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ヒストリカル!法隆寺中学校  作者: プリンアラモード
第3部 名門私立学校との出会い
32/32

32幕 開会

 明くる3校対抗体育大会の日。

トラックを囲むように柵が立ち、その向こうで保護者がカメラを構えたりなどして、大勢並んでいる。

 僕たちは管楽器の音色と共にそのトラック上を進み始めた。

 「只今、入場したのは法隆寺中学校です。法隆寺中学校は最強のヤンキー集団、天才俳諧師、有能な共和国大統領、ユーモアある教師、男なのに名前に『妹』がつく奴など曲者揃いの学校です。今日はそんな曲者のを十分に発揮し、優勝を目指します。」

 昨日の予行練習とは違って、学校の紹介文がアナウンスされる。

 ちなみにこれは全校生徒の満場一致で、というより信長先輩の脅迫による同質化で推薦された太子の考えた紹介文だ。もう一度、言おう。太子の考えた紹介文だ。心底嫌だったが、僕も信長先輩にメンチを切られたのが怖くて仕方なく太子を推薦したのだった。

 その結果がこの有り様である。

 「最強のヤンキー集団」はおそらく信長先輩やルイス先輩の不良軍団のことだ。で、「天才俳諧師」とはあの謎川柳ばかりのバカだ。「有能な共和国大統領」とは生徒共和国の首相、つまり、太子だ。「ユーモアある教師」はそのまま、一癖も二癖もあるあの先生たちのことであろう。「男なのに名前に『妹』がつく奴」とは僕に違いない。

 ヤンキー集団や教師はまだしも、芭蕉が天才だの太子が有能だの買いかぶりの中で、僕を貶めるような揶揄である。傷付いたりはしないが、怒りは込み上げてきた。

 太子を睨むと、彼は目を背ける。確信犯である。

 「続いて、平城中学校が入学してきました。平城中学校は法華経の教えを基に皆仲の良い学校です。理事長の孫でもある生徒会長・聖武天皇は経費を惜しまず、あらゆるトラブルを仏に縋り解決してきました。たとえ赤字続きでも、生徒を思い続けているのです。そう、それか鎮護学校!今日も仏に願い、その教えに従い、力を合わせて頑張ります。」

そう、それが鎮護学校!は流石に恥ずかしい。てか、あの人生徒会長かよ。完全に浪費してるけど、また元明理事長に甘やかされたな。

 「最後に入場するのは平安中学校です。平安中学校は他校との交流をこの数十年間ほとんどしてきませんでした。それは菅原道真前教頭先生が他校の衰退と他校訪問の危険性からの提言によります。しかし、私たちは再興した他校と再び相まみえるこの日のために努力を積み重ねてきました。今日はその成果を十分に発揮し、自分なりに全力を尽くします。」

他校訪問の危険性って、平安中は学生寮はあっても全寮制じゃないのに今更だろ。

 残る両校もツッコミ所を用意しないと気が済まないタチのようだが、行進は終わる。


 そして、校長及び理事長の挨拶に入る。

 初めに煬帝校長が前に出て、

「若人、大いに助け合い、各々、信を学び勤しめ。

烈競、勝利の為に。三校、当に励み尽くすべし」

と詠む。単純な詩であるが、それ故意味は分かるし、芭蕉の川柳と違ってしっかりした言い回しである。

 次に平城中元明理事長。

「皆さん、おはようございます。平城中学校理事長・元明天皇です。我が校だけでなく、法隆寺中学校、平安中学校の教員の方々の協力があって、今日この日を迎えることができました。改めて、お礼を言いましょう。本当にありがとうございました。そして、生徒の皆さん。各校一致団結し、切磋琢磨し今大会を有意義なものしましょう。どうか、今日を勝つか負けるかで終わる日にしないでください。」

と言う。平城中のグラウンドで行われるということだから、実は平城中が3校対抗体育大会の主催である。実に主催者らしいありがたきお言葉だ。

 「『イッチ団結』って何だ、妹子よ!スレ主の集団か!?『せっさたくま』ってのは人名か!?」

と太子が僕に向かって叫んでくる。だが、教えてなんてやらない。というか、僕1人だけ貶めるような奴なんて僕の知人にいない!

 最後は平安中道長理事長。

「待ち侘びてついに迎ふる競ふ日ぞ縦ひ敗れど生い立ちぬべき。『待ち詫びてついに訪れた競合の日、たとえ負けてもきっと成長があるだろう』という意味だ。勝つのも大事だが、負けから学ぶことも多いのだぞ。ま、私が勝負事で負けたことは一度もないが、な!

と詠んで、意味も述べる。

「うわぁ...」

僕の口から思わず声が出た。この人が過去に詠んだ歌に「この世をば我が世とぞ思う」が含まれていて薄々勘付いてはいたがこの人はナルシストらしい。

 「うるさいぞー、理事長ー。お前の娘彰子さんと私の妹定子、どっちが3年一条を射止めたのはどっちだー?」

と、そこへ教員席の前方からよく通る声が響き渡る。そこにはパンフレットをメガホンにした若い教師がいた。「平安中学校教頭 藤原伊周」とある。若いのに凄いなと思った。

 「こ、伊周!貴様ぁぁぁっー!貴様は兄の子であるし、普通に優秀だから教頭に置いてやってあげてるが、私には罷免権があることを忘れるなぁぁぁっー!それにそれは彰子の負けであって、私の負けではないのだぁぁぁっー!」

教頭にキレる理事長。

「しかし、理事長が彰子さんに助言をして彼女はそれに...おっと、これ以上は...。すみませーん、怒らせてしまってー。」

と言われても、理事長は

「貴様ぁぁぁっー!!!」

と発狂することしかできなかった。 

 どうやら、理事長と教頭の仲はかなり悪いらしい。

 「おい、妹子!だから、何なんだ『イッチ団結』と『せっさたくま』ってのは!」

誰かが僕を読んでいる。説明を求めている。だが、知らない人に話しかけられただけだ。聞く必要はどこにもない。

 

 それから予定通り、旗の掲揚と「若い力」斉唱があり、

「これより、3校対抗体育大会を始めます」

と再び元明理事長が出てきて、開会を宣言する。それとともにパン!パン!と乾いたピストルの音が鳴った。

 これをもって開会式は終わる。僕たちは退場した。

 「ねぇ、妹子。イ...」

「あぁ!もう、うるさいな!『一致団結』ってのは心を一つに力を合わせることですよ!スレは関係ありません!で、『切磋琢磨』ってのは競い合って高め合うってことです!人名じゃない!」

悲劇だったのは席に着いてまた同じことを聞こうした太子に教えてしまったことだ。

 

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