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第1部 第1話

俺は無事卒論を出し終え、すがすがしい気分で街を歩いていた。


小学校から大学までエスカレーター式の超金持ち学校だから、

別に卒論なんて出さなくても、教授にちょっと媚びれば卒業できる。

実際、俺はずっと勉強なんてロクにしたことがなかった。


が、大学1年の夏、俺の人生は変わった。


あれ以来、俺は必死で勉強してきた。

その科目は必要最低限に限られてはいたが、俺にとっては大変なことだった。


だけど、ようやくそれも終わった。


いや・・・本当の始まりは、2ヵ月後だ。


今までの勉強の成果が試される。



街を歩いていると言ったが、別に目的があってのことじゃない。

何が楽しくて、2月のこのクソ寒い中、歩き回らなきゃいけないんだ。

さっさと帰って、家でゴロゴロしよう。


実家にいた頃は、家に帰れば親父やお袋やお手伝いのオバサンなんかがいて、

家で1人きりなんてことはまずなかった。

だから1人暮らしを始めた頃は、正直少し寂しい気もしたが、

今はもう慣れ、むしろそれを満喫している。


もう実家に戻ることは二度とないだろう。




家まで歩いて後5分ほどのところにある居酒屋の前で、何人かの男がたむろしているのが目に入った。

時間的にはまだ早いので、居酒屋は開いてないが、もう辺りは薄暗い。


その暗がりにまぎれるようにして、男達は立っていた。


その中心には、まだ中学生か、せいぜい高校1年くらいの少女がいた。

細くて小さい身体に、黒目勝ちな瞳、更に短いボブのため、余計に幼く見える。

なかなか可愛らしい顔立ちをしているが、今はその表情は引きつっている。


どうやら絡まれて困っているらしい。


別にスルーしてもいいけど、

今の俺は機嫌がいい。

加えて、4月から自分の就く仕事が頭をよぎった。


ここは、助けてやっても損はないだろう。


よし。


「おい、やめろよ」


俺の声に、少女と男達全員が振り返る。


「嫌がってるだろ。やめとけよ」


そう言いながら、俺の目は男達のデータ収集に余念がない。


全員で4人。

腕の立ちそうなのが2人、

いざとなったら噛み付いてきそうなのが1人、

既に逃げ腰なのが1人。


4人とも大学生くらいの歳だ。


腕の立ちそうな2人が、俺を睨みながら近寄ってきた。


「うっせーな。てめーには関係ねーだろ」

「さっさとどっか行けよ。痛い目にあうぞ」


俺も動じずに言い返す。


「そっか、それは困るな。俺、痛みに弱いし」

「はは。だったら、最初っから、声かけんじゃねーよ」

「それもそうだな。じゃあ、失礼」


そう言うと俺は、回れ右をして一目散に走り出した。

ただし、その一瞬前に少女の腕を掴むことを忘れない。


男達は、まさか本当に俺が逃げ出すとは、

ましてや、まさか少女まで連れて行くとは、

思っていなかったのか、しばらくポカンとしていた。


「・・・って、おい!待て、お前!!!」


男達が我に返った時はもう遅い。

俺と少女は人通りの多い道へ出ていた。

それでも用心のため、俺はひたすら走り続けた。



「あっ!」


と。

いけね。


少々強引に、少女の手を引いて走り過ぎていたのか、

少女が石か何かに躓いて派手に転んだ。

そこで俺はようやく足を止めた。


「悪い。大丈夫か?」

「はい・・・」


ショートパンツからスラリと伸びた、まだ子供のような白い足に血が滲む。


「結構出血してんな・・・」

「いえ、大丈夫です。あの・・・ありがとうございました」

「逃げただけだけどな」


少女が少し笑い、横にしゃがみこんだ俺に目を向ける。


うーん、おしいな。

後5つくらい年取ってりゃいい女になってるだろうに。

誘うにはいくらなんでも子供過ぎる。


そんな子供っぽさのせいか、怪我をしてるのにこのままほっておくのは気が引けた。

元はといえば、俺が強引に引っ張ったせいでもある。


俺は、待っているように言い、近くのコンビニで消毒液やら絆創膏やらを買ってきた。


「本当に、すみません」

「いいって」


俺も親切になったもんだ。


いや。ここ数年、俺は喧嘩に巻き込まれることが多かった。

はっきり言って、俺は全く戦力にはならないが、

やっぱり怪我をすれば痛い。


だから、少女のこの傷の痛みも分かる。


ついでに言うと、そうやってよく怪我をしていたせいか、

簡単な傷の手当くらいはできるようになった。


「これで、よし」


俺は大きな絆創膏を少女の足に貼り、立ち上がった。


「ありがとうございます」


少女も俺に続いて、慌てて立ち上がる。


俺が173センチだから、150センチぐらいだろうか。

でも成長途中なら、まだ大きくなるかも知れないな。

胸もまだペタンコだけど・・・


って、こんなガキの身体を観察してどーする。


「あの、何かお礼をしたいんですけど」

「え?ああ、いいって」

「でも・・・」


少女がそう言って、俺の目を覗き込んだ。


さっきまでの視線とは明らかに違う。

どことなく熱っぽい。


・・・まさか、誘ってんのか?

こんなガキが?


まさか、な。


そうは思いつつ、少女の真意を確かめたくて、

俺はわざと含みのある言い方をした。


「『お礼』って何してくれんの?」

「・・・」


そこで沈黙かよ。

やっぱ誘ってるんだな?


なんてガキだ。


まあ俺も、そんな悪い見た目ではないと思う。

でも、初対面の、それもまだ会って数分しかたってないような女に誘われることはまずない。

しかも、相手はガキだ。


こんな発育不良の子供に興味なんてない。

俺が好きなのはもっと肉感的な女だ。

胸がデカクて、腰がくびれてて・・・


そういや、俺、こーゆー子供みたいな女としたことないな。

そもそも、ここ最近、勉強や卒論が忙しくてずっとご無沙汰だった。


4月になれば、俺もちょっと簡単にはそーゆーことができない立場になる。


今のうちに少し遊ぶくらい、いいよな?


俺はニヤッと笑うと少女の肩を抱いた。



「んじゃ、『お礼』してもらおーかな?」





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