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#2 血壊の暴走

【いやぁ、あの話し方は疲れるのですよ。私はこう言うのは苦手なんですよね】

「「……」」

【どうしたんですか?そんな顔をして。あの塵みたいな人たちには微塵も謝罪の気持ちなんてありませんが、キミ達にはきちんと謝罪の気持ちはあるんだよ?】


 この女、キャラぶれすぎじゃないか。前世も今もキャラの可笑しい奴らに囲まれる人生になりそうな気がする。このクロノスと言う女の存在でそう感じてしまった。

 ヤンデレにツンデレ、クーデレにデレデレ。変態にドS、ドMなど様々な奴が居た。…本当、よく生きてられたな。主に過労死とかで死ななくてよかった。


【それでは早速、上地さんから特典の方を二つ、選んでいただきたいです】

「俺が欲しい特典って、最初から決まってたんだよね。無限に進化する力と退化する力が欲しい」

【進化する力はわかりますが、何故退化する力も欲しいんですか?正直に言いますが、退化の力なんて無駄な物でしょう?】


 進化の力で例えば、世界最強を倒してしまったとしよう。それ以上に強い者はいないのだから、強くなる必要はないのだから、進化は無限に続いていく。それこそ、周りのどんな生物も簡単に壊すことができるほど強くなることだろう。だからこそ、体の中では進化を続けるが、能力を弱くして周りに合わせる必要がある。そうしないと世界を楽しむことができないから。

 だからこそ、退化の力が必要だ。


【なるほど。では、あなたにはこの固有スキルを与えます。無限に進化をするスキル『無尽蔵の進化インフィニティ・エボリュート』。そして任意的に退化していくスキル『遊戯的な退化イグラー・リトログレッション』】


 クロノスの手…いや、なんで胸元なんだよ。…はぁ、うん、胸元から黒と白の陰陽太極図のようなマークの付いた藍色の光が現れる。その光は少し宙を漂うと俺の胸元に吸い込まれていった。その瞬間、頭の中にはクロノスの声で、この二つの力についての説明が聞こえてきた。


【『無尽蔵の進化インフィニティ・エボリュート』は自らの知らない未知の事象を観察、記憶し、その事象を越えるために体の中身や能力などを進化させます。その進化して手に入れた力は『○○モード』と呼ばれるようになります。現状使うことができるモードは『遊神モード』のみです】


 『遊神モード』というモードを現在使用することができるようだ。早速使ってみたいのだが、どうやって使えばいいのだろうか?叫べばいいのだろうか。まぁ、それは異世界に行ってからでも、試してみるとしようか。


【それでは最後に種族を決めてくださいね。選ぶことができる種族はもちろん一つだけですからね。…もう一つ選んでもいいですけど…どうしますか?】

「できるんだったら人間と獣人のハーフで頼む。脆弱な人間(ユマン)と身体能力の高い獣人(ワービースト)のハーフ。ちょっと本気で暴れても問題ない程度の頑丈さがほしいから」

【いいですね、いいですね。その強欲さ。そのまま私をほしいと言ってくれてもいいのですか、それはまたいつか合った時にしましょう。それでは一足先に転生させますね。それでは良き第二の人生を送ってください。……もしかしたら、私もその世界に行くかもしれませんね】


 なんか最後にぼそっと聞こえたけど、大丈夫か。また、変態たちに囲まれた人生を送るかもしれないと思うとちょっと、やる気を失うんだが?まぁ、とりあえず、楽しめるだけ楽しむとするけどな。


【それではゆっくり、落ちていってください‼】

「…へ?うわぁぁぁぁぁぁぁ」


 足元に穴が開いたかと思うと、俺は重力に従い、勢いよく落ちていった。…あの女、いつか処す。それを心に決めながら、俺は落ちていった。



 ん?なんか、体の感覚がおかしい気がする。体を動かそうにも思うように動かない。そして何よりも、目が開けられない。まるで、『赤子』に戻っているような感覚だな。いや、そんなことはないとは思うんだけど…。年齢はランダムだって言っていたし…あり得るか。

 恐る恐る目をゆっくりと開けていくと、そこには知らない二人の男女の顔があった。


「まぁ、起きたみたいだねアナタ」

「そうだな。だが、この子には悪いことをしたような気がするな。どちらか片方の要素だけだったらよかったかもしれないが…」

「いいじゃない。人から拒絶されるかもしれない、だからこの場所に移動したんじゃない。世界最強の神がいて、誰もが邪魔をすることのないこの場所に来たんだよ?」

「そうだったな」


 …ははは、なんだろう。この犯罪臭。身長180cmで筋骨隆々の白髪の男に、身長139cm程度で小学生みたいな黒髪の女。黒髪の女の頭の上には狐の耳が存在していた。そしてラブラブな二人。…完全に犯罪臭がするのだが、これはいいのだろうか。

 まぁ、本人たちが楽しそうであればそれでいいか。


「あら、今日はとても月が綺麗ね」

「あぁ、そうだな。今日はとても綺麗な満月だ。…あ、これは不味くないか?」

「…ア゛」


 …あれ、なんかあの満月を見ていると…だんだん理性が消失していくような気がする。なんだか…楽しい気持ちだけがあふれてくるような。

 アハ、アハハハハハハハハ。その瞬間、俺の中から理性は一時的に消失した。



 俺は今目の前で起こっていることに、驚愕している。俺とイリヤの初めての子供が満月の光に照らされ、『血壊』状態になっていた。獣人(ワービースト)の中でも一部の個体しか到達しえない状態ではあるのだが、その効果は身体能力の限界を超える。普通は自分の意志で『血壊』状態に入るのだが、子供だと、月の魔力によって暴走することがある。

 だが、所詮は赤子の身体能力の限界を超える程度だから、数分で大人しくさせることができるのだが…俺達の初めての子供は本当に俺たちの子供なのか。それくらい異常な光景を作り出していた。


「クヒヒヒヒ」

「イリヤ、俺たちの息子…やばいな」

「そうみたいねッ!私も『血壊』状態にならないといけないなんて…末恐ろしいよ」


 妻のイリヤも同様に『血壊』状態になっている。黒い髪は赤く染まり、額には目のような赤い紋章が浮き出ている。この紋章の形は種族や個人の性格によっても変化するようなのだが、イリヤの場合は双子座のシンボルマークが額には現れていた。

 一方息子…ソーラの額には目の紋章の上に、天秤座のシンボルマークが現れていた。他にも黒い血管のような模様が全身に現れ、脈動していた。


「俺がこんなことを言うのは失礼だと思うだが…まるで化け物だな」

「こら!そんなことは言わないの‼私達の子供なのよ?そんなことを言っちゃメッだゾ?」

「はい、すみません」


 ソーラを宥めている間はイチャイチャするなだって?いいじゃないか。ようやくソーラも落ち着いてきて…


「FOOOOOOOOOOO!!」

「落ち着いてきてないね」

「落ち着いてきてないわ」


 訂正、イチャイチャする暇はなかった。俺が得意とする拘束魔法を使い、ソーラの体を一時的に封じようと試みるが、一瞬の拘束後すぐに破られてしまう。

仕方がない。…最終手段をとるか。このままではソーラを止めるどころか、俺達も死んでしまうだろう。ソーラが赤子の身で手を軽く振るだけで幻獣へと進化した動物たちが簡単に絶命してしまっている。俺達が本気を出しても勝てるか勝てないかくらいの幻獣を簡単に屠ることができる。…それがどれだけ異常なことかわかるだろうか。

 しかし、それだけの力を使うことができることは、同時に自らの体を傷つけているということにもなる。だからこそ、早くソーラを宥める必要があるのだが…俺は無力だ。


「イリヤ、ソーラの『血壊』状態…封印するぞ」

「本気なの?」

「あぁ、あいつが大きくなって、制御できると判断したときに…封印を解く」

「わかったわ。少し時間を稼ぐね」

「頼む」


 全身を駆け巡る魔力を掌に集めながら、指先を噛み血を流す。流れ出る血を魔力を使って操り、宙に魔法陣を描いていく。陰陽太極図のような模様を描き、一層魔力を込める。魔法陣が光り輝くと、ソーラを足元にその魔法陣は移動した。


「ふぅ、ようやく準備ができたんだね」

「あぁ、待たせたな。ようやく完成だ。悠久なる闇の中に沈み、その闇を隠せ『闇棺』」


 地面にある魔法陣から黒い壁のようなものが次々に出現すると、一度上空まで飛んでいく。黒い壁は十字架のような形に変わると、ソーラに向かって落ちていく。四肢に刺さり、頭に刺さる。血が一切出ないのは、この魔法が攻撃用ではなく、封印するためだけにあるからだろう。

 ソーラが身動きをとれなくなったことを確認すると、この魔法の完成の一言を告げる。


「封印‼」


 ソーラは黒い光に包まれる。微かに光の隙間から見えるソーラの姿は徐々にではあるが、『血壊』状態が収まっていくようだった。

 棺が割れると、両手に陰陽太極図が書いてある姿のソーラが、すやすやと眠っていた。


「この寝顔を見れただけでも、ましだな」

「えぇ、そうね」


 気持ちよさそうな笑顔を浮かべるソーラを抱き、イリヤと二人、満天の星空を眺めていた。

 

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