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リスタート~夏の終わり~

これから本格的に恋愛を書いていくのですが、一つ一つ丁寧に区切りたいので文字数だけ減らします。


 炎天下の中、開催される高校野球も終わり、夏も大詰め。そんな中時森のお爺さんが似合わぬ香水の匂いを漂わせ帰宅をした。

 捜索願いを出していたのにも関わらず見つけられなかったお爺さんは、古くからの友人と旅行に出ていたらしい。

 時森は苦笑していたが、お婆さんや母は激怒していた。


 そんな出来事も何度もある訳ではないのだから、と時森はお爺さんを庇っていた。だが、夏休み最終日。お爺さんは再び逃亡した。

 流石に二度目は庇いきれないと思った時森は、怒られれば良いんだ、と投げやりに思っていた。と言うよりも面倒臭いのだろう。


 そして始業式の日がやってきた。

 時森は深瀬と待ち合わせをしているようだったのだが、二人は丁度のタイミングで待ち合わせ場所である、並木道の入り口に辿り着いた。どちらから言うでもなく、おはようと告げると、二人は並木道を怠そうにトボトボ歩き始める。


「なぁ、花道は文化祭の役回りどうする?」

「俺って雑用に命かけてるからさ、それ以外の選択はないよ」

「そだなー」


これから学校が再開するというだけで二人の空気は重くなり、会話も陳腐(ちんぷ)なものになっていた。


「なあ、拓也」

「なんだよー。憂鬱な俺にはなんの声も届かねーけど言ってみ」

「俺さ、南沢さんに告白してくる。今日」

「そうかい。上手くいくといいね」


時森自身、深瀬には驚かれたり、止められたりするものだと思っていたため、すんなりと応援されて少し困った顔をしていた。

だが、深瀬はすぐ時森の顔を見直した。そして問う。


「南沢美奈に告白するって言ったか?」

「まあね」


深瀬は「無理無理」と首を横に振っていた。否定したいとかそう言うことではなく、純粋に時森のためを思ってそう言っているのだ。


その事を理解しているからこそ、時森は喜んでいた。表情には出てこないが心から深瀬に感謝をしている。でも。


「拓也。俺さ誰かと約束したんだよ。ちゃんと告白するって」

「誰と約束したんだよ」

「わかんない。もしかしたら事故に遭った時に見た夢かもしれない。でも、彼女を好きなことに変わりはない」


迷い一つとしてない時森の目を直視した深瀬には止めるという、いたって簡単な行為が難しいことのように思えた。

「わかったよ。ただ、メールしろよな」


「当たり前だろ」


時森は始業式が終わったあとに人目のないところにでも呼び出し、告白しようとしていた。廊下などでは人目につくからこそ、本当は外に連れ出すべきだった。


始業式が終わり、時森は女友達数人と歩いている南沢に声をかけた。

「南沢さん」


当然、南沢の傍にいる女子も振り向くのだが、そのくらいのリスクは時森も承知の上だ。

「え、私?」

少しひきつった表情で自分を指差す南沢に時森は違和感を感じていた。


でも、もうあとには引けない。

「あの、話があるから少しいい、かな?」


南沢はあー、といい考えるそぶりを見せていた。周囲の女子は何故か、ニヤニヤとしていた。

時森は告白することがバレているのだと感じ取ったがそれも仕方のないことだと割りきっていた。


だが、時森の考えは正しいだけで全てが見えているわけではなかった。


「あのさ、時森君だっけ?」

「う、うん」

「先に言っとくけど私が君なんかに話しかけたのって学年末テストで負けた罰ゲームだからね。それでも何か話あるならここで聞くけど、ある?」


まるで時森を蔑むかのような凍てつく視線。ただでさえ、コミュニケーションに難のある時森は圧倒されていることだろう。


「し、終業式の日。南沢さんに話しかけられて高校をやめない決意が出来た。友達もできた。だから、罰ゲームでも、あの時話しかけてくれてありがとう」


時森は言いたいことだけいってその場を去った。その背後からは高い笑い声が聞こえていただろうが、気にすることなく、振り替えることなく…。


立ち去る時森を笑っていた女子達は南沢さんをからかい始めた。

「美奈がクラス一番の変人にコクられた。マジでウケるー」

「それなー」


そう言って茶化されるのがかんにさわったのか、南沢は不機嫌そうに答える。

「時森君は告白なんてしてないでしょ。私にお礼を言いに来た、それだけ。早く行こう」


ホームルームは終わり、午前中のうちに下校となった時森は一目散に教室を出る。

そして、どういうわけか同じ教室にいたはずの深瀬が息を切らして昇降口に立っていた。


時森は息を切らした深瀬に話しかける。

「なにしてんのさ」

「バーカ。はぁ、。待たせやがって」

「嘘つくなよ。俺より後に出たくせに。てか、肩で息するくらい疲れんなら走るなよ」


深瀬は笑いながら「おう」と返事をした。

二人の間には沈黙が続き、空気が重くなり始めた頃深瀬が話し始める。


「お前、遊ばれてたんだな」

「いきなりそれ言っちゃう?てか、見てたのかよ」

苦笑し、辛さを誤魔化す時森。


「にしても、南沢クソだったな。猫被りやがってさ」

時森を慰めるために南沢を悪くいうことを時森は良しとしなかった。


「確かにもう好きではない。でもさ、南沢さんにあの日声をかけられなかったらきっと大切なもの全部失くしてた。高校をやめてたら深瀬とも友達になれなかった」


「お前は優しいというかプラス思考というか」

溜め息をつく深瀬は、照れるように笑みを浮かべ、校門の方へと歩き始めた。

その背中に向かって時森は呟いた。


「南沢さんに人が集まるのは根がいい人だからなんだよな…」


深瀬には聞こえてなどいないその言葉が誰に向けられたものなのかはわからない。

ただ言ってみただけか、もしくは二人の会話を盗み聞いていた、赤面の南沢に向けてか。


どちらにしても、南沢が近くにいることなど時森は全く気づいてはいなかった。


時森は駆け足で深瀬のあとを追った。その姿からは以前の独りぼっちの雰囲気など感じさせないくらいに、眩しく輝いていた。


時森の背を見送った南沢は、下駄箱から靴をとりだし平然としていた。

赤くなった南沢の頬はきっと夏の残暑のせいなのだろう。だが、夏は終わり季節はまた巡る…。

いかがですか?

まだ、序盤の序盤。

次回はリスタート~秋の季節~です。土曜日公開予定。ただ、それより早くなるかもしれないにで少しでも気になる方は是非、ブックマークお願いします。

感想も、指摘がメインでなるべくほしいと思っています。


次回もよろしくお願いします!

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