表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/41

第2部 第3話

「だっせー」


俺が心底呆れてそう言うと、篤志はムスッとした。


「ほっといてください」


ほっとくも何も、鼻にそんなデッカイ絆創膏貼られた日にゃ、

突っ込まずにはいられない。




ここは、廣野組がいつもお世話になってる病院の処置室。

お世話になってる・・・ってのは、

普通の病院だと警察に通報されてしまうようなヤバイ傷の手当なんかも、

ウヤムヤにしてくれる、って意味だ。


でもまあ篤志の怪我なんて、どうせ小学生同士の喧嘩でできた怪我だろうから、

大したことはないだろう。

むしろ、篤志より喧嘩相手の怪我の方が心配だ。

篤志は小学生のわりに背が高いし、喧嘩もやたらめったら強い。

小学生はもちろん、中学生、いや、高校生相手でも、勝つかもしれない。


と、思ってたら。


「ちょっと穏やかではないですね」


担当の医者がそう言った。


「穏やかじゃない?」

「はい。篤志君の鼻の傷、刃物でつけられた物に違いありません」

「は、刃物!?」


俺は椅子に腰掛けて不貞腐れている篤志を睨んだ。


「おい!そんな危ない喧嘩したのかよ!」

「喧嘩じゃないです」

「え?」

「歩いてたら、いきなり切りつけられたんです」

「もっと悪いだろ!!」


小学生が登校中に刃物を持った奴に襲われる、ってだけでもじゅうぶんヤバイが、

その小学生が廣野組の組員となると、もっとヤバイ。


犯人が篤志の立場を知らずにやったのならともかく、

知っててやったとしたら、これはもう廣野組に対する挑戦と言っていい。


どっちだ?


「知っててやったみたいです」

「・・・なんでわかる?」

「名乗ってましたから。『俺は松尾組の人間だ』って」


松尾組!?

それって、廣野組と敵対してて最近怪しい動きをしてるってゆーあの松尾組か!?


「組長に言った方がいいですか?」

「言わなきゃダメだ」


これは明らかに挑戦っつーか、挑発だ。

小学生の篤志を狙ってくるところが、また許せない。


こりゃ、本当にヤバイことになりそうだ。





組長の自宅である3階建ての廣野家はとにかくデカイ。

その理由は・・・

1階には、100畳以上あろうかという大広間や台所や風呂、

2階には、組長や幹部の部屋、

そして3階に、廣野組の若い連中が30人ほど住んでいるからだ。

住むところがない組員のために、組長が開放している。


篤志や門番の大成も3階に住んでいて、コータも昔はここにいた。

俺も以前は・・・と言いたいところだが、ある理由で俺はここに住んでいたことはない。

俺は拾われた時から贅沢にも1人暮らしさせてもらってる。


とにかくそんな廣野家に、デッカイ絆創膏を鼻に貼った篤志を連れて帰ると、

案の定、篤志は大爆笑の的だったが、

その怪我の理由を俺が言うや否や、雰囲気が一変した。


大広間に集まった連中は口々に、

松尾の奴が!?とか、

信じられない、とか、

許せねー、とか、

仕返しだ!とか叫び、もう収集がつかなくなってしまった。


そして、騒ぎを聞きつけた組長も2階から下りてきた。

で、開口一番。


「だっせー」

「・・・組長。それ、さっき健次郎さんにも言われました」

「当たり前だろ」


だけどさすがに組長も、これが松尾の仕業だと知ると顔をしかめた。


「ふーん。小学生に手を出すとはやってくれるな」

「・・・すみません。俺、もうちょっと気をつけておけばよかったです」


篤志も自分の怪我のせいで、こんな険悪な雰囲気になっているのを申し訳なく思っているようだ。


「ま、篤志が悪い訳じゃないだろ。怪我の具合はどうだ?」

「全然平気です。小鼻にちょっと傷が残るかもしれないって、医者に言われましたけど」

「・・・あんま、平気とは言えないな」


でも篤志は得意げに言った。


「顔に傷があるなんて、ヤクザっぽくていいじゃないですか」


・・・アホな奴だ。

そう言えば、こいつ、コータの弟分だったな。

コータの奴、こんな時にどこ行ってやがるんだ。


「顔に傷があると、女が引くぞ」

「えー、そうなんですか?じゃあ、傷が落ち着いたら鼻ピアスします」


心配するだけ無駄だと思ったのか、組長は少し苦笑いしたが、

再び腕を組んで渋い顔になった。


組長は無駄な争いは好まないが、やらなきゃいけない時は容赦なくやる人だ。

今回のことをどう見るのか。


大広間は、シンッとなった。



が。



その静寂を間抜けた声が砕いた。



「ただいま~」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ