欲しいモノはすぐ傍に
時は流れ、時森はスーツに身体を預けていた。いつまで経っても曲がってしまうネクタイを美奈が笑みをこぼしながらなおしていた。
時森はそのくらい、できると強がるが美奈の強さには到底敵うわけもなく大人しく結ばれていた。
時森は今でもあの、交通事故の事をよく考える。
時森が家を出るとき美奈が口を開く。
「今日の講演は長いの?」
「いや?三時間くらいを二件」
長いじゃん、、みたいな表情を浮かべるエプロン菅田の南沢美奈も今ではすっかり主婦をやっているようだった。
「じゃあ、深瀬が待ってるから早くいくわ」
「うん、いってらっしゃい」
時森は病室を抜け出した末に土手で倒れてしまい、救急車で運ばれた。命に別状もないのは現在をみればわかるが、不思議なの事はあんな真夜中に救急車を呼んだ人が誰なのか不明だったということだ。
日差し照りつける夏日に深瀬と待ち合わせをした時森はとある都内の中学校に訪れていた。
全校生徒を前にし緊張をしている時森には深瀬は呟く。
「大丈夫、お前の野獣と幽霊の話は胸に響く!」
「ふざけたネーミングすんなよ。レナとサーウの話しだよ」
『ったく。サーウの仕事が半端すぎて高校出るときには記憶がハッキリしてたよ。けど、俺はこの出来事を通しての事を次世代に伝えていきたいと思えた。百歩譲ったらお礼をいえるな』
そして、時森は段の上に立つ。
事故に遭う前の、自分。幽霊というレナにあってからの自分。いろんな事を思い出したあとの自分。もちろん、真実をのべてもしんじられるわけもない。少しばかり話の内容はいじっているが大切なところは押さえて話していた。
途中、休みをいれつつではあったがそれでも生徒の大半は時森の話を飽きずに聞いているようだった。
そして、話し突然終わる。三人の関係が突然終わったときと同じように。
時森は公園の最後に決まって同じことを言うようになっていた。その言葉を南沢や深瀬は物凄く気に入っていて、時森らしいと頷いたこともあった。
やや、マイクに顔を近づけ時森は生徒の表情を見ながら薄ら笑みを浮かべ口を開く。
「僕はなにも欲しくなかった。なぜなら、本当に欲しいものはいつも自分のすぐ近くに転がってるからね」
そうだよね、レナ…。
講演をするとレナとサーウがみてくれているような気になる。まあ、実際はどちらでも良かった。
けど、いつかのいつの日かまた出会うことがあるのなら、あの日言い返せなかった言葉をくちにしようかな。
君達が好きだよって…。
これで終わりになります。
本当はもっと書く予定だったのですが、やはり作品にぶれがめだつきがします。もっと精進して自作はもっと人の心に残るモノを書きたいです。
ご愛読ありがとうございました。




