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ベタな展開にピンスポットは必須?

 香陽を除いて和気藹々と話し合いは続く。

 どうも香陽の世界からはよく渡ってくるらしく、日本の文化も少なからず伝わっているらしい。

「とりあえず、コウヤちゃん身体は大丈夫なの?」

「気力はごっそりなくなったけどね・・・・」

 もうどうにでもして、の心境である。

 ここまで来たらもう何でもこいだよね、あははははは。が香陽の正直偽りない現在の意見だ。

 そしてこんな中途半端なお約束に相応しく、外からノックもなしに誰かが入って来た。

「ベイジル!遅い!!」

 入って来たのはこれまたベタな人物だった。

 艶やかな黒髪に翡翠色の瞳。

 すらりとした肢体に神の采配による絶妙なバランスで配置された顔。

 一言で言うなら王子様風美形だった。

 しかもひょろくない。

 水輝の『筋肉センサー』に見事に引っかかる程度には鍛えられているらしい。

 と言うか服の上からそんな物が判る水輝が怖いのだが。

「まぁ・・・・・これまた素敵な方が」

 何度も言うが水輝の言う『素敵な方』は顔ではない。

 筋肉である。

 それも恐ろしいことに肌のハリ・艶・肢体のバランス、それに伴う骨格の良さまで全て含まれての筋肉の付き具合である。

 人間レントゲンか!と一度叫んだ香陽に対して水輝はにっこりと春の女神のような微笑みを浮かべて肯定したのだ。

 もはや恐怖でしかない。

「・・・・・エーヴァルト」

 そんな男の口から漏れて出たのは赤クラゲへの歓喜の声。

 しかも女声だった。

「きもちわりいいいいいいいいいいいいいいい!」

「・・・・不躾に失礼な奴だな」

 今さっき女声だった男の口から外見に相応しい低めの声が漏れて、香陽はあからさまにほっとした表情で見上げる。

 香陽も身長がけして低い方ではない。

 どちらかというと高い方の部類に入るのだが、男はもっと高かった。

 座ったままの香陽がかなり首を上げて見上げなければならないところを見ると180cmは越えている。

 更に水輝のセンサーに引っかかる。

「領主様、そりゃそんな美丈夫の口から女声出たら気持ち悪いですって」

「黙れ。俺が好きでこんな声で喋ると思ってるのか。エルネスタ、出ろ」

 じろっと睨んだ男の身体がぶれる。

 ずるりと出てきたのは例えるなら白黒クラゲだった。

 ただし、顔は香陽の見た夢のままの顔だ。

『エーヴァルト・・・・遅い!』

 わあ・・・・・と香陽は遠い目をしてしまう。

『すまない・・・エルネスタ』

 ふっと目元を緩めて白黒クラゲ、もといエルネスタを見つめるエーヴァルト。

 生身であればとても絵になる再会シーンのはずである。

 漂ってなければ。

「・・・・・・これ、喜劇?」

「感動物語のはずなのに」

 とほほ、とベイジルが肩をすくめる。

 しかし、クラゲ状態の二人には全く関係のない外野の話に移行しつつある。

 舞台で言うならピンスポットが当たってる状態だろう。

 いわゆる所の二人の世界であった。

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