日常の挨拶と刃物は相容れない関係?
唐突な動きに香陽がびくっと身をすくめる。
「う・・・動いた」
「動いたわね」
香陽と水輝を見た瞬間、男の表情が変わった。
ぬぼーっとした表情から、にやにやと愉快そうな表情へ。
「・・・・よお」
「こんにちわ」
「こ・・・・・んにち・・・・わ?」
男の軽い挨拶に水輝は丁寧に、香陽はいぶかしみながら挨拶を返す。
「ってええええええ!違うだろこれ!!!」
「あら、挨拶は人間関係の第一歩よ?」
「人間関係築くほどのあれか!!」
「あれ・・・ってひでーな」
「うっせえ!・・・・・って会話が通じてる?」
リアルタイムな男の返答に香陽は回りを見回す。
「んな?!」
回りを見回すとそこにあったのは児童公園ではなく、男側にあった光景だった。
それもそぐわない、見ることを拒否していた光景。
それはそれは夢のように美しい花畑のど真ん中である。
「のおおおおおおおおおおっ!!!拒否してたのに!脳が認識するの拒否してたのに!!!」
「今日も激しいわねー・・・コウヤちゃんのテンション」
「あんたが平常運転過ぎるのよおおお」
あああああ、とコウヤはがっくりと膝を突く。
ふくよかで爽やかな甘い花の香りはこんな時でなければ香陽の心を慰めてくれただろう。
しかし、今この場においては全く無駄どころか異色すぎて取りあえず拒否したい物でしかない。
「でも変よねぇ・・・・コウヤちゃんの夢ではこんな花畑ではないのでしょう?」
水輝の言葉に香陽はハッとして回りを見回す。
夢の場所としては確かに間違いないのだが、香陽の夢の中では花はなく、荒れた土と岩しかなかった。
「へぇ?お嬢さんらココ知ってるのか」
にやにやと笑う男が香陽の顔を覗き込む。
何故か一緒になって水輝も覗き込む。
「水輝さん・・・貴方までどうして覗き込むの」
「コウヤちゃんが可愛いからよ」
ふふ、と笑いながら水輝が答える。
全く答えになってねえ、と香陽が毒づくと、男は普通におかしそうに笑った。
普通の表情も出来るんじゃない、と香陽が思った瞬間。
男は手に持っていた剣を振りかざした。
「なんでじゃあああああ!」
「あ、切れないから大丈夫」
「いやいやいやいや、間違いなく切れるだろそれ!どう見ても鉄の塊じゃんそれ!!危ないから!って言うか銃刀法違反ですよおまわりさーん!!!」
しかし、男は香陽の言葉を聞き終わるなり、笑いながらその剣を香陽の胸に突き刺した。
「いやああああああああああああああ!」
痛い、と感じるよりも先に水輝の叫び声に香陽はうるさい、と見当違いの事を考えながら。
意識を失った。
毎度の事ですがサブタイトルに大した意味はありません。語感だけで付けてます。