもらおうかと思ってね」


「他になさりたい事すればよろしかったのに」

しょんぼりしている僕に苦笑いする2人。

2人が手に持っていた書類をちゃっかり渡されたよ。


「今日はリリーが用事があるって朝に言われてしょんぼりしてたら、心なしかリリーもしょんぼりしてたんだよ」


「ローズマリー嬢も楽しみにしてたんですね」


「いい傾向ではないですか」


「やはりそう思うかい?」


「「だからって大好きを多く出しすぎてはダメですからね」」


「あ、はい」


バレてました。


「王妃様にも言われてますよね?」


「うん。『大好きは少しずつ多くしていくのよ』って言われてる」


「この機会にもう少し多くしてみてはいかがですか」


「ローズマリー嬢の気持ちの変化がある様に思いますし」


「大丈夫かな?」


「「なるようになります」」


「そうだね。愛情表現をもう少し出そうかな。言葉や態度では示してきたけど、もっと直接的な行動も必要だよね?」


「「やり過ぎには気を付けてください」」


「ふふっ気を付けるよ。頼りになる2人がいて助かるよ」


「「恐れ入ります」」

その後少し仕事をして執務室を後にした。




次の日。

今日はリリーとランチが出来る日。

リリーは週の2日はご令嬢達と、週の3日は僕とウイリアムと側近候補の3人とランチをしているんだ。

食後のティータイムの時にリリーが緊張ぎみに話しだした。


「アンソニー様、私ハークスレイ様からマーフィー様との関係を教えてもらえましたの」


「いつの間に仲良くなったんだい?」


「ふふっ秘密ですわ」


「それは妬けるね。それで何を教えてもらったの?」


「ふふ…っそれはですね、お2人は恋人なのだそうですわ」


「なるほど…それなら微笑ましく見えるはずだね」

リリーが緊張ぎみだったのは、ハークスレイ嬢の話だったからかな。

僕の言葉に明らかにホッとした表情をした。

心配しなくても僕はリリー一筋なのに伝わってない所も可愛いよね。

全員の反応を気にしてるみたいだけど、他の者はどうかな。


「そうなんですか?恋仲だったとは気付きませんでした」

ウイリアムは驚くだけで特に気にする様子はないね。


「へぇ…あの2人は恋人同士なのにイチャイチャした感じしないね?」


「確かに。マーフィー様が抱き上げて移動してても微笑ましく思うだけだよね」


「見ていて微笑ましい恋人同士なんて珍しいね」


側近候補の3人も驚きはしたものの、嫉妬する様子もなく2人の関係に微笑ましそうに話すだけだった。

ここで横恋慕する思考にいってたら、側近候補から外れる事になるから良かったのかな。

リリーも全員の言葉に安心したのか柔らかな表情をしているよ。


ねえ、リリー?

君の可愛らしいアプローチはもっとしてくれていいんだよ?

芽吹いてくれた花を大事に育ててね?

僕の大好きも少しずつ多くしていくからね?

直接的な行動もするから可愛らしい反応をしてくれる様になったらいいな。

そしたら僕の想いを伝えるから、溺愛している事に気付いてね?




最後まで読んでくださり、ありがとうございます!



同じ登場人物シリーズでまとめてます。



コメント返信はしませんが、もし書いてくださったら、大切に読ませてもらいます。



誤字報告ありがとうございます!訂正しました。


風習を慣習に教えて頂きましたが、調べましたら


『辞書によっては慣習と同義に書いてあるものもあります。

風習と慣習との線引きはあいまいなようです。


風習も慣習も、特定の地域社会の中で長く決まりごとのようになっていることを表わしますが、慣習が生活に密着したことを言うのが多いのに較べて、風習は主として伝統行事や歴史的・風俗的な場面でよく使われます。


慣習よりも、かなり古くから伝統的に行われていること、他の地域ではやや特殊なことを指すことが多いようです』


との事で、悩みましたが歴史的・風俗的な場面かなと思い『風習』のままでしました。



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― 新着の感想 ―
[良い点] まさか王子が身内から釘を差されて溺愛をセーブしていたとは……リリアン嬢よかったね!両想い!! [一言] この先少しずつ溺愛を見せていくのかな、リリアン嬢が慌てふためきながらも必死に愛を受…
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