第二話 陽気な親友と寒いギャグ
注意 この作品は暴力行為、殺人などを推薦したり助長したりする意図はありません。あくまで作品の要素として組み込んでおります。そのため、あくまで作品、フィクションであることを理解の上お楽しみください。楽しめなかったらごめんなさい。
第二話。先に言っちゃうと新キャラ出てきます。結構セリフで苦労しました、、何せ関西弁ですからね。一応ほんまの関西弁しゃべる人のから学んだものやから、、少し間違ってるくらいで済んでるんちゃうかな。ってやっぱ関西弁ってむずいわ!あれペラペラ話す人凄いなーって思います。さて、小説の方は普通に進展します。もちろんこれからも。お楽しみに。
「な、なんだお前、、」
そこにいたのはボロ布を体に巻いただけの若い女だった。ひどく怯えたようすでペタンと座り込んでおり、怯えのあまりまだ狼神に気づいていないほどだった。
「お、おい。」
狼神は女に自分の存在を気づかせようと女の肩を揺すった。するとようやく女は狼神に気づいたようにビクッと体を震わせ、顔を上げ狼神の顔を見た。そして狼神が手に持って振りかざしたままだった小刀を見て、顔を青ざめて後退りした。
「い、いや、あいつの仲間なのね、、」
女はひどく目を見開き、体を震わせていた。その恐怖は狼神にも伝わりそうなほどで、彼女の心臓の音が太鼓の音が響くように、狼神の体内に響くかのようだった。
「あいつ?あぁ、メイリンが言っていた女達の一人なんだな。安心しろ。俺は梅島の敵。そしてお前は梅島を敵視してる。つまり敵の敵は味方だから俺はお前の味方だ。」
狼神はそう言ってゆっくりと怖がらせないように、小刀を鞘におさめてまた元の場所にしまった。
「殺さないで、殺さないで、、」
狼神が説明をしたあとも女は怖がり続けていた。
「お前、とりあえず名前を教えてくれ。」
狼神は彼女の前にしゃがみ、名前を聞いた。女は狼神をチラッと見てなお震えていた。
「あ、あんたもあいつの仲間なんで、、しょう?そ、そしたら、、あの、め、名簿に、名前があるはずじゃ、、ない、、うぅ、、」
震えながら女がそう言い、ついに泣きはじめた。狼神は慣れない口調で彼女を慰めようとした。
「お、おい待ってくれ、言っただろう、俺はお前をこんなふうにしたやつの仲間じゃない。なぁ、名前を教えてくれるだけでいい。教えてくれないか?ほら、この通り、名簿とやらも持ってない。」
狼神は両手を開き、ポケットも裏返して見せ、背広も脱いで見せた。すべてのポケットを見せたため、小刀、地図、財布、ハンカチなど色々なものが地面に落ちた。小刀を見て改めて驚いた女だったが、泣いたまま小さい声でしゃべりはじめた。
「、、めい、、」
「え?」
「命よ、、わ、私の名前、、」
その女、命はそう言って狼神に少し近づいた。
「ねぇ、あなた、私を、、助けてくれる?」
命はすでに泣き止んでいたが、充血し腫れた目を狼神の方へ向けて言った。狼神は少しうーんと悩んでいたが、答えた。
「あぁ。俺がお前にどこまでできるかわからんが、放ってはおけない。だが、助ける代わりに梅島の情報を知ってる限り話すんだ。」
そう言って命が返事もしないうちに狼神は自分が着ていた背広を、命に被せた。
「待ってろ。そのままじゃどこへも行けないだろう。服を買ってきてやるからそこで誰にも見つかるなよ。」
命は何も言わず、狼神が与えた背広の衿を握っていた。狼神はすぐに倉庫から出て、近くの洋服店へ向かった。
洋服店へ着くと、狼神は普段絶対立ち寄ることのないであろう婦人服売り場へと向かった。そして服を適当に取り出していると、そこにいた女性店員が話しかけてきた。
「お洋服をお探しですか?奥様のでございますか?」
女性店員はわざとらしい笑みを浮かべながら小肥りの体をくねらせて話しはじめた。
「でしたらそちらの色よりもこちらの方がより季節感が出ますよ。」
女性店員は傍目に見てもイライラと服を選んでいる狼神をそっちのけで、淡々とトレンドやら色の組み合わせやらを話していた。すると狼神はついに怒りを露にした。
「今はそれどころじゃないんだ。ビジネストークをするなら相手を考えろ。」
そう言って狼神が睨むと、女性店員は顔を引きつらせながら笑ってお辞儀をし、何よあの男とぶつぶつ言いながら去っていった。そして狼神はあらかた全身の服を選んだ後、会計を済ませてまた倉庫へと戻ろうと店を出た。
ーおい、あの倉庫にいたやつ、逃げたらしいぜ。
あぁあの不法侵入野郎か。ついに捕まったんじゃね?ー
狼神が倉庫へ戻ろうと道を歩いていると、梅島らしき話が頻繁に狼神の耳に入った。
「もう噂になってるのか。」
狼神は少し歩く速度を速めた。
ガラッ ギキー
ほとんど同じような金属音をたて、倉庫の扉は開いた。狼神は買った洋服の入った手提げ袋を持ち、あのドラム缶のところへ歩いた。そしてドラム缶の裏に回ると、黒い背広で少し大柄に見えるが、命がそこに変わらず座り込んでいた。
「おい、服だ。悪いが、服のことはよく知らないし、のろのろ選んでる暇もなかったから適当に選んできた。当分の間はこれで凌いでくれ。」
狼神は持っていた手提げ袋を命に差し出した。命はしばらく袋を見つめ、手を伸ばしてその袋を受けとった。そして命が手提げ袋を開けると、その中を丹念に見つめ、今度は狼神を見た。
「大丈夫だ。変なものは入っていない。しっかり女性用のを選んだ。早くそれを着てくれ。」
命は狼神の言葉を聞いて、何も言わずに一番上にあった服を取り出した。それは女性用のシャツだった。次に出てきたのはジーンズ、その次は靴下、その次は靴、そしてネックウォーマー、最後はワンピースだった。オレンジの花の花柄で、黄色ベースの明るい色のワンピースだ。
「これ、ワンピース、着替え用?」
命は恐る恐る聞いた。
「あぁすまない。適当に選んだから多かったのか。だが買ってしまった物はしょうがない。着替えとして取っておけ。」
狼神はそう言い、命に早く着替えを済ませるように言うような仕草をしたが、命は下を向いて着替えを始めようとしなかった。
「おい、どうした。早くしないと忘れ物に気づいた梅島がやってくるぞ。」
だが命は服を握りしめたままだった。
「着替えるから、、見ないで、、」
命は怖がったからなのか恥ずかしがったからなのか、小声でそう言った。しばらくの沈黙のあと、狼神はようやく何のことか気づいた。
「あ、あぁすまない。外にいるからそこで済ませろ。」
狼神が外へ出ようとすると、命が立ち上がって狼神の髪を引っ張った。狼神の方が背が高いため、腕を伸ばしてようやく引っ張れるようだった。
「い、いてて!!やめろ!」
狼神が叫んだため命はビクッとして手を離した。いててと引っ張られたところをさすりながら、狼神は命の方へ振り向いた。
「引っ張ることないだろう、、で、なんだ?やっぱり見てほしくなったのか?」
バチン!と爽快な、綺麗な皮膚と皮膚がぶつかる音が響いた。
「ぐぉー!!!痛い!!!痛いぞー!!!」
バチンバチンと同じように、いや、さっきよりも豪快な音が響いた。
「や、やめろ!!!一体なんで殴るんだ!!!くそ、、腫れたじゃないか、、」
狼神は叩かれた頬をさすっていたが、命も慣れないビンタをしたせいか、手首や手の平をさすっていた。
「慣れないビンタなんかするからだぞ。だが、その痛みは普段人を殴らない優しさの証だ。で、一体何に怒ったんだ?見られたいわけじゃないなら何なんだ。」
狼神は虫歯ができたときのように腫れた頬を動かして言った。命はまだ手首をさすっていたが、また小声で答えた。
「見ないで。でも近くにいて。」
命はそう言ってドラム缶の後ろに隠れ、服を脱ぎはじめた。命が脱いだボロ布が見えた時、狼神はハッと気づいてドラム缶とは真反対の方向を向いた。
「そ、その、、なるべく早く頼む。」
「うるさい」
命の言葉に驚いた狼神だったが、諦めて叩かれたところをさすりながら待つことにした。
「終わったわよ、、」
狼神が振り返ると、シャツにジーパン、靴下も靴も身に纏った命が顔を下にむけて立っていた。ネックウォーマーで鼻まで隠れているのも見えた。
「よし。これで不格好だが周りからも怪しまれないだろう。」
狼神がそう言うと、命は少し不機嫌そうに頷いた。狼神はそれに気づかず、ついて来いと手招きして倉庫へ歩いていった。命もそれにスタスタと続いていた。顔は下に向けたままだが。
「もう深夜だ。」
狼神達が外へ出ると、夜が深くなっていた。指示を受け、倉庫に向かった時も夜ではあったがまだ7時ごろであった。だが今は夜も深く、0時ごろといったところである。洋服店も閉店間際だっただろう。
倉庫のある道は暗かったが、すぐ行けばネオンや居酒屋などで明るい大きな道がある。それをずっと通り沿いに進めばメイリンのいる酒屋であった。だが、狼神は命をそこに連れていこうとは考えなかった。
「いいか、今からお前をある人に預ける。俺の喧嘩屋、、仕事を始める前からの親友だ。安心しろ。」
命は頷いて答えるのみだった。
二人は明るい大きな道へ抜け、酒屋とは反対方向に通り沿いに歩いていた。
「なぁ、、お前の苗字ってなんだ?」
狼神は周囲に気をつけながらも軽い声で尋ねた。命はしばらく黙っていたが、倉庫の時よりも大きめの声で答えた。
「小谷。小谷 命。あなたは、、何て言うの?」
命は狼神の方を向いて同じ内容を聞いた。
「狼神だ。狼神 真司。」
狼神はそう答えただけだったが、命は少しニヤッとした。
「じゃあ、ロウちゃんね。」
命の唐突な、しかもセンスのないニックネームに狼神は驚いた。
「な、なんだそれ、普通に狼神でいい。」
だが命は譲らなかった。
「ロウちゃん、、フフフ」
よっぽど気に入ったのか、自分で繰り返し言っては満足げに笑っていた。
そうこうしているうちに、あるマンションにたどり着いた。
「ここがさっきの話の親友の家だ。桜田 次郎。マンションを丸ごと所有してる。」
狼神はそういうと命の手をひいてマンションの中へ入った。中は広々としたフロントがあり、電子ロックで奥へは行けないようになっていたが、ガラスでできたドアのため見ることはできた。狼神は電子ロックのところへ行き、三桁の数字を入力した。すると数字を入力するテンキーの横のスピーカーから男の声がした。
『ん?あらら?なんや真司やんか!心配しとったでー連絡よこせやー!』
男は陽気に関西弁をしゃべった。そして狼神はそれに淡々と答えた。
「いいから早く開けろ。保護してもらいたいやつがいる。」
『お!隣のべっぴんさんがそうかい!なぁ、俺が貰ってええやろ?どうせお前の女やないやろうしな!』
狼神は陽気な男にイライラしていた。命のネックウォーマーが倉庫では鼻まであがってたのが、首までさがっており顔が見えていたため、桜田にも見えたのだ。
「早く、開けるんだ。」
『はいはい、お前の頭の固いところ、相変わらずやのー。』
陽気な男との会話が終わると、ガラスのドアが音もたてずスムーズに開いた。
「入るんだ。」
狼神は命を急かした。命は少し状況を掴めず混乱していたがとりあえず狼神のあとについていった。
「さて、後一階上がるだけだ『よう来たな!真司にべっぴんさん!』
階段で2階から3階にあがっている時だった。3階から下にいる狼神達にむけて桜田が大きな声で叫んだ。狼神の言葉を遮って突然叫ばれたため、命は驚きビクッと跳ね上がって階段から落ちそうになった。
「なんやカメラで見るよりべっぴんさんやないかい!なんでこんな可愛い子紹介してくれへんかったんや!真司さんよー!」
桜田はドタドタと階段を下りて命の前で止まった。
「のうべっぴんさん、名前何て言うんや?歳はいくつや?ここらへんに住んどるんか?」
桜田がマシンガンの如く質問をぶつけたため、命は困惑していた。
「おい、やめろ桜田。こいつが迷惑してるだろう。」
狼神が止めると命が狼神の横にいたのが、階段を一段下りて狼神の後ろで身を縮めていた。
「なんや嫌われてもうたか、、俺は桜田や。よろしくな。見た感じ俺らよりも年下みたいやけど、、真司、こんな子どこで拾って来たんや。」
桜田が少し心配そうな目で狼神を見た。
「こいつは例の指示を遂行しようとしたら見つけた子だ。だがこいつをどうしようと俺の自由のはずだ。だからお前のところに預けたい。」
狼神がそういうと、命は狼神のシャツの裾を握った。
「こいつ、、命っていうんだが、命も怖がってる。何があったのかわからんが、とりあえずお前のところで話を聞きたい。」
狼神は後ろにいる命を見て大丈夫だと無理矢理自分の横に移動させた。
「せやったら俺んとこでゆっくり休みながら話せばええわ!ここのセキュリティはばっちしやで!まぁ見た目やとわからんけどな。せやから安心せいや!」
桜田が気を遣って先程より声を小さくして命に話し掛けたが、命はやはり怖がって再び狼神の後ろへ戻った。
「とりあえず俺の部屋に案内するわ。3階の一番階段から離れた部屋や。とは言ってもまっずい紅茶とあまーいココアしかあらへんけどな!ナハハ!」
桜田の冗談にも命はもちろん、狼神も微笑むことすらしなかった。
「ちゃんとしたやつあるから、、砂糖とかミルクとか言ってくれな、、ココアもあるし、、」
桜田はしょぼんと肩を落としながら狼神達を先導して3階へ向かった。
ガチャッと桜田は自室の入口のドアを開けた。
「ただいまー、、言うても命ちゃん達迎えに行くまでおったんやけどな!」
桜田の冗談には狼神達はもちろん笑わず、物音一つたたなかった。まるで空気までもが早くその下らないギャグをやめろと言ってるみたいである。
「命ちゃんも一緒にー、ただいめーい!、、なんちゃって!ナハハ!ただいまと命をかけたんやで!おもろいやろ!」
ドガッと狼神が黙って玄関の壁を殴る。すると大きな穴が開き、まさに怒りを具現化したようなものであった。他人の家でもおかまいなしである。命も怖がるかと思いきや、同じく怒ったような顔をしていた。何せまだ玄関までしか通されていないのである。そう。玄関でずっと聞かされていたのだ。それは北極でドライアイスを押し付けられるようなものである。
「は、ハハ、ほんまおっかないのう真司ちゃん、、」
そのまま桜田は二人をリビングへ通した。桜田のリビングは意外にも片付けられた素朴なリビングで、家具は木の丸テーブル、それにそって座布団が三つあり、テーブルを挟んで座布団の反対側、部屋の壁に接している大きなテレビがあった。キッチンはテレビの反対側、つまりテレビ向きで座布団に座ると背後になる形である。テレビが北、キッチンが南とすると、東に先程三人が通った廊下、西に大きな窓、といった具合である。リビングは一番奥にあり、その途中にいくつか部屋がある。
桜田がレモンティーとストレートティー、コーヒー、いくつかの角砂糖とスプーンをもってやってきた。
「命ちゃんはレモンティーでよかったんかな?おっと、ここは俺の意表をついてコーヒー取ってもいいんやで?」
狼神がレモンティーとストレートティーを桜田からとり、テーブルに置いた。
「どっちがいい。コーヒーでもいいが。」
狼神が命に聞いた。桜田はまたしょぼんと落ち込み、コーヒーをテーブルに置いて座った。
「レモンティー、、」
命がそう答えたので、狼神はレモンティーを命の前へ移動させ、角砂糖を脇に置いた。狼神自身はストレートティーをとり、手づかみで砂糖を二つ入れた。
「行儀悪いなーこういうのはちゃんとこのトング的なのでとって、音をたてへんように静かに一つ一つ入れるんやで。まぁ俺もよう知らんねんけどな。」
桜田はそう言ったものの、砂糖を一つもとらずにコーヒーを啜った。命は砂糖を一つ入れ、レモンティーを啜った。
「さて、まず、桜田。突然押しかけてすまないな。事情を説明する。」
狼神はそう言って座ったままお辞儀をした。
「なんや気持ち悪いのう。今までどんな喧嘩しても仲直りしてきたんやで。今更そんなちっぽけなことで頭下げんでええわ。」
桜田は笑いながらそう言ったが、事の重大さを察し、そのあとは黙って狼神の話を待っていた。そして狼神は頭を上げ、命を見ながら話しはじめた。
「この命って子は俺が例のルーラーの指示を遂行している最中に発見したんだ。元々は梅島殺しの指示だったが、アジトを襲ったときにはもぬけの殻、いたのは一枚の布着ただけのこの命だけだった。」
狼神が簡潔に話すと桜田は驚いてコーヒーを吹き出しそうになりむせた。
「ゴホッなんやて!?梅島!?あの負け知らずの梅島やんな!?」
桜田は元々関西の人間で、大阪で狼神のような喧嘩屋をしていたが、梅島と同じように関東へ引っ越してきたのである。関西弁は本人のお気に入りで使ってるだけである。
「俺は命の名前しかしらない。歳も故郷も知らないが、今はそれどころじゃない。梅島殺しを遂行しなければ、、ルーラーはいつだか指示を破った場合は必ず俺のことを殺すと言っていた。」
命はすでに状況に置いてけぼりだったが、殺すという単語を聞いて驚いた。
「殺す言うてもなー、、狼神は確か俺と出会う前、どこぞの国の軍人でもあったんやろ?せやったら簡単には殺せへんと思うで。」
命は桜田の言葉を聞いてさらに驚いた。
「だからとりあえず命を、梅島殺しを遂行するまででいいから匿ってほしい。元々は梅島の女だ。もちろん命自身はその意識はないだろうが、梅島が取り戻しにくるかもしれない。」
狼神が命の顔を見る。命は話の内容に驚いていたが、狼神に見られて少し照れくさそうに見返した。
「命、歳はいくつなんだ?」
狼神が質問をすると命は倉庫の時とは打って変わってスラリと答えた。
「17」
狼神はそれを聞いて驚き、桜田は少し険しい表情をした。
「17って俺より5つも下じゃないか。梅島はそんな若い子まで、、」
狼神が梅島の酷さに唇を噛んでいると、桜田が口を開いた。
「言いたいことが二つある。まず、その子はお前にやる。幼すぎる。」
命が少し怒った様子で桜田を睨んだ。
「冗談や。せやけど、大事なのは二つ目や。いくら梅島でも、やつがこっちへ来てまだ一週間も経っとらんはずや。せやけどここまで若い子に手出すほど力つけてるんや。それにや、梅島は確かに実力もあるし梅島会を作ったほどの実力者や。せやけどこの街まで人脈は行っとらんはずや。やつは一匹狼やったからな。梅島会も異常に少人数やのに成り立ってるっちゅうことで関西じゃ話題になったもんや。要するに、やつがここまで力をつけてることがありえへんねん。なぁ命ちゃん。命ちゃんはどうして梅島のアジトにおったんや?」
桜田が不可解な質問をする。狼神は不思議に思って桜田に聞いた。
「どういうことだ?そんなの関係あるのか?」
すると桜田がすぐに止めに入った。
「しっ。静かにせい。」
狼神も命もよく理解できなかったが、命は不思議に思いながらも答えた。
「えっと、、確かあの街で夕方遊んでて、男の人達に話し掛けられて、、怖くて逃げようとしたら周りが男の人達ばかりになって、気がついたら車に、、」
命は自分の経験を思い出しながら離したが、途中で話が途絶えた。
「もうええで命ちゃん。そうか。せやったらなおさらおかしいわ。」
桜田は腕を組んで考え込んでいた。狼神は命の頭を不器用に撫でながら桜田に聞いた。
「どういうことだ?、、あ、なるほど。」
狼神も何がおかしいか理解した。
「そうなんや、少人数の梅島会がそんな人員出せると思うか?思えへんやろ。それに、梅島会は未だに関西に存在してるんや。つまり、梅島単体で関東へ乗り込んできたんや
。まぁ梅島会は誰かが受け継いどるんやろうけど、梅島が一人で命ちゃんを襲わなつじつまが合わへん。そいつほんまに梅島なんか?」
桜田が一通り推理を終え、狼神達に確認を迫ったその時、どこからともなく警報装置が鳴り出した。
「な、なんやと!あかん、フロントに誰か侵入したみたいや!」
続く