7話:精霊と猫耳御対面
昼下がり。太陽が上まで昇り終えて徐々に西へと傾いてきた頃。
俺は徐々に外から声が聞こえるようになって主人も起きてるかと思い下へ降りた。
下へ降りてみると、やはり下も気絶のことで大騒ぎになっていた。
「なんか悪いことしちゃったみたいね……」
少し申し訳なさそうにフワンが呟く。
フワンは俺の胸ポケットの中で体育座りをして大人しくしている。
確かにフワンがちょっと暴走して起こしたことだからな。
しかもそのせいで街の機能が午前中ずっと停止してたわけだし……
「ま、気にすんな。怒らした主人の俺も悪いんだし」
そう言って頭を撫でようとしたが、結構胸ポケットが深かったため出来なかった。ちょっとかっこ悪い……
胸ポケットは薬品が入ったビンを入れれるように深さが一五cmと大きめだ。ちなみにフワンが入ると底だけふくらみ、たまに何が入ってるんですか? と聞いてくるやつがいるが、銅貨です、と答えている。
まあ、そんなことどうでもいいとして俺は主人の前に立った。
「おす、おっさん。朝食……じゃねぇな。昼食頼む」
おっさ……主人……ってもうなんで二つもあだ名があるんだよ! 一つにしとけよ! って、俺が勝手に呼んでるだけだな。
本当にどうでもいいことを考えながら、俺はおっさん(定着)に昼食を頼んで、出来上がるまで一つのテーブルに座って待った。
宿屋は、入ったところが酒場みたいになっている。おっさんは入り口からまっすぐ進んだところにいて、そこでいろいろ手続きなど行う。
「サイト! 出来たぜ!」
いつもながらに早いな。って、二つ? あ~、気を利かせてくれたのか。
まあ、いいや。俺はおっさんに金を払って、昼食が入ったトレイを持って自室へと向かった。
なぜ自室かって? フワンに食べさせないといけないだろ?
ついでにおっさんが気を利かせてくれたので、ネオンの部屋にも向かう。
ネオンの部屋の前に立ってちょいと深呼吸。べ、べつに緊張とかしてるわけじゃないんだからね! 自分の気持ち悪さに吐き気がしてき
た……
コンコンと扉をノックする。
「…………どうぞ」
昨日と変わらない声質で返事が来る。
どうぞ、と言われたので俺は扉を開ける。
「おふっ」
入ると、ネオンはベッドの上で女の子座りをしてボーっとこっちを見ていた。
俺が入った時猫耳がピクピクって動いたり、時折クネ、クネと動く尻尾が可愛い。
だけどそんなのよりも、べらぼうにインパクトがあるものがあった。
(寝巻きかよぉぉぉぉおおおおお!!!!!)
少し寝崩した寝巻きを着てさっきのような感じになっているのだ。
これは死ぬ。悶え死ぬ!
俺は落ち着けと心に言い聞かせて部屋に入る。やばい、直視出来ないわ。
俺は一緒に食べようかと思ってたけどこんな状況で食べられるほど肝は据わっていない。女性と話したことなんて幼稚園以来くらいのものだし。この世界でもあまりない。だって恥ずかしいから俺から避けてたもん。
「ほら、昼食だぞ」
俺は昼食の入ったトレイをおいてそさくさと部屋を出る。
なんか自分の中で抑えられなくなりそうななにかが暴れてる。
部屋を出て、自室へ行く。
部屋に入り、トレイを置いて俺は呟く。
「……よし。もう抑えられない。行くか」
俺は部屋を脱兎のごとく駆けていった。
「ああああぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!! かわいすぎだろぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!!!!!!」
俺はこの湧き上がる気持ちを抑えるために村付近のモンスターを乱獲することにした。
「はぁ、全くなにやってんのよ……」
なにか聞こえた気がするが今はそれどころじゃない。
俺はモンスターが現れるまで走りまくった。
AGIもかなり高いため、本気で走れば結構早く一kmは移動できる。ま、それをすると地面がすごいことになるけどね。特にこの大陸では。
そうやってしばらく暴走していると(一応抑えてはいるが、ところどころ地面が抉れてる)白い角の生えたウサギっぽいの発見! 確か名前はホーンラビットだ。
「どぅぉぉぉおおおおりゃああぁぁぁあああ!!!!!」
俺は暴走したままそのホーンラビットにタックルをかます。
時速数一○○km(体感)のタックルをくらってホーンラビットは遥か彼方に飛んでいく……ことはなく、粉砕した。
あらら。ドロップすら残さなかったよ。
まあ、いいや。今は気持ちを落ち着かせないといけないのだから。
俺は頭だけ一応気をつけて見つけたモンスターを片っ端から粉砕していった。
後に冒険者の間で「ものすごい速さでモンスターを粉砕していたやつがいた! ドロップすら残ってなかった!」と噂が広がり、それを『疾風の破壊神』として語り継がれていったとかないだとか。
ちょっとやりすぎたかな? 多分この大陸のモンスターほとんど狩りつくしちゃったよ。
おそらく再ポップするのに数時間はかかるね。育成はちょっとお預けか。
ま、その間にフワンのことを紹介しておくか。
俺は宿屋へ戻り、おっさんにあいさつをし、ネオンの部屋の前に来ていた。
俺は、今度は落ち着くぞ、と心に刻みノックをした。
「……どうぞ」
先ほどと全く同じように返事が返ってきた。
俺は扉をゆっくりと開ける。心臓が早鐘のように鳴り響く。おいこら、落ち着けよ。
そして扉が開かれてネオンの姿が視界に入る。
「おお……に、似合ってるな」
今度は皮の帽子と、皮の胸当て、皮のズボン、皮のブーツと全ての初期装備を身につけていた。
帽子はベレー帽のようなもので、穴が空いてるのかちょこ、っと猫耳が出ている。もちろん頭(眉より上)は完全に覆っている。
胸当ては本当に鎖骨から胸の下までだけを守るものだ。女の子特有のふくらみが少しあって思わず凝視してしまった。
ズボンは膝より上までの長さで短パンだ。ピチピチだが、意外と皮は柔らかく出来ているのでピチピチでも動きに支障はない。
ブーツは、くるぶしを覆うまでの長さだ。
え~っと、いろいろと目のやり場に困るな。
ヘソなんて丸出しだし、下もピチピチで見れない。かと言って上を見ればふくらみがある。それじゃあ、顔を、と思っても可愛いのでNG。俺の女性経験をなめちゃいかん。
俺は明後日の方向を見ながら話しだす。
「え……あ、あの……」
ダメだ。言葉が出て来ない。
早くもパニックに陥って頭がショート寸前だ。
顔がめちゃくちゃ熱い。多分真っ赤になってるだろう。
「……どうしたの?」
俺はネオンの言葉に反応して見てしまった。そう、見て‘しまった’。
首をかしげて両手を後ろに回し、片方の足を引いている、悩殺ポーズを!
なにより、ちょうど首をかしげるところを見てしまったのがいけなかった。
首をかしげるのと同時に、セミロングの茶髪がふわっと流れたのを見たのだ!
女性経験値○だった俺にいきなりこれは危険すぎる。
俺は強烈なボディブローを食らったかのようにふらついたが、なんとか持ちこたえた。
こういうのは慣れだ。俺は経験値があまりにも乏しかったためこうなったのだ。
ていうかポジティブに考えよう。これから毎日あの可愛い姿を見れるんだ。
想像したらもう一発強烈なのがきた。墓穴を掘ったな。
もう考えるのは止めよう。俺は菩薩だ。全てを尊いものとして? うんたらかんたら(菩薩は朗らかな笑顔をしているくらいの知識しかな
い)。
俺は悟りを開いたような顔をして部屋に入る。猫耳がビクッてした! ……落ち着け。
俺はネオンに「椅子借りるね」と言い、椅子に座った。昨日と同じようにね。
ネオンもベッドに腰をかけた。さて、話すか。
…………なにを?
ここまで平常心を保つのでいっぱいおっぱいで目的を忘れてしまっ
た。あ、早くも平常心が……
と、俺が困っていると、フワンが自分から出てきた。
「へぇ、この子がネオンちゃん? 私フワン。よろしくね」
お、なんか勝手に自己紹介とかしてくれてる。ありがたや。
ネオンは顔は無表情だが、猫耳が、びっくり! って感じに反り返っている。
「……よろしく」
猫耳は……間違えた、ネオンは、え? え? というふうに戸惑いながらも返事をした。
さて、目的も思い出したし(フワンが出て来て思いだした)後は俺が説明するか。
「こ、これは俺と契約している精霊で、フワンっていうんだ。こいつ
共々よろしくな」
そう言うと、フワンは俺のところに戻ってきて胸ポケットに入って顔だけ出す。
それを見てネオンが呟いた。
「……可愛い」
ネオンが言うのか! 全てが萌え要素のようなネオンが!
とまあ、これとそれとは違うか。
さて、それじゃあ本題と行きますか。
「それじゃ、一狩り行こうぜ!」
「……なんか聞いた事ある」
「気のせいだって。それより行く?」
「……うん。そうしないとクリア出来ない」
そうして、俺らはレベル上げのために村付近のモンスター狩りに行くことにした。
ちなみに俺も装備を同じようにするために皮装備一式に身を包んでいた。ちょい頭が心配だ。
お読みくださりまことにありがとうございます。
なんかここに力を入れてる気がしてなりません。
ま、それは置いといて感想・アドバイスお待ちしております。
それと、お気に入りが数件来てて嬉しく思いますヾ(@^▽^@)ノ ワーイ
俺って書き出してまだ間もないんで下手くそなんですが、頑張っていくのでよろしくお願いしますm(_ _)m
次回の更新は明日の18時でしゅ!