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冒険者ギルドの受付嬢? さん  作者: くれないこがね
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28 酒だ、飲めや、歌え 3

 あそこの踊っているワニの獣人なんかいい尻してんな。格好もなんか金持ちそうだし。よし奴の名はプリゲイツと名付けよう。


「メリッサ、顔が赤いけど大丈夫?」


「大丈夫ですよリタさん、こんなののへっちゃらんこですと。酔っ払ってにゃいです」


 ドワーフのおっちゃんがアナスタシアに連れて行ってしまってからも、宴はかなり盛り上がり、楽器の弾ける舞台になっているところで演奏が始まり、それに合わせて踊り出す人たちが現れてきた。この楽しい空気にのまれてついつい飲み過ぎてしまった。酔ってないけど。

 あ、あとアキムは帰った。これ以上遅くなるとイリーナさんが怖いらしいです。


「そう、貴方ができあがってることは理解できたわ」


 酔ってないのにリタはんは何をおっしゃっているのでしょう

 。少しボーとしてふわふわしつつ、ろれつが回らないだけなのに。


「よし、私ちょっと歌ってくる」


 さっきまで、ご飯に夢中だったルーナが演奏に釣られたのか舞台の方にかけて行く。あの子、歌ったりするんだ。ずっと寝ているからあんまりイメージ湧かないけど。


「よ、ルーナ。待ってたよ」


「おい、ハリーリクの歌姫の歌が聞けるぞ」


 冒険者ギルドの人間以外からも声援が上がる。すごい人気だ。みんながルーナのために舞台までの道を開けて行く。


「ルーナ歌はすごいのよ。わざわざ遠くの街から聴きに来る人が居るくらい」


「そんなにしゅごいんですか」


「それだけじゃないわ。肩こり、腰痛、きりきず、関節痛、にも効果があるっていわれているわ」


 何それ温泉かなにかかな。

 さっきまで踊っていた人達も舞台に上がって行くルーナに注目している。


「驚くわよ」


 おいおい、リタさんそんなにハードルを上げても大丈夫かい? これでちょっと上手いとかだったらがっかりだよ。

 おっ、ルーナの準備ができたみたいだ。伴奏が始まるとルーナは大きく息を吸い込んだ。


「ハァア〜エ〜〜ル〜シュラ〜イ♪」


 えーーーーうまーーーー。なにあれどこから声出てんの? というか、まさかのソプラノ。普段の喋り方からは想像できない声量がでてる。歌詞の意味は全くわからないがなぜかスッと入ってくる。俺はこの感動をどうやって文書で伝えればいいんだ。


「ちょっといいか?」


「よくにゃいです」


 ルーナの歌がいいところなのに後ろから声をかけられた。


「そんなこと言わずに、この前のことを謝りたいんだ」


「なんでしゅかもう、今いいところでしょうが」


 たくなんだってんだ。こっちは歌を聞きたいというのに空気の読めない奴は。


「って、うわ、ナンパ野郎ズ。なんのようでしゅか? はっ、ましゃか、この前のしぇ返しですか。上等でしゅ。表に出らぁ」

 

 振り返るとそこにこの間やたらしつこかったナンパ野郎三人組たちがたっていた。


「いや、そんなんじゃねえって、俺らは純粋に謝りたくて」


「なんですか、なにが目的でしゅか」


「俺らもギルドに行かないとこまるしよ。本当にすまなかった」


 頭を下げるナンパ野郎ズ。大男だけはふてくされてるところを無理やり頭を無理やり押さえられている。

 なるほど、やけに素直なのは冒険者としてはギルドに遺恨を残すのは避けたいのだろう。なら初めからやらなければいいのに。


「わかりました。ゆるしゅますよ」


「だから、この通り、すまなかった……っえ」


 三人が驚いたふうに頭をあげる。なんだか拍子抜けした感じだ。


「ゆるしゅって言ったんですよ。こっちにもふっ飛ばしちゃった落ち度もありますし、それはすみましぇんでした。これでお互いに水に流しましょう」


「いや、そんなあっさり」


 許すと言ったのになんでそっちが納得しないんだ。めんどくさいな。


「なんだ、しゅつこいな。それじゃあ、あにゃた達に私のお爺さんのありがたい言葉をきかせてあげます。

 いいかい、正義って奴は悪やつをこらしめて終わりじゃないんだ。そいつらが反省したら許してやる。そこまでやって初めて正義なんだ。ワシにはそれができなかった。だから婆さんは、婆さんは……

 だから、わかりましたか。この話はこれで終わりです」


 俺のお爺さんなんかいい感じの格言を聞かせてあげたのになぜか三人は納得していない。


「まだ、なにか?」


「いや、お婆さんはどうなったんだ」


「知らないでしゅよそんなの。お爺さんのその話はいつもそこで終わるんです。わかったらそれでいいじゃないですか。私はルーナさん歌をききたいんです」


 なぜか納得のしてないナンパ野郎ズの話を切り上げ舞台のほうに振り返るとルーナはすでに舞台を降り始めていた。えー終わっちゃったじゃん。ちくしょう。


「メリッサどうだった? 一応メリッサの歓迎のつもだったのたけど」


 舞台から降りたルーナが駆け足で寄ってきて感想もとめてきた。抑揚の無い喋り方だがルーナは意外とむじゃきなのかもしれない。


「すごく良かったです。だから私はすごくよかったと思いました」


「すごい。メリッサ内容がない」


 そんなルーナと会話をたわいもない会話しているとおもむろにリタが立ち上がった。


「それじゃあ真打の登場といきましょうか」


 リタのその一言で酒場全体に静かになった。店の店員すら手を働く手を止め全員がリタをみている。なんだ、ルーナのとき以上の反応だ。もしかしてあれよりもっと歌が上手いのか。


「いや、リタは今日は冒険をしてきて疲れてると思うの。やめておいた方がいいよ」


 リタが舞台に向かおうとするのをすかさずルーナがとめた。

 なんだか様子がおかしい。周りのみんながリタの一挙手一投足に注目している。静まり返る空気。皆の顔にあるのは期待じゃない。これは恐怖だ。


「ルーナ。遠慮しなくてよろしくてよ。私とても気分がいいですの」


「全員でお嬢を止めろ!!」


 動き出すリタ。それと同時にその場の全ての人間がリタを止めにかかる。


「ちょっと貴方達、道をお開けなさい」


「悪いな。お嬢。俺たちは生きてかえらなきゃいけないんだ」


 突然起きた大混乱。さっきまでの和気あいあいとした空気が一気に熱気に包まれる。


「いやだ。死にたくない。死にたくない」


「バカやろう。生きて帰るんだよ全員でな」


 命乞いをする人まで現れている。もしかしてリタはものすごいガキ大将タイプなのか。


「メリッサ。ここは私たちが抑えるから、何か舞台で何か歌って。リタは誰かが歌っているのを邪魔するような無粋なことはしないから」


「しょんな急に言われても」


「なんでもいいから早く。今はメリッサしかいない」


 ルーナな頼まれみんなに押されて舞台に上がる。いきなり歌えと言われても、この世界の歌とか知らないしどうすれば。とりあえず周りを見渡してみる。おっ、なんかおかしな形の器具がついたギターぽい楽器がある。とりあえず手に取り軽くならしてみると何故かエレキギターぽい音がした。

 多分、魔楽器とかそんなんだろう。たぶん本体に付いてるこのおかしな器具が音を増幅するしくみなのだとおもう。


「これなら、いける」


 学生時代にモテたくてはじめたギター。そして全くモテなかったショッパ辛いシュガーレスなおもひで。

 俺は右手を高々と掲げ、一気に振り下ろした。


「いくぜ、ロッケンロール」


 鳴り響く爆音。集まる注目。刻まれるビート。

 俺のその日の記憶がはっきりしているのはここまでだ。

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[一言] そして異世界の音楽業界に新風を( ˘ω˘ )
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