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2ページ目…想いの花弁、はらり

「…おい、君?こんなとこに居たら授業に遅れるぞ?」


「…また貴方ですか」


次の日、やはりあの通学路の外れに彼女は佇んでいた。今日は葵は病院で欠席だから一人で少し気になったから再び来てみたが…やはりいるのか。彼女は長い髪を払うと少し嫌そうな目を向けてきた


「大丈夫と言っているじゃないですか、私の事は放っておいていただけますか」


「いや、でもさすがにこんなところにただ立っていたら気になる。…一体何をしているんだ?」


「何も。いけませんか?」


「…」


取りつく島もなかった。…まぁ、相手も俺の事を知らないんだから、軟派な男子と思われてしまっているのだろうか


「…とにかくさ、何かあるなら教えてほしい。…俺は浅井勇樹、3年だ」


「…浅井、勇樹?」


仕方なく俺が名乗ると、彼女は訝しげに俺を睨んだ。…あれ、俺の事を知ってる…のか?


「…どうかしたか?」


「どうかした、じゃない。…ワタシに見覚えはないのか、浅井勇樹」


「…呼び捨てかよ。…と言われてもな」


もう一度彼女を見る。だが覚えがある限り知り合いではない…


「…ふむ…」


「無理もないのか。…奇妙な縁みたいだからワタシも名乗っておく。ワタシの名は…」


そして彼女が名乗ると、俺の思考が止まった。…確かに、奇妙な縁かもしれない。…そうか、だから俺を…




「ヤッホー、ユウ!」


「…おはよう、真実」


「…元気ないね、あおっちに、何かあった?」


「…いや、違う」


結局彼女はその場で別れ、俺は学校にやってきた。いつも通り真実が出迎えてくれるが、どうやら何か勘づいて問いかけてきた。…そうだ、真実は…。でも、聞けなかった。…彼女は人知れずこの世を去った、それが根本の原因ではないが、葵は彼女から手紙を受け取った直後に記憶を失った。…また、何かを失うのでは、と思ったからだった


「…随分と辛そうなのに、言うつもりはないんだね」


真実もそれ以上は聞いてこなかった。…ありがとう、真実


「でも、あおっちは?一緒じゃないの?」


「あぁ、今日は病院に行くってさ。おそらく今日は来ないはずだ」


「ふーん、あおっちも大変だね?最近は平気みたいだけど、やっぱり記憶がないのは…」


「だな。…こればかりは治療で治るわけでもないし」


「それはそうと…来週の修学旅行の班、決まった?」


「…あ、そういや…」


実は3年の俺たちは来週、一泊二日の修学旅行が控えている。他の高校と期間は短いのだが、うちのは行き帰りが一緒なだけで他は班の自由と一風変わったものとなっていた。なので班割りも一週前までが期限と緩いのだが…俺はまだ班に属していなかった。どこかの班に入らなかったら居残りとなる。…それは非常に困るな。何だかんだで少しは楽しみだし


「…だけど、俺は葵を放ってはおけないんだよな。葵もおそらく俺と組みたがる。…そんな男女混同を受け入れてくれるところなんかないだろ」


そうなのだ、俺はおそらく葵と一緒にいないと行けない。…自意識過剰だとは思うけど、葵はあまり周りに溶け込もうとしてない雰囲気を最近見せていたし、それで葵だけ学校に居残り…というのも可哀想だと思っていた。それに対し真実は口の端ををつり上げた。…なんか嫌な予感


「…何だよ」


「さすがユウ、コイビト想いは良い男の条件だぞー?」


「…恋人じゃないけどな」


「それならさ、いっそのこと学校に居残りはどうさ?」


そこで、と言わんばかりに真実は携帯を取りだし、誰かにメールを打った。すると数分後…


「おは、浅井君、相模さん?」


「…紫谷野?」


教室に現れたのは紫谷野だった。…真実が呼んだのか?


「さーやん、修学旅行行く?」


真実が直球で紫谷野に質問した。…真実もどうやら紫谷野がアイドル(休業中だが)の矢野サヤと言うのは知ってるようだ。…紫谷野は「何よ突然」と前置きした上で答えてきた


「行けない、という言葉が正確ね。一応アイドルだから、他の人に迷惑かけちゃうし」


「じゃーさ、私たちと居残り組として、なんか面白いことしない?今ならユウとあおっちもいるよ?」


真実が何やらいかない組を巻き込んで何かをしようとしている。だが俺はそこで当然の疑問を口にした


「…真実、お前も行かないのか?お前は特別な理由ないだろ?」


「ん?いやー、なんか友達が行けなさそうなのに、私だけ行くくらいなら、学校で居残りでもなんか楽しめそうだし?」


「…よくわからないな」


そんな話をした後、紫谷野は少し悩むようにして答えてきた


「…ま、急な仕事が入るより良いかな?」


…OKらしい


「じゃあ、ユウとあおっち、私とさーやんで…」


と、決定される前に一度口を挟んで、先生にも1日遅らせてほしいと頼んでおく。…当人に一応確認はとらなきゃな




「…修学旅行?お泊まり会…みたいな?」


「まぁ、簡単に言ったらな」


その日の夜、俺は今日は川原家で夕食を共にしていた。そこで葵に修学旅行の話をすると興味を示してきた。だが葵はすぐに表情を曇らせる


「…でも、怖い…かな。覚えてない人も多いし、行く場所も…知らないから」


「…そうか。あのな?…真実たちが、修学旅行を蹴って、学校で何かをしようって言ってるんだ。…興味あるか?」


「…でも、勇樹君は旅行に…」


「いや、葵が行かないなら俺もパスだな。…どうせ、班には入れそうもないし」


「で、でも…勿体ないよ?一度きりのお友達との旅行に…」


「…葵、お前はどうしたい?」


俺は葵の言葉を切るようにして聞いた。…少々強引だが、こうしないと葵は素直にならなさそうだったし


「…興味あるよ?皆が…行かないんだったら、だけど…」


「よし、決まりだな。じゃあいかない面子を割り出さなきゃな」


「…本当に、行かないの?後悔しない?」


葵が遠慮がちに聞いてくる。やはり巻き込みたくはないみたいだ。だけどまぁ、それではい、やっぱりいきますと言うことにはならない


「しないさ。むしろ葵を置いていく方が嫌だな。何があるかわからないし」


「…そんなに子供じゃないもん」


葵が拗ねたようにそっぽを向く。…ま、とりあえずはOKだな。さて、真実は何をするつもりなんだろうな…?


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