崩れる時の予告なんて誰が言ったか?
そんなとんでも日常が足下を崩し、崩壊したのはその日の放課後だった。
「・・・・トンデモ設定いえーい・・・・・」
香陽はそんな事を呟く。
ほんの少し、彼女の日常は他の人間よりもデンジャラスだっただけである。
夢の世界そのままに。
「・・・・コウヤちゃん・・・・」
「水輝・・・・・あんたならやりかねないと思ってたけど・・・・」
まさか・・・ねぇ・・・と香陽は呆然としながら呟く。
普通の下校だった。
誓って寄り道などもしていない。
いきなり目の前に箪笥が現れた訳でも、どこぞの魔法少年の様に魔法の国からお迎えにと空飛ぶ車が来た訳でもない。
「あらいやだ・・・これはコウヤちゃんの夢でしょう?」
「コンチキショウ・・・・・」
「でも・・・・・ほんっとうに素敵・・・」
うっとりと。
水輝が見つめる先には、香陽が夢に見続けた世界が広がっている。
近所の児童公園の中で。
「ありえねええええええ!」
きゃいきゃいと愉快に遊ぶ小学生達には見えていないようだったが。
その児童公園の中には小学生だけではなく、香陽が夢で見続け、殺され続けた剣を持ったひょろりとした男がぬぼーっと立っているのだ。
奇妙奇天烈以外何物でもない。
違和感しかない、とはこう言うのだ!と標本にして飾りたいぐらいに。
「ああ・・・・・なんなのこれ・・・ほんっとう何なのこれ・・・・」
頭を抱えて唸る香陽にぬぼっと立つ男性にうっとりとする水輝。
それを全く違和感なく通り過ぎていく通行人の半分は鎧を着ている。
「なあ・・・・小説でトリップ物とかあるけどさ・・・・それってこんな変なシーンあったっけ?」
「ないわねぇ・・・・」
「だよねえ・・・・・・・」
「と言うよりそもそも異世界への誘い自体現代日本ではないのではないかしら」
「だよねえ・・・・・」
「コウヤちゃん・・・ぐっじょぶ!」
ぐっ。と親指を立てて途轍もない威力の美少女の笑顔に香陽はますます頭を抱える。
「のおおおおおう!あんたほど!あんたほどそれが似合わない人間はいねえええええええ!けど超素敵な笑顔おおおおお!」
「本当・・・コウヤちゃんのお友達で良かったわぁ・・・・」
「普通は巻き添え食って友達やめたいって言う所じゃないのかあああああ!」
香陽のその叫びに水輝はうっとりとした微笑みで首を横に振る。
そこまで筋肉が好きか!と小一時間問い詰めたい所だがそれをすると二時間以上筋肉の話で埋め尽くされ挙げ句の果てに『筋肉最高、筋肉万歳』と可憐な美少女にあるまじき賛美をされるのでやらない。
「でも変な話よね・・・・どうして児童公園にこんな立体映像みたいなのが出てくるのかしら」
「場所関係なくなんでこんな光景が現れるんだ、が正しい所じゃないのかね・・・水輝さん・・・」
この奇妙な光景はどうやら香陽と水輝にしか見えてないらしい。
そうでなければ大騒ぎになる筈である。
何せ公園のど真ん中で抜き身の剣を持ってぼけーっと突っ立っている奇妙な男がいるのだから。
「つか動かないよね・・・」
「そうねぇ・・・・」
おそるおそる香陽が公園に足を踏み入れた瞬間。
ぎょろっっと男の顔が二人に向けられた。
殆どタイトルに意味はありません・・・・すいません。