空と翼と眠りと烏
黒く輝く高みで
強い風が吹き付ける
空は翼を選び
翼はこの風を選んだ
晴れた光へ向ける
翼が大きく膨らむ
挨拶のように軽やかに
青へ投げ出された風だけの時間
高所に震える心を彼らは知らない
晴れた乾いた土が匂う
夏の夜の小さなしかし
真上で上がる打ち上げ花火の
息苦しいほどの今の匂い
もう夢であることを知りながら
まだ夢の手が離れない
眠りが夢を選び
夢が今夜を選んだ
夢はただ何処かで待っていて
目覚めのからっぽを知らない
我らは突然にそこに現れて
そして突然に消えてしまうから
叶わぬという空はきっと晴れ
夕空一面に真っ黒になって
烏たちが集めた夢を咥えて舞っている
あんなに嬉しそうに鳴き騒ぐ烏たちは
終わりの言葉をまだ知らない