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血まみれた墓標に愛をこめて  作者: 千鶴
わたしのはじまりと、おわり。
7/13

密談

「良かったの?」

「…何が?」

「あの子…極力関わらないようにするんじゃなかったの?」

「そのつもり…だったけど。少し…怖いんだ。あの件もあるし…」

ルナはキョトンとした顔で尋ねた。


「あの件…ってああ、あの…」

フィリアは少し険しい顔になると黙って頷いた。

ルナは納得がいかないような表情だ。だがすぐルナは思い出したかのように

「あ、そうだ。さっき言ってた覚悟しておけって、もう何か知ってるの?」

「それは…」


「数日前から屋敷の雰囲気が違っててね」

「雰囲気?」

「ああ。今から…3日前か。探りを入れたくて屋敷に潜入した」

「はっ?!」

ルナは呆気に取られてしまった。3日前?確かにあの日は朝から出かけて夜に帰ってきた。屋敷に行っているのは知ってたけどまさかそんな大胆なことをしてたんて…。

「ちょっと…そういう事するときは先に教えてよ!」

「わ、悪かったよ…最初は潜入するつもりはなかったんだよ。屋敷が最近慌ただしいからな。人の出入りをこっそりチェックするだけのつもりだったんだよ」

「それがどうして潜入することになったわけ?」

「そこがさっきアイツに忠告した『覚悟しておけ』に繋がってくるんだ」

「…」

ルナは黙って話を聞いている。ルナは少し感情が昂りやすい性格だ。だけどとても頭がいい。

普段は激情に任せて行動することも多いが…その実、裏では冷静に考えている。

そのルナが口を挟まず、思案顔だ。きっと今ルナの中では幾通りの未来を想定していることだろう。


「目的は人の出入りを確認するため…ここまではいいな?」

「ええ」

「何も人の出入りを確認していたのは3日前だけじゃない。あいつの母親が病床に臥せっている、と聞いた1週間前からだ」

「ええ…それは知ってたけど…」

フィリアが人の出入りを調べるために屋敷へ赴いている事は知っていた。私も手伝おうかと提案したのだが、別件を頼まれて一緒にいなかったのだ。


「1週間でアイツの屋敷を出入りしたのは使用人、仕事の打ち合わせに来た貴族、それとアイツの友人らしき令嬢だけなんだよ」

「特におかしい人は見当たらないけど…」

ルナは考え込む。確かに怪しい人物はいない…が

「……あれ?」

気づいたみたいだ。そう、出入りした人物の中には、必要な人物がいないのだ。


フィリアは、気づいたか。と言わんばかりに口元を釣り上げ、ニヤっと笑った。

「医者は…来てないの?」

「ああ…ずっと見張っていたが医者の出入りはなかった。おかしいだろう?」

「あの屋敷には常駐してる医者なんかいやしない。実の娘すら面会できないほど重症なのに医者が来てないなんてありえない…」

「どういうことなのかしら…あの子が言うには重い病気だって判断されて近づけない状態なんでしょ?その『診断』はいったい誰がしたって言うのよ」

「それはわからない。だけど…間違いなく、正式な医者が下したものではではないだろうな」

「それに…医者が来てないことくらい使用人もわかってるんじゃないの?」

「そこも疑問なんだ…自分の知らない間に来てると思ってるやつもいるだろうけど…」

ハッとした顔でルナはこちらを見る。同じ結論に至ったみたいだ。


「使用人も…何か隠してる可能性があるってこと…?」

「ありえるだろうな…アイツに母親の容態を教えているのは父親だ。アイツの父親は母親に、何かがあったと知っていて隠している…もしくは企んでいると考えるのが今は妥当だろう。使用人には立場もある。主人が従えと命令すれば従うだろうさ」

「それが無理やりなのか、それとも父親が何かやっていてグルなのか……そこまではわからないがあまり甘い考えではいられないだろう…」

「話が逸れたな…まあ潜入した理由はこんな所だ。こんな状態で母親は一体部屋の中でどうなっているのかを知りたくてね」

「…」

ルナは納得したみたいだ…。その後がどうなったのか気になっているみたいで、顔はまるで話の続きを催促しているかのようだ。


「潜入してからは屋根裏、物陰、使われてない部屋など転々して中の様子を探っていたんだが…」

「使用人たちについては怪しい部分は無かった…いや、一人気になる奴がいたな」

「気になるやつ?」

「ああ、アイツの側近…名前は何だったか…」

唸る。必死で思い出そうとするが思い出せない。

「アリス、だったかしら」

「そう、アリスだ。あの使用人、サリアが出かけてからずっと部屋の中を漁ってたんだよ」

「漁ってた…?それは…部屋の掃除をしてた、とかじゃなくて?」

「いや、あれは漁ってた…と思う。特に何かを取っていたわけじゃないが…明確に何かを探しているようだったよ」

「探してた…ねぇ…?宝石でも盗んで売ろうとでもしてたんじゃないの?」

「そんな雰囲気には見えなかったんだよな…まあ、今はいいだろう」

「結局あの子の母親の事は調べられたの?…って調べられたならわざわざ今日行ったりなんか…」


「いや」


フィリアはルナの言葉を遮った。


「…?調べられたの?」

「調べられたといえば調べられたし、調べられてないといえば調べられてない、かな」

「ちょ、ちょっとぉ、変な言い方してないで教えてよ」


「結論から言うと、だ」

フィリアは少しもったいぶって話し始めた。

「あいつの母親の部屋は…」


「もぬけの殻、だったよ」





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