39 ヒンボ嬢様 4
リタさんに言われて糸の先をみてみる。
「へぇっ……て、うわぁあ、本当だ。」
糸の先に付けられたうきが水面を出たり入ったりしている。
「えっ、これどうすればいいんですか、ねえ、リタさん、これどうすればいいんですか」
気づいたのと同時に引く力が強くなる。といかなんかめっちゃ引っ張られる。身体ごと持っていかれそう。
「かなりの大物ね。とりあえず落ち着きなさい。踏ん張るのよ」
歯を食いしばり全身に力を入れる。くわえている飴がくだけた。
「いい、私がタイミングを指示するから。少しずつ後ろに下がりながら。いい合図したら思いっきり引き上げなさい」
言われた通りに少しずつ後ずさる。竿にしている枝が折れそうなくらいしなっている。これもうやばいんじゃない
「リタさん。ねぇこれ竿折れちゃわないですか。ねぇリタさん折れちゃいそうでちょっと怖いんですけど」
「大丈夫よ。魔力込めておけば折れはしないから」
えっ、そういうもんなの。そういうことは先に言っといてほしい。
掴む竿に目一杯の魔力を込める。
「リタさん、なんかお花が咲いたんですけど、ねぇリタさんこれ大丈夫なんですか」
なんか魔力をこめたら竿に使ってる枝が成長して突然に花をさかせた。この切羽詰まったときにちょっとファンシーな花咲おじさん状態だ。
「だからメリッサ、あなたは魔力を込めすぎなのよ。まあ、いいわ。今は獲物に集中なさい」
釣竿は多少見た目はファンシーになったが成長した分太くなり丈夫になった。これで折れる心配は少なくなったが、竿を引かれる力はあいかわらず強い。
「いまよメリッサ、思い切り竿を引き上げなさい」
リタさんの合図で力いっぱい竿を振り上げる。さっきまで引っ張られていた力が無くなる。
「でかうなぎ⁉︎」
おもわずさけんでしまった。
宙を舞う、もはや美しいとさえ言えるウネウネとしたフォルム。この蛇にも似た見た目は見たことがある。前の世界の知識が正しいのならば間違いなくこれは、うなぎだ。
ただ自分が見てきた、うなぎと比べたらやたらでかい。胴回りが腕の太さくらい太い
「リタさーーーん、つれました。すご、これ、デカうなぎ。うわっめっちゃ暴れるじゃん。リタさんこれどうすれば、うわめっちゃ暴れる」
どうすんのこれ、陸に打ち上げられてうねうねと暴れるうなぎ。めっちゃ暴れてて怖くて近づけないんだけど
「落ち着きなさいよメリッサ。ちょっと貸してみなさい」
いうと私から釣竿をとるとリタさんは慣れた手つきで、うなぎを針から外し持ってきていた大きめの籠のなかにいれた。
なにこのお嬢様、すごすぎない。
「メリッサ、これは、かなりの大物よ。ここまで大きいのはなかなか見ないわ。ただ残念ね、あんまり美味しく無いのよこれ」
「美味しくないんですか? えっ、うなぎですよ」
思わず聞き返してしまった。俺の日本での記憶ならば、うなぎは高級食材だ。さらに世界三大うまいものの一つ(俺調べ)だというのに、それが異世界に来たからといって不味くなることなんてあっていいものなのだろうか。
「あら、あなたゼリーがため好きなんですの? 私あれ生臭くて少し苦手でしてよ」
「えっ、まさかのブリティッシュスタイル!!」
他国の文化を否定するつもりはないが、日本人からしたらどうしてそうなったと言わざるを得ない、謎料理のやつだ。元の世界はでネットでしか見たこと無かった料理にまさか異世界で遭遇するとは。
「ブリティッシュスタイル? 何かしらそれ」
しまった。衝撃で思わずこちらの世界の人に伝わらない単語を……
「いえ、別にそれはどうでも良くてですね。私の故郷ではうなぎといったら蒲焼きです。蒲焼きにしましょう蒲焼きに」
「蒲焼き? 聞いたことない料理ね」
蒲焼きの概念がない! いや無理もないか、たしかに前の世界でも蒲焼きは日本特有の調理だった気がする。
「えっとですね。こう背中から包丁を入れて、開いた身に串を刺して炭火で焼いてその後に蒸してまた焼くんですけど」
そういえば、うなぎの蒲焼きなんて自分がで作ったことがない。作り方はなんとなく知識としてはあるけどなんか職人さんが何年も修行してやっと美味しくできるみたいなイメージがある。素人がなんとなくでやってできるものなのだろうか。
「お嬢様ちょっとよろしいですか?」
うお、イケメン執事。この人ほんとうにいきなり出てくやめてほしい。
「おら、どうしかしたの?」
リタさんは慣れているのだろか特に驚く様子もない。俺的には一度注意してほしいけど。
「ギルドの方で、何かあったようです。すぐに向かわれた方がよろしいかと」
ギルドに何かあったのだろうか。なんだか嫌な予感がする。
「わかりましたわ。あなたちょっと、これおねがいできる」
「かしこまりました、お嬢様。それではお気をつけていってらっしゃいませ」
リタさんはうなぎの入った籠を執事にわたす。
「ほら、メリッサ急ぎますわよ」
「あ、はい、行きましょうリタさん」
かけ出すリタさんの追いかける。
ずっと咥えていた飴のなくなった木の棒が少し苦く感じた




