プロローグ
ガタンゴトン、ガタンゴトン
路面電車の揺れる音が心地よく耳に響く。
眠気を誘うような気持ちのいい音だ。
窓の外の景色がゆっくりと流れていく。
外の喧騒が、ガタンゴトンという音に代わって聞こえてきて奇妙な気分だ。
集団下校中の小学生たちのおしゃべりも、煩いバイクのエンジン音も。
電車よりも外の景色を近くに感じられるところが良いなぁ・・・
ぼんやりと、そんなことを考えているといつの間にか目的の駅に着いていた。
慌てて200円を用意して下車する。
電車に比べて、駅に着いたことに気付きにくいところは弱点かもしれない。
目的地との距離が近くなっていくにつれ、どんどん鼓動が速くなっていく。
大丈夫、絶対に大丈夫。
自分に言い聞かせながら歩を進める。
『162』
受験番号の書かれた小さな紙。
裏には、入試当日の諸注意が書かれてある。
校舎内や校門付近には、私と同じ目的であろう人たちでごった返している。
胸が激しく波打つ。
『学業成就』と書かれた赤色のお守りを強く握りしめながら深呼吸をする。
幾分か気持ちが落ち着くのを感じた。
ゆっくりと校舎内に足を踏み入れる。
重く、緊張した足どりで人だかりの中心へと向かっていく。
大勢の人が大きな白い紙の中に、自分の受験番号を探している。
私も同じように、自分の手の中にある受験番号を探した。
今や、心臓は早鐘のように打っている。
『150、151、153、156、157、159、161・・・