23幕 連歌会
相当、他校の生徒はめずらしいのだろうか。体育館に入ると、たくさんの視線を感じた。僕は、道長理事長に連れられて舞台前に出た。
「えー。本日はゲストが来ております。」
理事長はそう言ってから、
「彼こそはバカと謳われ太子なり。」
「彼こそはバカの友にして常人の小野妹子と彼は名乗うなり。」
と太子は川柳で、僕は短歌で紹介をした。僕は、そこまで唄にしなくてもとは思ったが。
そして、連歌会は始まった。基本的ルールは普通の連歌と同じ。初めに季語と切れ字の入った発句を詠み、それを締めくくる挙句を詠み合うということだ。それも、この学校ではたった1つの発句に対して、詠まなければならないらしい。
ただし、発句の人は口語を使っても文語を使っても良い。挙句の人は発句の人のそれに合わせなければならないが。それと、季語は「夏」のみらしい。
それから、組分けがされた。僕と太子は組7に配分され、同じ組の人と握手を交わした。
「宜しく。」
と言われ、僕たちも
「お願いします。」
と返した。
「風うたい揺らげや靡け鯉のぼり...。」
こうして、連歌会は始まった。組の子がそう言った。挙句を詠む人はこれに関係のあることを言わなければいけない。初めに歌い上げたのは、隣の子であった。
「錦おりなす相模の川よ。」
相模の川、すなわち相模川。鯉のぼりで有名な川である。
続いて、詠んだのはそのさらに隣の子。
「雲無き空は目指す先なり。」
揺らいで靡く鯉のぼりが、青空を目指しているように見えると。なるほど、上手い。僕は上から目線ながら、頷いていた。
「岸を走るはな明るき子達。」
と、次に詠んだのはなんと太子だった。それも、悪くない。未だに思い付いていない僕が、上から目線だとは思うが、良いじゃん!これは負けられん!
「曇り大地に影は写らず。」
僕はそう言った。あえて、曇りという設定にして、子供の象徴である鯉のぼりの影が写らない空しさを表したかったのだが、伝わっただろうか?不安になって周りを見た。みんなは笑っている。取り合えず伝わりはしたのであろう。僕は一安心した。
それから、色々な下の句が出された。「黒くし勇む真鯉の姿」や「一目分からぬ武家の赤子よ」、「矢車の回る音神の降り立ち」、「橋から見えし紐に釣られし」、「棒に縛られ逃げれぬ者なり」など色々な挙句が詠まれた。
とても楽しかったので、僕たちは家に帰ってからも同じようなことをしていた。「ネットで連歌!」と言うサイトを見つけて、オンラインでやったりもした。やはり、それも面白かった。
その次の日、松尾芭蕉や与一くんに教えると、羨ましそうな顔をした。さらに、松尾芭蕉は変な歌を詠んだ。
「連歌好き何故に呼ばぬか最上川。芭蕉、怒りと憎しみの一句。」
その瞬間、場はシラケた。正直、昨日、真面目にやった僕たちからしてみれば、そんな歌は耳障りに値した。
そして、同時にこいつを連れて行かなくて本当によかった。どやら、太子も同じことを考えているらしい。奇遇にも。これは、僕とバカ太子間ではまれに見る、満場一致では無いか。(まぁ、2人の賛成を得られらただけなので、「満場一致」とは言えないのだけれども)




