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4話:猫耳少女を助けました

 大男たちは三人で女の子を壁に追いやり、囲って逃げれないようにしている。

 俺はその中で真ん中にいる声をかけているやつの肩をトントンと叩いた。


「へへへ、なあどうせ死ぬんだし、楽しもうぜ……って、なんだお前」


 大男は振り向きざまにギロッと俺を睨む。視線だけで人を殺せそうだ。

 あ、やばい。足がすくむ。

 一〇数mもの魔物と対峙したときにもこんなことなかったのに。

 やっぱり人だと昔のダメな俺を思いだしてしまう。

 数人で俺一人を袋叩きにして嘲笑う。そんな光景が思いだされた。

 俺が肩を震えさせていると大男はニタニタとして俺に体ごと向き直る。

 

「おい、坊主。お前のようなひょろい体してるやつが俺らに勝てると思うのか? 女の前で良いとこ見せたいのは分かるが相手を見ないとダメだぜ?」

 

 ニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべているが、案外言葉は優しい。普通に俺に忠告して逃がそうとしてくれている。あと、俺の心も分かってる。

 だが、俺もひくわけにはいかない。俺にはあの子(猫耳)が待っているのだから!

 俺は無言で進む。


「お、やるのか? 怪我してもしらねぇぞ?」


 と、言いながらも手は出して来ない。やっぱり良いやつに見えてきた。俺おかしい?

 まあ、それでも俺は進むけどね。


「チッ、しょうがねぇな。おい、やるぞ」

「「うぃ」」


 大男BとCも参戦して来た。武器を抜かないところを見るとやっぱり俺の心配をしているようだ。こいつら本当に見た目とのギャップがすごいな。

 俺が大男A(真ん中のやつ)を通り過ぎて女の子の前に立つ。そして俺は振り返る。大男ABCは俺に襲い掛かってきていた。全員拳を握っている。多分顔に一発腹に二発の軌道だ。

 俺は女の子をかばうように立ち位置を変えてガードもなしに攻撃を受ける。

 大男BCは俺の胸と腹にジャストミートさせ、ニヤっとしたが、すぐに顔色を変え拳を抱きかかえもがき苦しんでいる。

 大男Aは俺の横っ面をフックで殴ったが、俺の顔が吹き飛ぶ代わりにバキボキっと嫌な音がして、指があらぬ方向に曲がっていた。でも、大男BCのように転がりまわったりしない。根性はあるようだ。

 だが、次の瞬間。


「お、覚えてろよ~!」

「……は?」


 涙目になったと思ったらそう言って大男BCを連れて逃げてった。そうか、やせ我慢だったのか。男らしいと思ったのに……

 俺はあいつらが消えるまで見送った後、ホッと息をついた。

 ここ数年人と戦うなんてしなかったからな。俺攻撃してたらどうなってたんだろう。嫌な予感しかしない。

 そしてヒョコっと胸からフワンが出てくる。


「もう終わった? 出ていい?」


 フワンは最初とは全く違い、警戒心を少しは解いてくれてるようだ。あくまで最初に比べればだけど。

 というか、さっきからずっと機嫌がいい気がする。よほどフワンって名前が気に入ったのだろう。

 俺はヒョコっと出てきたフワンの頭を人差し指で押し返す。


「もうちょい待っててくれ」


 フワンは、無理矢理押し込められて怒ったのか胸ポケットの中で暴れてる。

 俺はゲシゲシがドカドカに変わるくらい蹴られながら女の子に向き直る。

 

(!?)


 俺はその子と顔を合わせて固まった。

 やばい。近くで見るとむちゃくちゃ可愛い。

 服装は、黒い全身を隠すようなフードつきローブを身に纏っている。尻尾は専用の穴から出ている。どうせなら隠せよ。

 セミロングくらいの茶髪でストレート。その中からぴょこんと立っている猫耳はピクッ、ピクッと動いて可愛らしい。顔は少し朝なさが残っていた。だが、黒い瞳は濁りきっていてその奥の心情をつかめない。

 さて、どう話しかけようか。ってそういえば、現実でも俺イジメられてたり虐待受けたりして周りの人と碌に喋ったことないからなんて話したらいいのかわからんな。この世界の人とは普通に喋れるけど。

 

「えっと……ぁ、あの……」


 ん? なぜか言葉が出て来ない。

 あ~多分、可愛い&プレイヤー&女性経験○とかいろんな条件が重なって声がドモってしまっているのだろう。

 そんな俺を見かねてか、女の子から話しかけてきてくれた。


「……助けてくれてありがと。あなたもこのゲームのプレイヤー?」


 声は高く幼い感じだったが、声質は重く、暗く、深い海の底のようだった。

 俺は少しどもりながらも答える。

 

「は、はい。そうです」


 フワンと話すときは平気なのになぜだ……?

 あ、多分人間と思ってないからだろうか。確かに二〇cmくらいだと人というより小動物みたいな感じだもんな。

 俺は話が途切れないようになんとか言葉を選んで口に出した。


「ぇっと、あの、俺とパーティー組みませんか?」


 うぉい! 俺何言ってんだ!

 あ、いや、パーティーにしたいとは思ってたけどこんなに唐突だと困るだろ。

 ……いやまてよ。確か俺が来た時は、最初は友達とかとパーティーを組んでいたはずだ。

 でもこの子はパーティーを組んでいない。つまり俺のように一人で入ったはずだ。

 なら多分大丈夫。そう思って(願って)返事を待つ。


「……はい」


 女の子は先ほどと同じ声質で承諾した。

 うぉぉおおお! 

 って喜びたいところだが、この雰囲気はダメだな。

 

 さっきから気づかないようにしてきたけど、やっぱり気になってしまう。

 この子はここに来たばかりの俺と同じにおいがする。

 現実でひどい扱いを受けて、自殺も考えたけど勇気が出なかった。

 だからゲームの中に逃げてきた。

 だけど、ゲームでもそんなに甘くはなかった。

 急遽閉じ込められ始まったデスゲーム。油断をすると本当に命を落とす場所に閉じ込められた。

 現実に戻れない、という安心と、死ぬかも知れない、という恐怖。


 俺の場合は死ぬのは怖いけど、あっちの生き地獄の方が嫌だったから最悪ここで死んでもいいだろうって心に決めて進みだしたんだよな~。今でこそ結構明るい性格になったけどあの時はひどかったからな~。

 と、それはいいや。とにかくこの子からはあの時の俺と同じ匂いがする。

 なぜかこういう人間は助けたくなってしまう。現実でどれだけ人間が醜くあざといか思い知らされてきたのに。

 多分昔の俺を重ねてるんだろうけどな。あと猫耳だし。

 

「よろしく」


 そう言って俺は優しく微笑みかける。

 女の子は相変わらず彫刻のように表情を変えず、無表情のままだ。

 そこでしばしの沈黙。あれ? なにかあったっけ? あ!


「ぁ、ごめん。お、俺の名前はサイト」

「……ネオン」


 ネオンはそういうと手を差し出してくる。

 え? これはあれか? AKUSYU(握手)なのか?!

 マジか。ここ最近女性と触れ合ったりとかなかったしな。

 …………いや、ここ最近じゃなくてここに来る前からか。最後に触ったのは小学生の時の二人三脚か。かなり嫌がられていたけどね。

 そんな俺に軽く落ち込みながら俺も手を差し出す。

 なんだかんだで緊張するな。

 そして俺はネオンの手をとる。


「よろしくな、ネオン」

「……うん、よろしく」


 名前を呼んではくれないのね……













お読みくださってまことにありがとうございます(使い方間違ってる?)

感想・アドバイスドンガラガッシャンお待ちしております(いろいろありますがスルーの方向で)

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