森の中の食事会
「まさかあの時の音って」
「そのまさかだよ」
「フォルぅ」
『ん? どうした?』
「フォルのせいでアシュリーの持ってた食器もフォークも壊れちゃったじゃない」
『そんなことは知らん。それに我がアシュリーを投げる事になったのは、そもそもお主が無駄に飛び出して来たせいでもあろう』
「うぐぐ……」
速攻反論されてぐうの音も出なくなったディアナに嘆息しつつ、フォルディスはゆっくりと立ち上がる。
そして近場で一番大きな木の方へ歩いて行くと――。
『仕方ない。我が用意しよう』
そう告げ、一瞬にしてその大木をへし折る。
バキバキバキと他の木々をなぎ倒しながら倒れた大木にフォルディスはゆっくりと近づくと、今度はその周りを目にもとまらぬ速度で動き出す。
カカカカカッ。
そんな軽い音を立てながら削られていく大木を目を丸くしてみているディアナとアシュリー。
やがて自分が料理中であることを思いだしたアシュリーが慌ててフライパンを操る作業に戻る頃。
『ふむ。初めてにしては上出来ではないか?』
満足げなフォルディスの声が聞こえてきた。
フォルディスの足下には無骨ながらもきちんとそれとわかる皿とお椀が三組。
それとフォークとナイフらしきものが並んでいるではないか。
「凄い!? フォルって何でも出来るのね」
『何でもではないがな。かつて人間どもが我の元に持って来たことのある物を参考に作ったがこれで良いか?』
「ああ、問題ない。ナイフは使い道がないし切れるかどうかわからないがそれ以外は使えそうだ。ディアナ、その食器をこっちへ持って来てくれないか」
「はーい」
元気よく返事をしながらディアナはフォルディスの足下にある食器を拾い集める。
フォルディスが作った食器は表面も綺麗に磨かれており、とても見よう見まねで作った物には思えなかった。
『他に必要な物があれば言え。直ぐに作ってやるぞ』
褒められたことが嬉しかったのか、フォルディスはフンッと鼻を鳴らし自慢げな顔でそう告げる。
だがアシュリーに「これだけあれば十分だ」と告げられ少し残念そうな顔をすると、ゆっくりと元の位置に戻ってまた寝転ぶ。
しかしそんな少し残念そうな表情も、アシュリーの一言で一瞬にして消え去る。
「さぁ出来たぞ」
「わぁい!」
『待ちかねたぞ』
フライパンの中からおいしそうな香りが辺りに漂う。
アシュリー曰く「今はろくな香辛料も調味料も持っていないから味付けはほぼ塩だけになってしまったが」との事だったが、腹ぺこ状態の二人にはそんなことはどうでも良かった。
この日、二人――一人と一匹は旅に出て初めてまともな食事にありつけたのであった。




