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確かな記憶の奥底に

いよいよ、物語の始まり部分。

消え行く意識の中俺はこれまでの全てを思い出した。現在に至るまで何万年の月日が経ってしまったのだろう。


俺はレナを随分と待たせてしまっている。


昔々のさらに昔。それこそ俺がよく口にしていた古代文明の存在した時代の暖かく無風の都市に、俺は生まれた。


俺が生まれた当時から文明はすでに現代を越えていたのだろう。空を飛ぶ円上の物などが交通手段に用いられていた。


現代で言うUFOとやらにかなり近しい。

この古代文明に生きていた人間は、いわゆる天才ばかりで科学に特化していた。科学がものを言う、そんな世界だった。


そんな世界で俺が生まれた家系は、唯一科学と無縁の一族、時森家だった。時森家は由緒正しき神社としてその存在価値を認められていた。


それと同時に異種族だと呼ばれていた。

その理由は細胞の作りが異なっていたかららしいが、そこまでわかってしまうほどに科学は発展していたということだろう。


科学者達は常に新た強い技術を追い求めた。勿論、子供たちも科学を発展させるために日々試行錯誤していたのだ。


現代は、一定の科学技術を手にしてから、その技術を少しずつテコ入れしていくやり方だ。学ぶ者も一つ一つ段階を踏んでいくのだが、そこが古代と現代の大きな違いと言える。


古代はそもそも学ぶ者などいない。自ら様々な物に興味を持ち自然と同じ段を違ったルートで踏んでいく。

そして、最も違うのは一つの作品に対する執着心だ。


現代ではヒットした物を改良して更にヒットを飛ばすという利口なやり方をしている。が、古代の人間はヒットしようがしまいが作品は過去の物としか思っていない。

何かが完成すれば、それとは全く別の何かをまた作り上げる。そうやって科学の古代文明は作られていった。


とはいっても、こんな比較をできるのは俺が時森家の子供だったからにすぎない。

時森家というのは現代の人間のことを指すのではないか、と今では思える。それほどまでに共通点が多い。


文学を重点的に学び、歴史を知り記録していく。日々、日記をつけるという習慣もあった。

たったこれだけでも分かるだろう。


時森家と古代の人類は、生き方からして全くの別物だと。大きく言うのなら古代と現代は全くの別物だと。


当時の時森家は国に認められたばかりで、俺も学ぶことが多くて神社を出ることなどほとんどなかった。それこそ、十歳になったあの日…レナが現れなかったら永遠の引きこもりだっただろうし、今こうして現代を生きてはいない。


レナが時森神社に現れたのは、珍しく雨の降った日だった。無風の古代都市に降る雨は、ただ真っ直ぐ地面に雨粒を叩きつけていた。


それでも俺は神社の中庭を掃除しなくてはならなかった。現代よりも発展しているなら傘くらいあってもおかしくない。だが、古代科学者達が作り上げていたのは最も複雑なもの。


つまり、簡単に作れてしまうてあろう傘には興味がない。とはいっても技術のない人間に傘など作れるはずも、思い付くこともなく俺は雨の冷たさを感じながら中庭を掃除していた。


そんな時、レナ現れた。黒いコートを着た男に抱かれ神社の鳥居をくぐってきたのだ。

俺はその姿を見てまたか、と呆れた。


なぜ呆れたかは簡単だ。時森神社が国に認められるゆえんとも言える仕事の依頼だからだ。

その仕事は病気で死んでいく子供を引き受け入れるということ。


それがどういうことかなんて思い出しただけでも最悪だ。科学の発展に意識を向ける科学者達は命を大切にはしなかった。人間に死ぬときは死ぬ、と。勿論、時森神社もその考えだ。


だから、亡骸をこの庭に埋葬している。その上を歩かなくてはいけない自分をどれだけ恥じただろう。だから、俺はルールを設けた。それはこの庭を踏み得れるときには一礼をするということ。


だが、黒いコートを着た男がずけずけと庭に踏み入れるものだから俺も期限を損ねた。

「なんですか?」

「俺の娘は病にかかった。ここであずかってくれ」


悪寒が走った。雨のせいなんかじゃない。きっと、この感情を現代では嫌悪感と呼ぶのだろう。それと同時に怒りをとめることができず声をあらげていた。


「もう、死ぬとでもいいたいのか!?」

そう問い詰める。だが、黒いコートの男はああ、とあっさり答える。

あー、こいつはダメなんだな、と俺は思った。だから抱かれているレナの手を取り、俺が抱き寄せることにした。

「この子は死なない。絶対に死なせない」

そう、言い切る俺を見てレナの父親は笑みを浮かべた。その笑みがどういう意味をもっていたのか、その答えを俺は後に知ることになるのだが、まずレナの命をどう救ったのかだ。


父親と離れることを理解した上で涙ひとつとして見せないレナが俺は不気味だと感じていた。それでも子供の受け入れをしたからには付き合っていかなくてはならない。


雨に打たれる俺はレナの父の背を見ながら自己紹介からした。すると、レナは頷くだけで自分の自己紹介はしてくれなかったんだ。


当時はなれない環境に戸惑っているのだと思っていたが、その考えが安易だったとすぐに気がついた。


レナは身体の調子が良くなり初めても言葉を発することはなかった。時森神社で引き受けている子供が一命を取り止めたとき、大抵の子供は自ら科学の世界へと戻っていく。


ただ、ごく稀に俺の当時の母のように神社に残る者もいる。稀とはいっても俺の母親以外にはそういった特例がなかった。


レナもこの神社に戻りたいのだろうか、そういった会議のような物は密かに開かれているようだったが当人の言葉なくして進むはずもなく話しはどんどん流れていった。


それから現代でいう半月ほどが経った頃事件は起きた。


珍しく雨の降る朝、俺が起きると家の中は騒がしくなっていた。何事かと思い、両親や祖父母の話を盗み聞きした。すると、レナが失踪したという事実をみみにすることになった。


そのまま放っておけばいいだろう。というのが俺の家族の出した答え。だが、俺はなっとくがいかなかった。


何が納得いかなかったのか、今なら手に取るように思い出せる。

俺は一言も話さずにこの場を去っていくことに納得がいかなかったんだ。


レナが何を考え、何を思い、何をどうしたいのか。

科学者になりたいのならそれもよし。なりたくないのならここに残ればいい。何処にも居座りたくないのなら一人でどこか遠くへ行けばいい。


俺はレナの行動を止めやしない。でも、責任があった。

食事の時も本の少しだけ胃の中に入れるや一人でどこかへ行ってしまう。なんど話しかけても一度たりとも表情を変えてなどくれない。


そんな無愛想なレナが受け入れてもらえるところなど無いに等しい。本当は責任とか重苦しい大人の真似事なんかじゃなく、俺はレナをしりたかったんだ。


俺は家を飛び出しレナを探すことにした。勿論むやみやたらに探すなんてほどお馬鹿ではない。

レナは科学都市に戻ろうとはしない。なぜならあの都市にあまり思い入れがあるようには感じない。かといって家の神社にもいるはずがない。


ただ、この二つの場所を避けることを選択したのならレナの進む道は一つしかない。

古代都市はとても広く国境という仕切りなどはないが、神社の裏庭を突き抜けると広大なジャングルがあった。


本来ジャングルに立ち入ることは固く禁じられているのだがバレなければそれでいい。そう思っていた。


レナだってもしかすると神社の裏庭を通りそのジャングルに身を落ち着かせようとしているかもしれない。そう思った俺は危険など省みずジャングルに飛び込んだ。


だが、ここからが本当に面白い話になる。格好つけて飛び込んだジャングルで俺は遭難したんだ。

右を見ても左を見ても同じ景色に見えてしまう。そんな中俺は猛獣と鉢合わせしてしまったんだ。


現代のライオンとよく似ている獣だが牙の大きさがまるで違う。あの牙をもってすれば人間など楽々貫通させられるだろう。


だが、不思議と恐怖心はなかった。確かにヤバイとは思った。だが、俺はゆっくりと獣に近より手を伸ばした。もちろん、食わせる来なんてはなからないのだが、牙の生えた人を殺せるであろう獣が可愛らしく思えた。


獣はグラァと声をあげたが下顎を撫でられるとまんざらでも無さそうに落ち着き始めた。そんな姿を見ていると俺はだきしめてしまった。


あの時、本当は心細かった。でも、独りでさまようジャングルに初めての友達ができた。それが獣ということには誰もが驚くだろう。だが、もっと驚くのはこの後だった。


「サーウッ!」

俺と獣だけしかないなかったはずのジャングルに人の声がした。本当に驚いた。なによりも驚いたのはその声に反応して獣が向かった先にいたのはレナだったこと。


あの時の俺もいつかのナースさんのような顔をしていたのだろう。でも、会えて嬉しいと思えた。心細かったとかそういうことじゃなかった。


俺はこの時初めて見たんだ。声を発しているレナを。

あー、やっぱりか、って思ったのをよく覚えている。


それからレナはムッとした表情で俺に問う。

「サーウに何かしたの?」


サーウというのが獣の名前だとこの時知った。だから何が言いたいのかは理解できる。ただ、あまりに警戒され過ぎていてどう説明すれば良いのかわからずにいた。


すると、サーウが俺の方へと向かってきたんだ。ゆっくりと四足歩行で。

もしかしたら敵と見なされ食われるのではないか、なんて少しも考えなかったと言えば嘘だろう。でも、サーウは俺を食わないと信じていたのも確かだ。


そして、サーウの行動は後者に当てはまった。

俺の胸元に額を擦り付け、クーと可愛らしい声を出していた。

あの時の心が温まる感じは現代では多々ある気持ちだ。でも、発展すること以外に脳のない古代文明ではほとんど感じることはない。


俺は久しく会うように感じるレナに問い返す。

「レナ、俺も一緒に暮らしちゃ駄目か?」

「駄目」

まさかの俺の提案に目を光らせていた。その凍てつくような視線は俺がクラスで浴びせられたものよりも鋭く恐ろしかった。


あんな目を一度見たら忘れられはしないだろう。どれだけ世代を越えても忘れたくはなかった。こんな形から始まる愛もあるということを…。


それから、どれだけの時を過ごしただろう。俺はレナとサーウの縄張りを毎日毎日訪れた。その中でレナは少しずつ話をするようになっていった。


まず、父から自分を引き離した俺のことを特別恨んでいたということ。

次に、科学の発展のために。なんて考えている人達がバカらしくて口を開く気にもならなかったこと。

ほとんどがこの都市にたいする悪口でさぞかしひねくれた奴だと心底思っていた。


だが、俺がレナとサーウのところへ通い初めて一年が経過した頃、いつものようにレナとサーウの縄張りにいくと様子がおかしかった。


辺りを見渡してもいつもと変わらないが、レナはともかくサーウはいつも迎えに来てくれるのにこなかった。


それが偶然とは思えなかった。なぜなら、人間にすらわかってしまうほどの濃い臭いがした。その時はそれが血の臭いだと分からなかったが、歩き周った先に血を流したサーウをみてこの臭いが血の臭いだと知った。


「サーウ…」

混乱した…。サーウの怪我はとても獣にやられたものとは思えなかったからだ。だから、激しい怒りにとりつかれそうにもなった。


そんな俺の激しい怒りをみてからなのか、レナは姿を表した。

「サーウ死んでるよ?私が水浴びして戻ってきたら死んでたよ?もう、動いて、く、れないんだよ?」


その荒い呼吸からレナが泣いていることなど分かった。

俺はレナの方を向いた。すると、レナが俺に飛び付いてきた。そんな震えるレナの身体を俺は、躊躇いながらも抱き締めてやることしかできなかった。


すると、レナは俺の思いもしなかった言葉を口にした。

「花君は。、いて…。そばに…いて」


あー、こいつだけは守らなきゃいけないな。なんてこの時恥ずかしながらも感じていた。

恥ずかしく思っていたのはなにも、格好つけたからではなく、レナが花君とよんでいたからだ。


それから、俺は穴をほりサーウを埋葬した。レナと一緒に手をあわせ、そして俺は提案をした。

「レナ、俺と一緒に神社に戻らない?」

「でも…」

「時森家って異種族だって言われるけどさ、俺って実は更に異種族なんだよ」


俺の訳のわからない言葉にレナは首をかしげた。それから俺は自分のことを初めて他人に話した。


時森の家系はずっと時森だけで作られてきた。でも、俺の母は科学者の娘。つまり、俺は違った細胞の二人が重なってできた、また別物の異種族でもあったのだ。

その事を話終えると「だから?」とレナは首をかしげた。


「だから、レナとは話が合うと思うよ?」

「なにそれ…」


先程、涙を流していた女の子とはまるで別人のような無愛想でひねくれたレナをみて俺は無理やり連れ出すことにした。が、手を引くとすんなりついてきてくれた。


再びレナが神社に顔を見せると俺の母親が涙を流してレナを抱き締めた。かつてはレナを忘れることに決めた俺の家族だったが、やはり気になって仕方なかったようだ。

というより、俺に一言ってくれればレナが無事だと伝えられたのに、なんてひにくを思ってみたりもした。


俺の母に抱かれレナも涙を流した。

それからの歳月は本当に楽しいものだった。レナはたくさん笑うようになったし、俺にちょっかいをだしてきたりもするようになった。


だが、ひとつだけ俺のなかに疑問があった。


いつものように早朝の庭を掃除しているとレナが現れ、俺はふと思った疑問を口にする。


「サーウの一件、あんまり根に持たないんだね」

レナはえ?という顔をしてから、あーという顔に変化させ微笑んだ。


「だってあれがサーウの人生でしょ?私が哀れんだらサーウの人生を否定してるみたいじゃん。サーウは、立派に生きたよ!」

「そうだな」

口元を歪ませつつ、俺も納得のいく答えが返ってきたことに安堵した。


この時からだ。レナを引き受けた義務感とか責任感とかそういったものがほつれていったのは。明るく、優しく、強いレナに俺は惹かれていった。


「ねー、花君はなにか欲しいものある?」

突然の問いかけに欲しいもの?と俺が聞き返すとレナは頷いた。


それから自分の欲しいものを考えたが思い浮かぶことはなかった。きっとこの時に気がついてさえいれば俺の未来は変わっていただろう。


レナは地面に落ちている小枝を手に取り、ニコリと笑みをこぼし俺の方を見てきた。この辺は少し曖昧だがおそらく、俺は恥ずかしさを感じていただろう。

「私はね、花君に私の人生をもらって欲しい。毎日毎日私を気にかけてジャングルに来てくれて、すごく嬉しかったんだよ。だから、私は君のために生きられる」


「人生もらうとか、責任感とかめちゃ感じそうだからいらないよ」


俺の生真面目な一言にレナは頬を脹らませ眉に皺を寄せた。その意味を当時の俺はわかることがなかった。

実際の話、今でもそういったところは分からない。でも、過ぎ去った過去のことなら分かる。レナはプロポーズをしてくれていたんだ。


なんて、自分で思っているのを他人に知られたら恥ずかしくて死ぬことすら簡単にできそうだ。


レナは「じゃあ、あーげない」といい、家の中へと入っていった。


走り去るレナの背中を見送っていると、突然聞き覚えのある声に話しかけられた。

「君の言う通りレナは生きてるようだね」

「だから死なせないっていったでしょ?」


声の主は俺が振り返った先の一番前の気に隠れ、話しかけてきた。その声がレナの父親ということはすぐに分かり特別驚いたりもせず二人だけの会話が続いた。


「レナは随分と時森家の色に染まったようだね」

「レナは元気に生きてるよ。お前の読みは外れたな」


レナの父親は俺の言葉を聞いてはははと笑い始めた。そして、俺の近くまで歩き近寄ってきたのだ。

当然、俺は身構えた。とはいえ、今思えば力でも頭脳でも勝てるわけがないのだが。


レナの父は、俺の正面に立つと目から涙をポツリと一滴流したのだ。そして静かに口を開く。


「死ぬのは私だよ。私の家系はこの年齢で病にかかる。この病気は血縁的なものでかかってしまうからのがれることはできない。だが、峠を越えれば治る。この細菌は一時的な力しか持たないと科学の実験で結果が出た」


「ほんとなの?それ」


「本当だ。だから、その峠を越すための科学を作った。それと数年の実験で君についても色々とわかったよ。君は異種族と呼ばれた時森。だが反面、科学者の血をも引いている。私たち科学者は細胞の一つ一つが物凄く強い。時森家は細胞が弱いが量が私たちの数倍だ。そんな二つの細胞を持つ君が鍵だった」


長々と難しいことを言われた俺は一つ一つ整理しようとしていた。でも整理などできるわけもなく、絡み合った科学の理論は俺の頭の中で更に複雑に絡み合っていった。


それでも、一つだけは分かっていた。

本当に直感だし、騙されている可能性もあったのかもしれない。けど、この時の俺はレナの父が嘘をついているとは思わなかった。


ただ、何か隠してる…。


「俺に出来ることってなんだよ」

レナの父は真剣な表情を作り直し答える。

「私とレナの家系にとりつく病原体の呪いを終わらせてくれ…」

「俺にはその病気のことなにも分からない。力は貸すけど、やっぱあんたらの科学を命のために使えねーのかなって思う」


俺の常々感じていたことを口にするとレナの父は苦笑し、その場に腰を下ろした。

微かに笑われたことは、気に召さなかったがなんとなく俺も腰を下ろした。すると、レナの父は話し始める。


「君とレナの子供が出来ればこの呪いは終わりだ。細胞の数と強さを金揃えた元気な子が生まれる。そのくらい君でも分かるだろ?」

「君でもってやめろよ、なんか落ち込みそう…」


落ち込みそうというよりも、普通に落ち込んでいた。そんな俺をみてレナの父はわははと笑っていた。

その姿は数年前に出合ったときよりも優しく、温かいものだった。


「すまんね、花道君」

俺はこれまで名乗ったことなどなかった。それなのに俺の名前を知っている。本来ならば不審がるべきなのだろうが、レナを救うために自分の血を引く子孫のために動いていたのだと割りきった。


俺に笑いながら謝ったレナの父は胸元のポケットから妙な粉の入った袋を取り出した。そして、その粉袋を俺の手渡した。

俺が警戒しつつも粉袋を受けとるとレナの父は頭を下げた。


「その薬は私の細胞と混合させた薬だ。飲めば私を忘れる」


そんことありえないとどれだけ思っただろうか。でも、現代も生きた今考えてみれば古代の方が発展していたという時点ですでにあり得ない、イレギュラーのようなものなのだ。


レナの父はこの薬をレナに飲ますように、と伝えこの場を去っていった。

飲ませた瞬間に死んだりしないよな、なんて何回も考えながら数日が過ぎた。レナをみれば薬が頭をちらつかせる毎日。


この日常に早く終止符を打ちたい反面。レナの父が裏切り者だった場合、俺はどうすればいい。レナと子供作れなんて、言うやつが命を奪おうなんて考えるはずもない。


そう言う答えに至った俺はいつも通りの早朝の中庭掃除にレナを呼び出した。

なぜ呼び出されたのか分からずとも俺の掃除をレナは手伝ってくれた。だが、気まずさも感じていて、言葉にすることを決断した。


「レナ…」

「は、はいっ!」

「な、なに驚いてんの?」

「あ、いやべつに…」


声のトーンが上がったり下がったりと、今日は調子でも悪いのかもしれない。そう思ったが早く言わなければならないという自分勝手さが声に出た。


「レナのお父さんにあったよ」

「へー、元気そう?」

平然としているレナをみて少し驚かされたが、頷き話の続きをする。


「レナのお父さんは子孫のために君のために研究してきたみたいなんだ。それで、その…」


レナは溜め息を吐き、笑みをこぼした。

「分かってるよ。大体の話しはここに来る以前から聞いているもの。ただ、私は少しやんちゃでね勝手に色々と嗅ぎまわってたんだよ。薬、出来たんでしょ?」


「え?」


「お父さんは科学者の中でも浮いてた。命を救う研究をしていたから。私ね、元々は君の細胞接種のためにここに来たんだよ。あとは病体の安定目的とか。まあ、、結局私は君を好きになった。だからお父さんには感謝してる…」


そして、レナは息を吸い込み少しばかり大きな声を出す。

「お父さん、私はこんな薬いらない。難しい話は分からないけど記憶をいじらなくてもやれるでしょ。私は今までの人生を誇りに思ってる。いるんでしょ?出てきてよ」


レナがそう言うものだからレナの父が現れるような気がした。だが、姿は見せなかった。そのかわりに鼻を啜る音が以前立っていた木の方から聞こえてきた。


レナと俺は顔を見合せ笑い合う。そして、木の方へと歩みより、いい歳して大泣きしているおじさんを目撃した。


その変なおじさんにレナは優しく抱きつき、ありがとう、と伝えていた。


この時は話の序章しか知っていなかった。そんな俺でも考え直したことがあった。

どれだけ、科学の発展をもとめる科学者の一族でもレナやレナの父のような優しいひともいるということ。


人の考え方などは血筋も少なからず関わりがあるのかもしれない。だが、大元は自分の見方。そして、どう歩んでいくのか。その経験の果てにどういった答えに辿り着くのか。


結局のところ人の人生なんてほとんどが自分で決められるものなのかもしれない。と、この時から考えるようになっていった。

次の話で回想は一応終わりになる予定です。

楽しみな恋愛回想シーンも次は盛りだくさん!

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