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11話:俺の堅牢な心の砦は言葉のレールガンで吹き飛ばされた

 俺はネオンにひどい人間アピールをして部屋を出て行こうとした。

 

「……待って」


 ネオンが俺を止める。

 一瞬足が止まったがすぐに歩きだす。止まったら戻りそうだ。そう、まさに親に猫を捨ててこいと言われて、猫を公園などにおいてどこかへ去ろうとしているときの心境だ。

 振り返ったら寂しそうな猫耳が見えてしまう。そしたら俺は我慢出来るだろうか? 答えは否。俺が絶対クリアさせてやる、くらい言いそうだ。多分、やっぱり猫は捨てれなくて、こっそり育ててやる、という時の心境と同じだろうな。……違う?

 

 だが、俺は部屋を出る。出るったら出る!

 俺は早歩きになって部屋を出て行った。歩みを止めてはならない!

 そのまま自室へと行き、扉を乱暴に閉めてベッドへうつ伏せにダイブした。

 後悔と言うか申し訳なさみたいなので胸がいっぱいだ。

 と思ったら胸がもぞもぞと動いている。

 あ、フワンのこと忘れてた。

 俺はごろんと寝返りをうって胸ポケットを解放する。

 フワンはプハッ! と言いながら出てきた。


「すまんな、すっかり忘れててベッドにダイブしちまった」

「全くだわ。で、話は終わったのよね?」


 俺は頷く。もう話しは終わった。

 って終わったんなら一刻も早く出て行かないと。時間が経てば経つほど警戒が強まってしまう。

 俺はチャチャッと身支度を整え(といっても大体アイテム袋に入っているのだが)部屋を出ようと扉を開ける。

 

「……こんにちわ?」

「……なんでお前がいるんだよ……」


 しかもこんにちわってなんだよ。疑問語であいさつするなよ。

 とりあえず、俺はネオンを無視して通り過ぎようとする。

 だが、ネオンがちょこちょこと動いて通してくれそうにない。

 はぁ、しょうがない。多少落ちついた今なら話を聞くくらい大丈夫だろう。

 俺は動くのを止めてネオンに正対する。


「どうしたんだ?」

「……ネオンも着いて行く」


 少しためてからネオンは口を開いた。

 またこれか……しょうがない理由でも聞いてやるか。

 理由を聞いたって俺の考えは曲がらない(はずだ)からな!


「どうして着いて来たいんだ?」

「サイトしかいないから」


 グドゥビ!

 な、なんということだ。ここにきて俺が生涯で一回は言って欲しかったランキング第三位「サイトしかいないの」が出てくるとは! しかも即答!

 多少ニュアンスが違ってもこれは破壊力がある。しかも全く恥じらいなど見せずに。心情が良く出る猫耳でさえ真面目にピンと直立しているのだ。

 俺は内心動揺しながらも言葉を返した。


「……そ、それはどういうことだ?」

「ここの人たちは現実の人たちと同じ感じがするの。サイトに助けてもらったときのあの人たちもネオンを奴隷にでもして、売るかこき使うかする気だった」

「………………」


 俺は口を出すことが出来なかった。

 少しネオンの現実での出来事が垣間見えた気がする。

 ちなみにプレイヤーを奴隷になんて出来ないが、そこは力づくなんだろう。

 

「普通はああいうのは無視するもの。誰もが面倒ごとに巻き込まれたくないから」


 俺は話を聞きながら「あれ? ネオンってこんなにお喋りだっけ?」などと緊張感のないことを思っていた。


「現実ではそうだった。ネオンがどんな扱いを受けても見てみぬ振りをしてみんな通り過ぎる」


 あ~、あったあった。

 俺がいじめられてるのを担任は見てみぬ振りをするどころか参加してたからね。何回みんなを恨んだことか。力がないからどうしようもないんだが……

 でも、だからといって学校を休むわけにもいかない。

 家にいれば親父が俺に暴力を振るってくる。「やっぱストレス発散にはサンドバッグだよな!」とか言いながら。

 あ、親父は俺のことを探していないだろうか。もちろん心配でなどない。

 俺はしばらくVRMMOをやる間世話をしてくれる人がいたのでそこに厄介になっている。俺の全財産を渡して「俺が覚めるまでお願いします!」と言っておいたので大丈夫だろう。もう四年経ってるけど……

 金は親父に見つからないように頑張ったな~。しみじみと思いだす。


「でもサイトは違った。助けてくれた」


 そういえば隠していたへそくり見つかってないかな。親父のことだから見つかったらパチられるだろう。

 

「最初はネオンを助けて好印象にしといて後で襲うのかなと思ってた」


 あ、今更だけどビデオのレンタルも忘れてたな。延滞料金たまりにたまってるな。もうとっくに親父のところに請求書来てるかな。

 ちなみにちゃんとネオンの話は聞いているからな。自分に言い聞かせる。

 

「そう思ってたら案の定宿屋に行った。ネオンは覚悟したの。けど、サイトは襲い掛かるどころか触ることもしなかった。しかも一定の距離を保っていたし」


 俺は特に思いだすこともなくなっていたのでうんうんと頷いている。

 け、決して適当に聞いてるわけじゃないんだからね?! ……自分で言っといてなんだが、あれだな……

 

「だからサイトは違う。それに言ったら悪いかもしれないけど、ネオンとサイトの雰囲気って同じに見えるの。ずっと地獄のような毎日を送ってきたネオンと同じ雰囲気がするの!」


 なんか興奮してきてるぞ。大丈夫か?


「おい、おちつけっ……」

「だからお願い! ネオンがここにいてもまだ力がないから、勇気もないから同じような地獄の毎日を暮らすことになる。唯一の親友のトモちゃんが薦めてくれたゲームなのに、現実と同じなんて嫌だ!」


 やばい。すごい興奮して俺の言葉なんて届いていない。

 あれだ。犬と出会ったときの好戦的な猫と同じだ。興奮で周りが見えていない。

 

「ネオンはこのゲームで少しでも心を休めてトモちゃんに安心させてあげニャ!?」


 あまりにも興奮してて周りが見えてなかったから脳天チョップをお見舞いしてやった。か、かなり勇気がいるんだぞ。女の子にチョップするなんて。しかも猫耳があるからそれを避けてチョップしないと。

 ネオンは頭を抱えてなにがなんだか分からない顔をしている。ちなみに街中では攻撃力が現実と同じになる。だから攻撃してもHP減らないし、死ぬことはない。痛みはあるけど。

 

「だ、だから落ち着けって。連れて行ってやるから」

「…………え?」


 急な展開にネオンはついていけてないようだ。

 なんかずっとごちゃごちゃ言ってたようだけど、俺の返事なんて「サイトしかいない」から決まってたよ。俺の堅牢な心の砦は言葉のレールガンで吹き飛ばされたよ。

 だから俺は諦めて連れていくことにした。

 ネオンはずっと、え? っといった顔のまま固まっている。

 

「……い、いの?」


 やばい、猫耳が泣きそうにプルプルしてる。いや、猫耳は泣かないんだけどね。

 とりあえずネオンの頭をポンポンと叩いて宥めた。


「いいって言っただろ? ちゃんと守ってやるから」


 俺ってばやれば出来るじゃん! 叩く手は機械みたいにぎこちないにもほどがあったけどね。

 なんかどっと疲れた。今日で一生分の勇気使ったんじゃない? 振り絞りすぎてもう一滴も出ないよ。

 

 とりあえずこの大陸を出て行くために、俺はおっさんに別れを告げて宿屋を出ることにした。
























お読みくださりありがとうございます。

次は深夜にでも投稿してみます

感想・アドバイスは俺の今後の糧とします。くださると嬉しいです

なんかお気に入りが増えていってて焦っていますσ(^_^;)アセアセ...

まさか今までお気に入りが二桁いかなかったのに今回こうなるとは……

吐いてしまうほど嬉しかったです(*^-^)

それに加えて評価までしていただくとは……

俺はここ三時間分くらいの運は使ってしまったのではないでしょうか?

……ん?たった三時間ですって?

その三時間に何回全裸になれると思っているのですか?!


なんかいろいろすいません。しかも長々と……


次回は明日の20時です

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