21幕 俳句作り
月日とは早いもので、入学からもう2ヶ月が経った。いよいよ、照りつける日差しはどこかに容赦を忘れていた。その代わり、雨だって増えてきた。それは、もうすぐ梅雨であることを告げていた。
そんな春と夏の間の寒暖差が激しい時期。治先生の指導の元、ある課題が出された。それは、俳句。原則五・七・五の17音からなり、季語を入れるあの俳句だ。小説家である先生が俳句を心得ているのかはわからなかったが(いや、僕以上にわかってないだろ)、先生は添削をすると言う。僕たちは渡された短冊に俳句を書いていた。テーマは夏である。
僕は、迷っていた。夏と言っても色々ある。それを、五・七・五にまとめるのも難しい。切れ字と言うのがあるらしいが、上手く使える自信は無い。僕は途方にくれてふと、太子を見た。
「夕立に窓見てみれば滝のよう」。太子が書いていたのはそんな真面目な句だった。それから、松尾芭蕉の句も盗み見た。どうせ、最上川で終わるに決まっている。
なぜなら、誰にも彼の感性は客観的に見ても、全く理解できない。そもそも感性はそう言う物だと甘いことは言っていられない。あまりにも、個性的過ぎる。しかし、僕の思っていた句とは全く違う、真面目な句だった。
「冷蔵庫開けてみれば夏の色」。その真面目な句を見た瞬間、俳句に関して、彼をバカにすることなど出来なくなった。僕の心に何かが宿った。彼ら相手に決して抱かないだろうと思っていた何かを。それは、ライバル心だった。
リンリンと風鈴ならす風たちよ。擬音語!?擬人法!?それに、切れ字を使ってやがる!それは太子の句であった。その才能に、宝の持ち腐れだと思ってしまった。
僕も夏の俳句を作る。「葉桜の終わる頃まだ夏浅し」。「暑くなる長袖から半袖衣替え」。「容赦ない夏の日差しに汗をかく」。太子も句を作る。「日は高く昼も長めの夏至の日よ」。
松尾芭蕉も句を作る。「梅雨過ぎて雫が落つる青葉かな」。
まさかとは思っていた、バカ2人とのライバル対決。他の人は添削が多かったが、僕たちの句は添削が少ない。改めて、ライバルの大切さを学んだ。僕は、彼らを少し見直した。




