ご都合主義ここに極めり?
そんな外野を放置してクラゲ二人はツンデレ白黒クラゲと懐広い赤クラゲのベタイチャ劇が続いている。
と言っても過剰はラブシーンを見せつけている訳ではない。
むしろその方が良かったかも知れない、と香陽はぬるく見つめる。
「そろそろ良いですかねぇ・・・・そこのお二人さん」
勇気ある一言はベイジルから発せられた。
ナイスだ!おっさんその2!と香陽がぐっと親指を立てていい笑顔をする。
それに気が付いた領主と呼ばれる美丈夫も心底助かった、と言う表情をしている。
『ああ、悪いな』
「これ以上続いたら18歳未満お断りで問答無用でお嬢さん方を別の部屋に移動させて強制終了させるところですよ、ほんっとうに」
『む・・・・』
そんな事をすれば香陽に引っ付いているエーヴァルトは2メートル離れた時点で強制的に移動することになる。
ベイジルの狙いは勿論それなのだが。
「て言うか何で私らこの世界に紛れ込まされた訳?」
「え、このためじゃないの??」
水輝の言葉に取り憑かれた二人はぎょっとした表情で見合わせる。
ベタ甘寸劇を実演する為だけにここにいるのかと二人とも同時に考えて同じようにげんなりするのはもはや必然であろう。
「嫌すぎる・・・・それは嫌すぎる・・・・しかもあれか・・・・」
「この続き的に言うならあれか?身体を貸して一晩のうにゃうにゃ的なあれか・・・・?」
「いわゆる濡れ場、ですか」
「いやだあああああああああああああああああ!」
香陽と美丈夫同時に同じように叫んだのを見て4人が息が合うと拍手を送る。
「そんな拍手いらん!」
「てかそんな事考えて呼ばれたのか私は!!」
「真っ平ご免だぞ!!」
とにかく嫌だ!と前面に押し出しながら二人はベイジルに詰め寄る。
どうどう、と二人を止めながらベイジルはにやにやと笑っている。
正に蛇のような笑いだ。
嫌な予感しかしない。
「二人とも落ち着いて。そんな事出来ませんから」
「本当にか!」
「本当ですって。領主様はともかくこっちの彼女は身体を操られたりとかされてないでしょ?」
『無理だな』
「でしょうに・・・・そもそも役割逆でしょ、あんたら」
ベイジルの言葉に香陽と領主はハッとお互いを見る。
男女逆転してるのでこの場合エルネスタがエーヴァルトを抱くと言う奇妙な状況が出来上がる。
それは当人達も勿論避けたい出来事である。
「それは私も見たくないわぁ・・・・・・」
流石の水輝も嫌そうな表情である。
彼女は真っ当な嗜好の持ち主である。例え筋肉フェチであっても。
「て言うかさ・・・・・・私ら、元の世界に帰る事自体出来る訳・・・・?」
香陽の呟いた言葉に重苦しい沈黙がのしかかってくる。
「こ、コウヤちゃん・・・・」
「だって・・・・・ファンタジーのお約束じゃんこれって・・・・戻れないの・・・・」
「そ、れはそうだけど・・・・」
「下手したらこのおっさん取り憑かせたままこの世界で生きて行かなきゃならない訳・・・・?」
「それは羨ましい事だけど、ずっとここにいるのは困るわねぇ・・・・両親が心配するでしょうし」
ほわほわとした外見の割にしっかりしている水輝ですらこの事態には表情が冴えない。
うーん、と二人が沈黙に押しつぶされそうになっていると、ぽん、と二人の方を叩くのは領主だった。
肩を叩かれて二人は領主を見る。
「二人とも悩まずとも元の世界には帰れるぞ」
「え?」
「と言うか普通に行き来出来る」
うんうん、と頷く紅白黒クラゲにベイジルの三人。
「・・・・ご都合主義ですか・・・ここまで」
「と言うかこの世界の話は聞いたな?」
「はぁ・・・・少しだけ」
うんうん、と頷く水輝に領主は更に言葉を重ねる。
「この世界に魔法がある事も判っているな?」
「はあ・・・さっきそこの人が雷で・・・・って何でこの人雷に打たれたのに平然としてんだ?!!」
先ほどエーヴァルトに雷を落とされて直撃していたのをすこっと忘れるほど平然としているベイジルを見て香陽が叫ぶ。
べろん、と出されたのはベイジルのかぶり物のような物だった。
しかも真っ黒に煤けている。
「蛇なので代謝が早いんだよ。あと復活も」
「ありえねええええええええええええええええええ!」
「凄い特技ですね・・・・」
ドン引きの香陽にまじまじと脱皮したベイジルの抜け殻を眺める水輝。
どちらが普通の反応かと言われれば人それぞれだろうが、おおむね香陽の反応が一般的だろう。
『なのでこの男は500年以上生きているのだ。蛇の一族でも蛇神の一族はこの世界でも長寿と呼ばれているからな』
『竜よりも長生きするぞ、そいつの一族』
クラゲに言われたくない、と思いつつもど真ん中ファンタジー路線な言葉に香陽は目眩がする。
もう何でも良いよ・・・・・どうとでもしてくれよ・・・・とさっきも考えた事を考える。
「こいつの事はともかく、元の世界にはちゃんと帰れるから安心しろ」
「そ、そうですか・・・・」
色んな事が一度に起こりすぎて香陽はこのまま気絶したい・・・と誰にも聞こえないように呟いた。




