3ページ目…集った人達
「…行ったな」
「…行っちゃったね?」
「うん、行った」
「行ったね」
「行きましたねー」
修学旅行に行くバスを見送った俺たち。…俺たちというのは俺、葵、真実、紫谷野、幸さんの5人。俺たせちは修学旅行に同行しない組として、今集まっていた。…何故幸さんが居るんだろ う
「…会長さん、行かなくてよかったんですか?別に無理してあたしらにつかなくても…」
「別に無理なんてしてませんよ?私、こう見えても乗り物酔いが酷いから~…」
「それは酔い止めの薬を飲めば…」
「んもぅ、私が居るのはそんなに不満だったかな?なら帰るけど…」
「…いえ、別に不満は無いですよ?」
真実と紫谷野の質問に笑顔で返す幸さん。…相変わらず目が糸目だから表情が読みにくいな
「…まぁ、幸さんのお陰で学校での宿泊の許可が降りたんですよね。ありがとうございます」
「いえいえ~?面白そうだったからついオッケーしちゃったよ~?」
「…とまぁそんな感じで、今日から一泊二日のお泊まり会だよ!皆、準備はいいかな?」
「「おー!」」
…まぁ、何はともあれ今日から一泊二日で学校への外泊、俺たちのクラスに拠点を張ることにした
「…やっぱり同じ部屋で寝るのか?どうせなら俺は別の所で…」
「ユウ、往生際が悪い!受け入れたなら諦めなよ!」
「…」
真実以外の女子にも目を向けるが、どうも逃がしてくれる気配に無い。…仕方ない、諦めるか
「…それで、まずは何をするんだ?」
とりあえず俺はこれからの段取りを聞いてみた。前に真実になにか必要なものはあるかと聞いたら着替えとお金くらいって言ってたんだよな
「とりあえず~夕御飯作りからかなぁ?楽しみイベントの一つでしょう?」
幸さんがまず口を開いた。…飯か
「寝床を整えなきゃね。流石にこう机が並んでちゃ寝る場所が狭くなっちゃうし」
紫谷野が次に続いた。…紫谷野のこんな楽しそうな顔初めて見たかも
「…お風呂は?」
「うーん、そこが問題だよね。…プールに熱湯張っちゃう?」
「…良いかも?」
そして葵と真実がさらに付け足す。…風呂は無理だろ…
そしてとりあえず、教室を片付ける組と料理組と分けて動くことにした。俺は紫谷野、幸さんと一緒に片付け組だ。どうやら幸さんは料理は得意じゃないらしく、紫谷野は言い出しっぺだからとのことだった。とりあえず三人でまず机をどかしにかかる
「…とりあえず端に避けていいのか、紫谷野」
「シアって呼んでよ、名前長いんだから」
「…シア」
「OK~」
「…浅井君と紫谷野さんは大分古い付き合いなの?」
掃除をしながら何気ない調子で聞いてくる幸さん。…
「いえ、去年の夏ごろからですよ?クラスもちがいましたしね」
「でも、その割には仲が良いようだけれど?」
「ちょっとしたことがありましてね。そっからですよ」
「…紫谷野さんも、すみにおけないなぁ~?」
「…別にそんなんじゃないし。幸、ちょっと勘ぐりすぎじゃない?」
「そうかなー?」
幸さんはとろんとした笑顔で、紫谷野は少し苦笑いで会話をしている。…クラスは同じだけど、あまり仲は良くないのか?
「幸?布団は手配できたの?」
「ばっちりですよ~?その辺は会長の力がうまく使えたね~」
「ま、現役アイドルに現会長の頼みなら断れないね」
「…」
意外と仲が良いのかもしれないな…
「…と、こっちはどうだ?」
とりあえず教室の掃除が終わった俺は料理班を見に行くために家庭科室にやって来た。紫谷野と幸さんはさっきの風呂の話でなにかを思い付いたらしくどこかにいってしまい、流石に一人だと暇だからな…。教室にはいると何やら香辛料の効いた匂い…カレーか?
「…あ、勇樹君。…お片付けは終わったの?」
俺の声にすぐ葵は振り向いた。…というのもどうやら料理をしているのは真実だけらしい
「…葵は何をしてるんだ?」
「えと…真実ちゃんに「ここはアタシに任せな!」って言われて…応援?」
「…真実、あまり葵を困らせるなっての」
料理中の真実に声をかける。すると何やら訝しい顔で答えてきた
「だーって、なんか危なっかしいじゃん、普段からさー」
「だからってさぁ…」
「じゃあ、あれかな?ユウはあおっちが怪我をしても良いと?」
「そういう訳じゃあ…」
「安心しなって。あおっちには味見って言うすっごーく大事な仕事があるから」
「…はぁ」
確かに葵の手元には味見に使ったであろうお皿があった。…まぁ、真実なりに気を使ったのだろうか
「…まぁいいや」
「というか、そっち終わったんだ?早いねー」
「仕事のプロ二人だからな。俺は必要なかったみたいだ」
「なら、あおっちを連れて散歩に行ったら?こっちももうすぐ終わるし」
ここで真実から変な提案がされた。…散歩って言っても、何も面白いことはない…よな
「…散歩、ね」
だが、俺は気づいた。…葵の記憶を、呼び戻す。それも自然な形で…どうやら真実はそう考えているようだ。その上で何かあっても俺がいるから大丈夫…そう訴えている気がした
「…?」
「分かったよ。後は頼む」
「おっけ!」
「……?」
葵だけが首をかしげる中、俺は真実に別れを告げ葵を連れて学校を回ることにした…
「…そういや、久しぶりにゆっくりした時間だな、葵」
「…そうだね?最近は…病院行ったりしてたから」
校内をぶらつきながら少し寂しそうに笑う葵。彼女は未だに病院へ通院しながらの生活が続いている。記憶がフラッシュバックすることは少なくなったみたいだが、やはり後遺症なのか頭痛が定期的に起こるらしい。…それのせいで中々ゆっくりした時間をすごせなかった
「ま、今日は少しでも楽しめたら良いな?ご飯食べて、一緒に寝てぐらいだけど…」
「そういうのが…良いな。修学旅行も楽しそうだけど…普段の1日が…私は好きだよ?」
「…そうか」
俺たちはいつしか屋上に来ていた。…どうしてここに来たかは分からないが…足が向いていた
「ん~…っ、暖かいね~…」
「そうだな。良い風だな?」
「…こんなに広い学校に、私たちしか居ないって…素敵だね?」
「葵」
「…ふぇ?」
俺はいつしか葵の隣に立ち、頭を撫でていた。…こいつは、本当に強い。現状を受け入れ、生きようとしている…
「…何かあった?不安そうな顔で…」
どうやらその行動で不安になったのだろう、葵が心配そうな顔で見上げてくる。…とりあえず、手をよけた
「あぁ…悪い、大丈夫だ」
「…嘘だね。絶対に大丈夫じゃない」
「大丈夫だって」
「でも、勇樹君…震えてる」
「…っ!?」
…無意識の中だったが、どうやら手が震えてしまっていたようだ。…なんで、震えて…
「…す、少し風に当たりすぎたかな…戻るか、葵」
「…」
俺は精一杯の作り笑いを見せる。葵は表情を曇らせたままだったがついてきてくれた。…俺が後ろを向いてどうする、しっかりしろ、俺