表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者ギルドの受付嬢? さん  作者: くれないこがね
10/39

10 ようこそハリーリクへ 3

 門を抜けるとそこには中世ヨーロッパ風の景色が広がっていた。

 はい、ごめんなさい、いまとても楽をしようとしました。だって情景描写ってすごく難しくない? それをたったの一言で行ったこともない街の景色を勝手に想像してもらえる。そんな魔法の言葉が存在したら、つい使いたくなりませんか。それが人の心情というものではないでしょうか。

 はい、すみません真面目にやります。

 煉瓦造りの建物が並び、道は石畳で舗装されてる。少し進むと開けた広場にでて露店が立ち並びマーケットが開かれている。

 要するに、中世ヨーロッパ風の景色だ。

 それにしても、いろんな人種の人が歩いてるな。一番多いいのは普通の人間ぽいけど。やっぱり目立つのは、門番のカワウソみたいに動物が二足歩行で歩いているようにみえる獣人みたいな方々か。

 羊ぽい人と狼ぽい人が並んで歩いてる姿は、なんともシュールだ。

 彼らはどういった進化をたどってここに存在しているのだろうか。気になる。ダーウィンとか転生してこないかな。

 他には中学生くらいの身長で、がっちり体型のおじさんとか、アキムみたいに耳の長い人達がいる。やっぱりドワーフとエルフとかなのかな、ファンタジーでは定番だし。

 そうだ、今なら聞けるんじゃないか。その長い耳について。


「なあ、アキムさん。その耳……」


 アキムが嬉しそうにこちらを向く。


「ええ、そうです。よくわかりましたね」


 今度こそ察してくれたのかアキムが説明を始めてくれた。


「そこ妻の姉の旦那がやってる工房なんですけど。このピアスそこで妻が作ってもらったんですよ。私の誕生日にって」


 ちげーよ。わかってねーよ。そのピアスどんだけ自慢したいんだよ。

 まあいいや。アキムにはいろいろ世話になってるし今度機会があったらきこう。

 それより大きな問題があった。


「さっき門番にあんなこと言って大丈夫だったのか?」


 ギルドの人員補充の話は俺は全く知らないし、アキムと門番のカワウソが知り合いなら後々まずいんじゃないか。


「ああ、あれは大丈夫ですよ。メリッサさんさえギルドで働いてくれれば」


 働く? 俺が冒険者ギルドで?

 うーん、いや無理だろ。俺は普通の現代日本の住人。しかもシティー派だ。


「いやいや、ちょっと待って。そんないきなり言われても。よくわかんないけど冒険者って魔物と戦ったり何日も野宿したりするやつだろ。無理無理、俺にはできないって」


 普通にそこらへんを歩いてる野良犬にすら恐怖心を抱く人間がいきなり魔物と戦えなんて言われてもできるわけがない。実際ゴブリンに襲われたときだってめちゃくちゃこわかったし。


「それも大丈夫ですよ。不足しているのは、冒険者じゃなくて、事務の方ですから」


 事務仕事か、それなら魔物を倒したりとかよりできそうだけど。


「でも、いきなり、こんな住所不定の人間が行って雇ってもらえるものなのか」


 そもそもの問題だ。俺は素性が知れない。


「それも平気ですよ。私、ギルドマスターですから」

 

 まじか、アキムさん偉かったの。


「それとも、何か行くあてがありましたか?」


 もちろん、この話を断ればホームレス生活をスタートさせることになる。でも。


「いや、とてもありがたい話だけど。なんで今日あったばかりの俺にそこまでしてくれるんだ」


 ここまでいろいろ助けてもらったが、そもそもアキムには俺に親切にする理由がない。


「困ってる人がいたら助ける。それが冒険者の流儀ですから。それに人手不足っていうのも本当ですし。メリッサさんさえよろしければですが」


 なんだこいつ。すごい、いい奴なのか。いや、でもうまい話には大抵裏があるもんだからな。でも、確かに行くあてもないし。もし、なんかあったらその時に全力で逃げればいいか。


「それなら、雇ってもらえると大変助かります」


 それにアキムはそんなに悪そうな奴には見えないしな。


「ええ、こちらからもよろしくお願いします。あ、ほらあれを見てください」


 街道を抜けると、建物の隙間から湖がみえてきた。大きさは多分昔に見た芦ノ湖くらいの大きさだと思う。真ん中ら辺に島があり、お城みたいなものが建っている。そして対岸にも街がみえる。


「すげー綺麗だ」


「ええ、私もこの景色がすきなんですよ」


 本当にこの景色だけでも観光地になりそうなくらい綺麗な場所だ。

 アキムが湖畔にある建物を指差す。


「あれが、冒険者ギルド、ポニーテールですよ」


 そこには煉瓦造りで、剣とランタンをモチーフにした看板が掲げられた建物のが建っていた。



 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ