2枚目
私、小さな頃からスケッチブックと生きてて、
いろんな景色とか人とかを書いてきたんだけど、
気づいたらだんだん色がなくなっていっちゃったの。
クレヨンでぐしゃぐしゃにした絵とか、部活で書いた水彩画とか、
いっぱいあるんだけど、
先生と出会う少し前は無機質な鉛筆画しかしてこなかった。
「自分の心は絵に表れる」
その通りだなぁ。
…
『ねぇ。聞いてる?おーい。』
あ、ごめんね。あんまり聞いてなかった。
『珍しいね。ぼーっとしてるの。でもちゃんと聞いててよ。』
うん。気をつけるね。さっき何話してたっけ。
『コンクールの話。昨日言われたでしょ?』
あ、そうだったね。
…
この子は橋本友紀。
同じ美術教室に通ってる子。
私の通ってる美術教室は生徒が4人しかいないの。
今日からコンクールに出す絵を書くんだ。
コンクール、私好きなの。
だって、入賞したら先生が褒めてくれるから。
先生のために絵を書いてるみたいなものだから。
あぁ。
先生の事考えたら、先生に会いたくなっちゃった。
…
『今日、教室行く?』
うん。行くつもりだよ。
『そっか。やっぱり行くよねぇ。』
友紀ちゃんは行かないの?
『悩んでるの。だってめんどくさいじゃん?』
もー。友紀ちゃんめんどくさがり屋すぎるよ。
『だってー…私、自分から美術教室行きたいって言ったんじゃないんだもん。』
でも続けてるんだからなんだかんだ言って教室のこと好きでしょ?
『まぁね。だって先生優しいし。』
とにかく、もうコンクール始まるんだし友紀ちゃんも来なよ。
『そうだなぁ。じゃあ今日だけ行こっかな。』
毎日来てよ。友紀ちゃんの絵、楽しみだから。
『ありがと。あ、もう授業始まっちゃう。私戻るね。じゃあまた教室で。』
うん。また後でね。
…
あーあ。
早く授業終わらないかな。
先生、会いたいなぁ。