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三つ目の選択肢

闇夜のなか、レナは現れた涙を流していた。その訳は聞こうと思わなかった。聞いてしまえば自分の答えとは違う答えになってしまいそうだったから。


レナは一歩。また一歩と俺と菜園の間まで歩いてきた。そして、間にちょこんと腰を下ろした。


「なんか、この感じ久しぶりだよね。サーウはメガネかけて手袋しないと私とは関われないけど、それでも今は三人関われてる。それが、凄く嬉しい」


涙を拭うレナを見た俺は、なんとなく懐かしい気持ちを抱いてしまった。だから、古代文明に存在した時森花道に俺は徹した。


「そうだね。欲を言えばあの頃の俺って今この時を望んでた。この三人の関係がずっと欲しかった」


「欲しかった、かぁ…」

レナは笑みをこぼしながら呟く。


「レナにはさ、ずっと感謝してるんだよ。あの時俺を送り出してくれてありがとう。ずっと言いたくて忘れてたよ」


「どういたしまして」


微妙な空気を漂わせている俺とレナを菜園は見守っているようだった。ここには今、かつてと同じ状況を作られているようだった。石積をしていたあの時と同じ。


「レナ、俺さたぶん自分の答えに気が付いてる」

レナはなにも言わずにうなずく。だから俺は声にする。


「俺は誰なのか。そう、問い続けるとやっぱり、俺はいつでも俺なんだなって思う。レナがいなくなってその存在を忘れてから人間関係が良くなった。ダメダメな俺をむかしの俺の良い部分が補ってくれた。こうして今の俺がいる」


俺の想いを聞いて二人は笑っていた。

「花君らしいなー」

レナは話を続けるようだ。

「けど、私の好きな花君とはやっぱりどこか違う。私は幻想でも見ている気分だよ」


幻想という言葉に俺はふいに笑ってしまう。

「幻想は真実らしいよ?レナのお父さん曰ね」

「ほんと、私も笑っちゃいそうになったよ。花君が、病室で教えてくれたとき笑いこらえてたよ」

「え、あの時の表情って笑いこらえてたの?」

「うん!」


思い出すことが導く真実は必ずしも深いもの抱けとは限らないと今知った。だが、、こんなにどうでも良いことでさえもレナとの時間は楽しい。


「懐かしいね、性根の腐った花君鍛えるのきつかった」

「は?ただひたすら俺が好きって言わされただけじゃん」

「人生とは何か話してあげたの忘れたの?」


そんなこともあった。あの時レナは八割、暇潰しに俺をおもちゃにして、残りの二割で真剣な話をしていた。


「覚えてる。人生とは死んでいくこと。でしょ?」


レナはうんうん、と満足そうに頷き口を開く。

「花君、挫折から立ち上がるの得意だね。もう大丈夫そうに見えるよ。そんな花君に三つ目の選択肢をあげよう!」


「三つ目って。そもそも君か南沢さんかなんて俺が決めて選択肢だよ?」


レナは俺の言葉にきくみみを持たずに話し始めた。


「花君の持ってる次元の鍵をサーウに使うの。そうすればわたしは寂しくない、私とサーウは十万年も生きてる。すでに君より何者でもない」


それでも良かった。けれど、それは俺の選択とは違う。だから、口をひらく。

「俺はそんなの望んでない」

「花道は何も望んでないだろ。だから、ごめん。レナの提案無理矢理にでも受け入れてもらう」


そう口にしたサーウが何をしたのか分からない。もしくはなにもしていないのかもしれないが俺の視界はぐにゃりと曲がり、また暗闇に閉ざされた。


『昔とは違う、情けない花道に、ずっと変わらず優しい花道に会えてよかった。君に撫でられるの本当に好きだった。ありがとうね、花道…』


『私に人の心を与えてくれた。私にいきる楽しさを教えてくれた。だから私も花君にその教えをそのまま教えた。でもね、君は君なりに解釈してまた違った方向に進んでいった。もう、君の鍵はこっちに持っていくからわたしを見ることはないと思う。記憶も消しいく。その方が君のためだしね。でも、勘違いしないでね、私はこの時代での君と出会って真底惹かれていった。だから君から距離をおいたの。あー、もういかなくちゃな、じゃあ、、元気でね花君』


別の次元の扉が開いた数分の間、レナが時森の唇を奪ったことを時森は知らない。知らぬまに約束は果たされ、時間は進む。

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