表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/41

第2部 第8話

「奥様はお留守でしたけど、いいご家庭でしたね」


コータの家からの帰り、有が車の中で呟いた。

その言い方には、妙に実感がこもっている。


「そうか?」

「はい。間宮さん、奥様の尻に敷かれてる、みたいなことたくさんおっしゃってましたけど・・・

わざとそうしているって言うか、それを楽しんでいるって言うか・・・お幸せそうですね」

「・・・」


いい勘してるな。


コータは二重人格ってゆーか、いくつかの顔を使い分けてる。

家庭での甘い顔、

場の雰囲気を和ます間抜けた顔、

弁護士としてのキリッとした顔、

そして、ヤクザの顔だ。


どれが本当のコータかと言われると、俺もわからない。


ただ、その中でもやっぱりヤクザの顔は特別だ。

はっきり言って、かなり恐い。

さすが組長仕込みだけあるって感じだ。


そして、まるでバランスを取るかのように、家では甘い顔をしている。

わざと愛さんと美優の下手したてに出て、「尻に敷かれている夫・パパ」を演じているのだ。

幼い娘の美優はともかく、妻である愛さんはもちろんコータのことをちゃんとわかっていて、

その上で「ワガママな妻」をやっている。


もしコータが本気で愛さんに何か言ったり怒ったりすれば、

愛さんもとてもじゃないが逆らえないだろう。

現に、あの家にはちゃんとコータの書斎がある。


有の奴、よく一目でそんなことを見抜けたもんだ。


「なんとなく、間宮さんが本城先生と兄弟っていうのが、分かる気がします」

「本城先生も家じゃあんな感じなのか?」

「いえ、わかりませんけど・・・奥様のこと、大切にしてそうじゃないですか?」


なるほど。

確かにそうだ。

どうも本城兄弟は、女を大切にする性分らしい。


「そうだ・・・さっきはありがとな」

「え?」

「本城先生と出くわしただろ。有のお陰で助かったよ。

あの本城先生を騙すなんて、大した演技力だな」


だけど有は不満そうに眉を寄せた。


「私、本城先生を騙したりしてません。本城先生にはそんなの通用しないと思うし」

「俺もそう思うけど、結果として騙せただろ」

「だから、騙してません」


珍しく少し怒ったような口調の有。


どうしたんだよ?と聞く前に、

突然有が助手席から手を伸ばし、ハンドルをグイッと切った。


「おい!!」


車が曲がり、車道を大きく外れて歩道に乗り上げそうになる。

俺は慌ててハンドルを強く握って逆方向に回し、同時にブレーキを踏んだ。


車のタイヤがなんとか縁石と平行になり、車が止まる。

タイヤと縁石の間は、5センチもないだろう。


一瞬ヒヤッとしたが、車が止まると一気に緊張が揺るんだ。


「有、何するんだよ、危ないだろ。人も車もいない道だからよかったようなものの・・・」


だけど有は何も言わずにシートベルトを外した。

よくわからないが、どうやら怒っているようだ。


そのままドアを開けて出て行くのか・・・と、思ったら、

有は急に身を乗り出し、俺にキスしてきた。


もちろん、ベッドの中じゃ有とキスするなんてしょっちゅうだけど・・・

こんなことは、初めてだ。


なんだ?

どうしたんだ?


俺は無意識に息を止め、有にされるがまま固まった。


有が助手席と運転席の間をまたぎ、俺の上に身を乗せる。


「・・・狭いです」


当たり前だ。


俺はようやく息を吐き、運転席のシートを目一杯後ろに下げた。

と言っても、そんなに広くなる訳でもない。


有は背中でクラクションを押さないように後ろを気にしながら、

また俺にキスする。


俺も有の背中に手を回した。

いつになく大胆な有に、思わずキスが激しくなっていく。


有が、ほんの少し唇を離した。


「本城先生に言った通りになれば、先生を騙したことにはなりません」

「言った通り?」


有はもう一度唇を合わせてから、俺の目を見て言った。


「理事長先生と私が好き合って普通に付き合えばってことです」

「・・・」

「ダメですか?」


ダメも何も、そんなのやろうと思ってすることじゃない。

自然とお互い好きにならないと、そんなことできない。

好き合ってる振りして付き合っても、本城先生を騙してることに変わりはないしな。


俺はいい。

俺は有のことが好きだ。


でも有は・・・


「もうお金はいりません」

「それじゃ、俺と会う意味ないだろ。他の男と寝て金貰う方が、有にとっていいだろ」

「他の男と寝るなって言ったのは、理事長先生じゃありませんか」

「そうだけど、抱かれるだけ抱かれて金貰えないなんて、有にメリットないじゃねーか」


だけど俺も矛盾している。

だって俺の手は、既に有の身体を這い回っているのだから。



有の背中にある手を足の方へずらし、ワンピースの中に入れる。


さすがに場所が場所だから、やれることは限られているが、

元々有は敏感だし、有の身体のことなら隅々までわかっている。


案の定、最初は固く閉じられていた有の身体が次第に緩み始めた。


「・・・メリットなら・・・あ、あります・・・」


有は俺の胸に顔を押し当て、喘ぎ喘ぎ言った。


「メリット?何?」


有が顔を上げ、潤んだ瞳で俺を見つめる。


その時、有の身体の中が急激に変化した。



「・・・好きな人と一緒にいられる、っていうメリットです」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ