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第3部 第4話

「健次郎!」


コータが、地面にうずくまる俺に駆け寄った。


「大丈夫か!?」


俺は、左肩を押さえ、ギュッと目を閉じた。

痛い、というより・・・熱い!

肩が燃えてるみたいだ。


あまりの激痛に声も出ない。


コータが自分の着ている服をパッと脱ぎ、それで俺の傷口を押さえた。

でもその服もみるみるうちに血に染まる。


「大成!車持って来い!」


コータの声に、大成が弾かれたように起き上がり、門の向こうへ走っていった。


「健次郎、大丈夫だからな。ちょっとかすってるだけだ。すぐ、病院へ行こう」


痛みで相変わらず声は出ないが、

俺はちょっと安心した。

自分の傷が大したことないと分かったからじゃない。

コータの声が、いつもの声に戻っていたからだ。


コータが右手で止血しながら、左手で俺の背中をさすった。


「よくやったな」

「・・・」


俺は何とか目を開き、少し前を見た。

少し前・・・


そこには、俺と同じく地面に膝をついた有の姿が。

その右手からは、少しだが血が流れている。


更にそのもう少し先に、有が大成から奪った銃が落ちていた。



全くの偶然だが、有が撃った弾が、

有と組長の間に飛び込んだ俺の肩をかすめ、組長に当たらずに済んだのだ。

そしてそれと同時に組長が撃った弾は、確実に有の右手に・・・

いや、有の右手の中の銃に命中した。


いくら俺にでもわかる。

有は普通の女じゃないんだ。

銃なんて、ドラマみたいに簡単に撃てるもんじゃない。

安全装置を外して、きちんと標的を狙って・・・

組長はともかく、普通の女にそんなこと、できる訳がない。


だけど有はそれをした。

しかも、俺に当たって逸れこそしたが、弾は寸分たがわず組長に向かっていた。


有・・・お前、一体何者なんだ?



組長が銃口を有に向けたまま、ゆっくりと有に近づいた。

有はそれを見て、一瞬身を縮めたが、すぐに諦めたように息をついて目を伏せた。


組長は、銃を持っているのとは反対の手をポケットに入れると、

中から何か小さくて薄っぺらい物を取り出した。

組長が、それを軽く上下に振ると・・・なんとそこから鋭く光る刃が出てきた。

どうやらナイフらしい。


「さっき、お前が下着の中に隠し持ってたやつだ。返してやる」


そう言って、組長が有にナイフを投げた。

それは有のすぐ足元に落ち、キンという音をたてる。


だけど有はナイフには手を伸ばさず、じっとしている。



ナイフを隠し持っていた。

銃も使える。


有・・・まさか・・・



「お前は松尾組の人間だな?」


有は反応しない。


「松尾の命令で、俺を殺そうとしたんだな?」


有が顔を上げ、組長の目を見る。


そして・・・小さく頷いた。



辺りにため息と怒りが渦巻く。

だけどコータは、さっきからずっと変わらず俺の背中をさすってくれている。

組長の言葉を聞いても、驚いた様子はない。


コータは知ってたんだ。

だから俺に「あの女はやめとけ」と忠告したんだ。


いや、最初に気付いたのはきっとコータなのだろう。

そしてそれを組長に伝えた。


やっぱ、さすがコータ、だよな。


俺は肩の痛みも忘れて、有を見つめた。

でも、それもほんの数秒のことだった。


なぜなら、組長は「そうか」と一言いうと、

何のためらいもなく、引き金を引いたからだ。



その音を聞いた瞬間、

有が地面に崩れ落ちた瞬間、


俺の意識は途切れた。





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