第17話 エコー.1
避難の指示が機械ばった声で伝えられた。アオイとユイがいるところから山を下って300mほど先のシェルターに避難せよ、とのことだった。
2人はそこに向かうために外へ出た。すでに職員達が避難のための誘導を開始していた。まだあたりにNWCの姿は見えない。恐怖はまだそこまで感じてないが、アオイは気を張り詰めた。
「行こう、ユイ」
「うん。」
ユイも緊張し集中している。自分の命に関わる事態なのだから当然だ。
温泉施設の建物からぞろぞろと人が出てくる。十数名といったところだろうか。職員が点呼をとり、下山の案内を始めた。人々は歩き始めた。恐怖はじわじわと心を侵食していった。
「おい、このまま指示に従ってたら逃げられなんいんじゃねぇか?」
後ろで中年男の声が聞こえた。
「たしかに。俺らだけでも走って逃げた方がいい気がするな。」
恐怖か不安からか、そんなことを言っている。暗い山道で迷ったらどうするんだーーーアオイがそう思っていたその時、だった。
ウゥアァァオォオーーーーーン!!!
狼のような遠吠えが響き渡った。少し機械のノイズのようなものも混じっている音だった。ビリビリと空気が震えている。
アオイとユイを含むその場にいた人々は、姿は見えないが、NWCが付近にいることをはっきりと知覚した。恐怖は加速する。
「やっぱりやべぇよなぁ!
ゆっくりなんてしてられるか!!
にげろぉーーー!!!」
先ほどの男達はそう叫んで走り出した。職員たちの制止を振り切って山の中をかけて行く。それに感化された何人もが続いて走っていった。恐怖や不安からかだろうか、皆冷静さを欠いている。
「ね、ねぇ、アオイ、私たちもーーー」
ユイが急かす。だが、アオイだけは誰よりも冷静だった。
「いや、それは良くない。
この山は割と入り組んでいる。それに今は夜だし迷ったら山を抜けられないかもしれない。ここはあの人たちの指示に従った方が安全で良さそうだ。」
アオイは落ち着いた雰囲気と口調で言ってみせた。目にはそれでも強い力が宿っている。それを聞いた何人かは納得したのか、もう勝手に走り出そうとはしなかった。彼らは案内に従い、再び出発した。
ここにいるのは7人だけであった。




