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2話:精霊の名前を考えた

 起きるとそこは、始まりの町『ユンティス』にある宿屋のベッドだった。

 これで三回目だから間違えはしない。

 前のクリア後と違うのは……


「ようやく目が覚めた? 全く、いつまで寝てるのよ。さっさと起きなさい」


 俺の目の前で仁王立ちしている精霊か。

 その燃えるような真紅の瞳で睨まれ思わずしり込みをしてしまう。

 俺は言われたとおり起き上がり、ついでに自分の様子を確認する。

 武器よし、防具よし、アイテム袋よし、中身よし(多分。多すぎるからパッと見)、ついでに息子も元気よし。

 下を確認した瞬間視界が右へと瞬間移動した。頬がひりひりするよ……

 俺は防具や武器をアイテム袋にしまい、どこにでも売ってる小汚い肌色の布の服を着る。街中なら戦闘もよっぽどないし、派手な防具を着て目立つのは俺が嫌だ。

 精霊がガミガミいってるが、とりあえず無視をして部屋を出る。

 俺は部屋を出て階段を降り、宿主のところへ行く。精霊はそっぽを向いているが俺についてきている。


 宿主がいた。相変わらずボーッと宿の番をしている。

 さて、どうする。


・戦う

・交渉する

・手なずける

・三回回ってワン

・首輪をつけて××


 そんなこと考えていたらまた精霊に頭をどつかれた。馬鹿になっちゃうだろ……

 それより結構痛かったな、頭。これでもレベル二二六だから防御力には自信があったのに。ま、それはさすが最高位精霊と言うべきか。

 俺は頭を押さえながら宿主へと声をかける。


「おはよう」

「おはよう。今日は随分と寝てたな。んで……今日はどうするんだ?」


 宿主は一瞬精霊をチラッと見て考え込んだが、すぐ話しだした。

 これは宿代をとるべきか決めかねていたのだろう。見逃してくれたからいいのかな。ま、いまさらこれくらいの金をケチっても大して変わらないが。

 そういや、宿主の対応を見る限り、今回もちゃんと神様は弄っててくれたんだな。サンクス。

 毎回ここに戻されると宿主が前から泊まっていたかのように接してくる。おそらく神様がこの人をちょちょいと弄ったのだろう。ちょっと怖い。

 

「今日は特にないな~。ふらふらしてくるよ。ついでに今日もここに泊まるつもりだからよろしく」


 宿主は頷いて「気をつけろよ!」と温かい言葉まで送ってくれた。

 この世界の人間はちゃんと自分の意思があるようだ。

 俺は「いってきます!」と元気良く宿を出ようとしたときだ。

 懐かしい感覚に襲われて俺は光に包まれた。


 ほんの数秒。光が散ると周りには人、人、人。

 獣族、リザード、エルフ、やや小柄の……ドワーフか? どれもかなり人に近い容姿をしている。

 人々は街の中心にある大広間に集められているようだ。どんどん何もないところに光が現れては消えてそこに人が現れる。俺はこの光景に見覚えがあった。


(あ~、これは……マジか~。本当だったら嫌だな~)


 俺はこれからの生活を少し心配した。俺は心の中でため息をついた。

 と、そのとき神様との会話と同じように声が聞こえてきた。


『あ、ちょ! 今からプレイヤーと…………』


「「「……………………」」」


 出だしからしくじったな‘支配者’め。

 みんなはただ呆然と声が聞こえてきた上を見上げている。

 俺も一応目立たないように上を見上げる。空がいつの間にか暗い紫色に変わっていた。


『え~、コホン。プレイヤーの諸君こんにちわ。私はこのゲームの支配者である』


 気を取り直して低く、威圧してくるような声で語ってくる。最初がなければ効果抜群だったのにな。

 大広間のみんなは相変わらずポカーンと呆けている。


『もう気づいているだろうが君たちは自分でログアウト出来なくなっている』


 うん。もう三年前から知ってる。

 やっぱりそうか。支配者さんはプレイヤーを補充してきたのか。

 俺が来た時以来だな。

 支配者はいろいろとこの‘ゲーム’の説明をしだした。


『この世界から生きて出るにはこのゲームをクリアするしかない』


 俺はすでに知ってる内容だったので聞き流している。

 なんたって俺がこのゲームの最初のプレイヤーの一人だからな。

 確かこのあとにゲームで死んだら、現実でも死ぬぞ、って脅してくるんだっけ。

 

『なお、この世界で死んでしまうと現実の世界でも死んでしまうので注意するように』


 そうそう。ゲームやるために脳内にチップ埋めたからな。代表国が抽選で一○○○名に無料で手術を施して。 

 俺はその一○○○名に運よく選ばれたのだ。世界で数億人の中で選ばれたのだ。

 まあ、そいつらのほとんど(というか多分俺以外)死んでしまったのだが……

 そして、今回また支配者とやらは懲りずにやるつもりらしい。死んで問題にならなかったのか?

 そこらへんは分からない。俺らは一切外との交流を絶たれているからな。

 

『それでは、頑張ってくれたまえ』


 そう言って支配者の気配はスゥーっと離れていった。空もいつもどおりの青空に戻った。

 俺はわけの分からないという顔をした人たちをかきわけ狭い人通りの少ない路地へと場所を変えた。

 そして俺は後ろをついてきていた精霊に振り返り質問を投げかける。


「おい、これはどういうことだ?」


 精霊はムッとしてはいるが質問には答えてくれるようだ。一応使役しているやつだしな。

 精霊は腕を組んで、ふんと鼻を鳴らして嫌々感を前面に出しながら喋りだした。


「神様がいってたんだけどね、多分さっきの支配者とかいう人がバタバタしてたからまたプレイヤーが呼び出されるのかな、みたいなことを言ってたわよ」


 そうか。新しく補充したってことは、俺以外のやつら全員死んだのかな。……仲間なんていなかったから関係ないか。

 そして俺は神様から隠蔽スキルをもらったから感知されなかったと。誰か生きてるならわざわざ補充しなくてもいいわけだしな。

 俺は続けて質問しようとする。

 

「ちなみにお前……」


 俺はそこで言葉が止まった。精霊は怪訝な目で俺を見てくる。全く、すごい攻撃的だな。

 言葉が泊まったのは、こいつの名前が決まってないことに気づいたからだ。


「お前ってなんて名前だ?」

「え? それはあなたが決めることでしょ?」


 そういわれて気づく。確かに使役したモンスターとか精霊は普通主人が名前をつけるよな。

 俺は腕を組んで云々唸りながら考えた。

 そうだな~。火の精霊でフェニックスだから……

 少し考えた後に口を開いた。


「そうだな。じゃあ、お前の名前は『フワン』だ」

「え? 私火の精霊でフェニックスで……」


 フワンは呆けた顔で驚いた。

 火の精霊? フェニックス? うん、全く関係ない。

 だいたい名前なんてパッと思いついたので決めちゃえばいいんだよ。まあ、さすがに最初に思いついた『ファエックス』は却下したが。混ざりすぎ。

 それより、可愛い感じの名前だし気に入るだろう。見た目女の子だし。って神様が俺好みにしたんだっけか。チッ、なんかムカつく。

 案の定フワンは恥ずかしそうに目線を下に移して、少しキョドっている。

 こんな自分がそんな可愛い名前でいいの? みたいなことを思ってるのか? 

 そんなフワンは攻撃的じゃなくて可愛い。ここは神様に感謝した。こんなに可愛いのをありがとう、と。現金なやつだな俺って。


「ま、俺が決めたんだからいいだろう。これからはフワンって呼ぶからな。ちなみに俺の名前は『サイト』だ」

「そ、そう? 分かったわ。し、しょうがないわね」


 頬を髪のように赤く染めても、虚勢を張ろうと両手を組んで仁王立ちをする。キョドってるのが分かっているからかこんな態度でもめっちゃ可愛い。フェアリー最高。

 まあ、それはしばらく置いといて、


「それじゃあ、フワン。俺ってここにいて大丈夫なのか? 支配者とかに見つかったら殺されたりしないか?」


 俺は一番の心配事を聞いた。

 前に一度殺されかけたのだから警戒するのは当たり前だ。

 またプレイヤーを増やしたということはまた監視を開始したはずだ。

 前は多分俺が死んだと完全に思いこんで監視を止めてしまったのだろう。

 だが、今は別だ。また新しく監視されるなんて真っ平ゴメンだ。

 フワンは俺の心中を察したのか話しだす。


「大丈夫よ。あなたは、神様から隠蔽スキルをもらったのよ? そんじょそこらの隠蔽スキルとは桁が違うわ」


 そうなのか。なら少しは安心していいだろう。

 だが、あくまで‘あの’神様が言うことだからな。あまり信用しすぎるのもいけないだろう。しばらくは派手に動かないようにしよう。


「それならいいや。じゃあ、行こうか」


 俺はそう言って歩きだす。

 じっとしててもつまらない。歩いていろんなところに行って楽しむべきだろう。今回はパートナーもいるわけだし。

 すると、フワンが慌てたように俺についてくる。ちなみにさっきからずっと俺と同じ目線で飛んでいる。


「え? どこに行く気なのよ?」


 その言葉に俺は振り返って答える。


「テキト~」


 俺はニコっと笑い、石造りの狭い裏道を歩きだした。

 

 









読んでいただきありがとうございます。

感想・アドバイスを下さるとやる気が3くらい上昇します。

ちなみに「ファエックス」は

「ファイア」

「フェアリー」

「フェニックス」

が混ざったものです。強引ですねσ(^_^;)アセアセ..

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