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血まみれた墓標に愛をこめて  作者: 千鶴
わたしのはじまりと、おわり。
4/13

急転

「…今日も家から出てこない…」


二人を尾行すると決意してから1週間。私は家の体面にある建物に開いてある木箱の中に潜んで彼女たちを監視していた。

目的は当然、尾行をするため…なのだが。


「家から…」


「出てこない!!」


「じゃない!!!!!!!」


なんなの?なんで?なんでなの?15歳の女の子なのよね?思春期真っ盛りよね?普通じゃないのはなんとなくわかっていたけれど…おかしくない?


「もう1週間も家から出てきてない…」


怪しい…年頃の女ん子が二人きりで引きこもってるなんて…ま、まさか二人であんなことやこんなこと…


「…」


恥ずかしい妄想はここまでにして…と。

やっぱりおかしい…わよね?そりゃ嫌なことがあったときは私だって1週間部屋から出なかったこともあったけど…だからって二人とも出てこないのはおかしい…


なんだか最近私以外にも家を監視してる人もいるみたいだし…やっぱ先日の件で彼女たちに用があるのかしら?

到底カタギとは思えない顔してるのに、なんだか親近感湧いちゃうかも。なんて。


そんな下らないことばっかり考えていた時。


「あっ…!出てきた…!」


二人でどこかへ出かけるみたい。だけど、年頃の女の子が出かけるような甘い雰囲気ではない、ように感じた。真剣な表情をしてる…。


「おい…あいつらが動いたぞ…お前らも準備しろ」

「わかりました、召集かけますか?」

「ああ。皆集めろ。あいつらが人気のない場所に入ったら所を襲う。」

「へい!」

ガタイのいい彼らは彼女たちを追うみたいだ。

私も彼女たちを追いかけたい所なのだが…


「襲う…嘘でしょ…?」


彼らが発した言葉に私は固まってしまっていた。

襲う…?彼らはどう見たってまともには見えない。いくら彼女たちが強いといったって、人数を集めて一気に襲われたらひとたまりもないだろう。さっきまで親近感が湧くなんて思ってたのが馬鹿みたいだ。


彼らは周りに人がいないと思っているのだろう。部下たちと軽い雑談をしているみたいだ…


「いやー、でもカシラ!今回は久々にデカいヤマですねぇ!」

「ああ、絶対にしくじんじゃねえぞ…わかってんな?」


カシラと言われた男が部下にドスのきいた声を発しながら睨む。


「わ、わかってますよぉ!ほら、今回は組織から貸してもらった…」

「馬鹿野郎!誰が聞いてるかもわかんねえ往往来で何口走ってやがる!」

「ヒッ…す、すいやせん!」


組織…?貸してもらった…何か最終兵器みたいなものがあるのだろうか…

そこまで考えたところで一気に背筋が凍り付く。まさか…

頭の中にあの洞窟で襲われたバケモノの姿がよぎる。

あの事件…もしかしてこの人たちのせいなんじゃ―――!

だとしたら、彼女たちが危ない!助けに行かないと!

だけどあの人たちがここにいる限りここから動けない。どうにかして抜け出さないと!


「カシラ!全員集まりましたぜ!」

「おう、集まったな。いくぞ。手筈はわかってるな?」

「オウッ」

「よく、しくるなよ」


まずい。行動に移るつもりだ!彼らがいなくなればわたしも動ける―――けど。どうしたらいいのかがわからない。

お父様に助けを求める?却下だ。屋敷に戻るまでに襲われたら意味がない。

私が戦う?もっとありえない。私じゃ一人じゃ彼らには勝てない。

先回りして彼女たちに危険を知らせる?それだ。それしかない!

そうと決まれば木箱を抜け出して…よし。早く行かなきゃ!


だけど私はこの作戦の欠陥に気づいてしまった。それは。

「居場所が、わからない…!」

どうしよう、どうしよう、どうしよう。

彼らをは居場所を把握しているのだから追っていけば必ず彼女たちのもとに行ける―――だけど。

彼らの後塵に拝していては間に合わない!

一応彼らを追ってはいるが手詰まりだ。こうして考えている間にも一刻、一刻と時は進んでいく。


「アニキ、あいつらこの後あの裏路地に入るみたいですぜ」

「丁度いい。殺すぞ」


その言葉を聞いた瞬間。

あの時の光景が蘇る。

あの洞窟で見た、死体。死体。死体。

彼女たちもあんな風に―――?

そう、思った瞬間。体は恐怖で動かなくなっていた。

怖い。恐い。こわい。

体がすくんで動かない。今、引き返せばあの時のような光景は見ないで済むのかもしれない。

お父様とお母様に愛情を注いでもらえて。友達と面白おかしく過ごして。取り留めもないような事で喧嘩して。

そんな、日常に。素知らぬ顔で、このことは忘れて。帰れるのかもしれない。

だけど―――なぜか。


なぜか、わからないけれど。引き返したら、後からとんでもないことになる気がして。

昔から感じていたひとつひとつのほころびが。一つに繋がるような。

何より、私を助けてくれた人を見捨てるなんてできない。

考えてるうちに、私の体は動くようになっていた。

覚悟をしたから?わからないけれど。汗が凄い。多分、脂汗というやつなのだろう。

怖い―――だけど逃げるわけにはいかない。意を決して私は路地裏へと足を延ばした。


そこで目にしたものは私が思っていたものとは違う。嘘、半分は合っている。

だけどそこに転がって死んでいたのは、紛れもなく。


さっきまで私が追いかけていた男たち、だった。





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