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第2部 第1話

ゆう。何やってるんだ?」


頭をタオルで拭きながらシャワールームを出ると、

有が俺の財布をいじってるのが見えた。


金を盗ろうとしてるんじゃない。

金はさっきもう渡した。

今更遠慮することもないから、

足りなきゃ足りないと言うだろう。


だから俺も怒って言った訳じゃない。


「あ・・・お金を戻してました」

「戻してた?なんで?」


有は、俺の財布に金を入れながら言った。


「よく考えたら、一昨日も貰ったところで、まだ使ってませんから」


俺は苦笑した。

使ってようが、使っていまいが、貰えるもんは貰っときゃいいのに。


有はこんなことしてるくせに変なところで真面目だ。

俺から金を貰う時は、絶対に俺と寝る。

金だけ貰う、ってことはしない。

当たり前と言えば当たり前なのだが、俺の弱味(?)を握ってるんだし、

少しくらい強く出てもよさそうなのに。


それどころか。

俺が意識的に会う回数を増やしているから、金を渡す回数も多い。

だから有は俺に気を使って、

一度に受け取る金を減らしている。

それに俺の言いつけ通りこの半年、俺以外の男とは寝ていないようだ。


真面目というか、律儀というか。


でも、有がそんな女だからこそ、俺もここまでのめり込んだのかもしれない。



「んじゃ、もう一回やろーぜ。そしたら心置きなくその金、受け取れるだろ」

「でも・・・理事長先生、困りませんか?」


俺はまた苦笑いした。


男は、そんなこと気にされると逆に傷つくんだけどな。


俺は雇われ理事長とは言え、莫大な資金を持つ廣野組の人間だ。

平均的な22歳のサラリーマンより、遥かに金を貰ってる。


「組長」なんかやってるくせに、金銭感覚のしっかりしている組長曰く、

「上に立つ人間が『見栄』に使う金は、無駄遣いとは言わない」そうだ。

下っ端ってのは、そんな「見栄」に憧れて頑張るから、という理屈らしい。

だから一応学校では上に立つ俺にも「見栄を張る金が必要」ということで、結構な報酬を受け取っている。

だから有に小遣いを渡しても、じゅうぶんにやっていける。


コータに「金がないから奢れ」なんて言ってるのは、

俺より遥かにたくさんの金を貰ってるコータへのちょっとした「挨拶」だ。


「生活に困るようなら、最初から金なんか渡すかよ」

「・・・そうですよね、ごめんなさい」


だけど有はそう言いつつも、俺の財布に金を入れた。


「だから、」

「お金のかわりに、どこかに連れて行ってください」

「へ?なんて?」


聞こえなかったわけじゃない。

聞き間違えかと思ったのだ。


有とはホテル以外へ行ったことなんてない。

俺達の関係には、そんなもん必要ないもんな。


・・・まあ、有がどっか連れて行けって言うなら、俺は嫌じゃないけどさ。


「どこか、ってどこだよ?買い物か?」

「じゃあ・・・ディズニーランドに行きたいです。行ったことないから」

「え」

「ダメですか?」


ダメっつーか、正直苦手だ。

何が楽しいのかわからない。

昔、付き合ってた女と行ったことがあるけど、

雰囲気と人の多さにとにかく疲れた、という思い出しかない。

しかも女はやたらとハイテンションで、逆に俺の気分はどんどん下がった。


女ってなんでディズニーランドが好きなんだ。


「・・・やっぱり、いいです」


いつもは飄々としてるのに、

珍しくちょっと落ちこんだ感じの有。


なんだよ、そんな顔するなよな。

ずるいぞ。


「あー!わかった、わかったから!」

「ほんとですか?」


とたんに有の顔が明るくなる。


「ああ。次の日曜に連れて行ってやるから」


有はにっこりと微笑んで「ありがとうございます」と言った。


・・・有のこんな笑顔、初めて見たかもしれない。


俺の知っている有と言えば、

車の中での無表情な有と、ベッドの中の有だけだ。

それも、最初の頃はベッドの中でも無表情だった。

我慢してわざと無表情にしているのではなく、

やることに慣れてなさすぎて、何が気持ちいいのかよく分からない、という無表情だ。

よくそんなんで男をホテルに誘ってたもんだ、と思った。


だけど最近は変わってきた。


表情だけでなく、身体の反応や声もだいぶそれらしくなってきた。

その一方で、身体そのものは相変わらずガキ臭い。

でもそのギャップがまたなんとも言えない。

って、俺、やっぱ変だな。



でも。

この日の有は、帰りの車の中でも無表情ではなかった。

あからさまにニコニコしてはいないけど、

どうやら日曜日を楽しみにしているようだ。


・・・ま、たまにはこーゆーのもいいかな。






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