オーロラへの道
そこは、真っ暗闇の世界だった。
私の口癖は『消えたい』だった。
でも、そんな私の凍えた手を温めてくれたのは貴方だった・・・
季節はすっかり春の風を通し、辺りを見渡せば皆笑顔でこれからおこるだろう4月という始まりに、不安と期待を弾ませ顔を輝かせていた。
私はというと、そんな人を横目にキャップを深く被り、挙動不審な動きをしながら本屋に滑り込んでいた。毎度のことだ。私には季節なんて、始まりや終わりなんて関係ないのだから・・・
辺りをキョロキョロ見渡しながら『宗教』や『道徳』といったコーナーに行く。ここ何年の間にいったい何冊読んだだろう。『死』に関する本を。
いつの間にか知識だけは豊富になったのに今だ死ねやしない。意気地なしの大馬鹿者だ。
大学も怖くて行けなくなり、気づけばニートになっていた。いつの頃からか『死』を最大の美学と捉えだしていた。心の中ではわかってた。人間としてそれは誤った考え方だと。
でも、奥底の私が決して許しはしなかった。支配していた。私は完全に暗闇の私に操られていたんだ
時間を持て余し、何時間も本屋に居座っていた。そして今日も本を手に取り、パラパラと捲ってはそれを本棚に返す。という私の中の<習慣>を繰り返していたときだった。
ある本の1ページに目がついた。新品の本に赤いボールペンで何かが書かれている。
目をやると、そこには『君は生きなければいけない。君はいつか気づくはずだ。この本を手にした選ばれた人なのだから』と書かれていた。そして、ページ番号19に続いて、48-7511と書き足されていた。
何故だかわからない。だけど言いようもない鼓動を胸に感じた。動悸は時間を増すごとに早くなっていった。
気づいたときには携帯を手にしていた。そして番号を打つ私。
ビッグウェーブを目の前にしたかのように、言いようも知れぬ鼓動の速さと妙な緊張を感じていた。
プルルル・・・耳の先で鳴るのは、単なる機会音だけだ。私はなるべく平静を保ち、右耳に神経を集中した。
どれだけかけ続けただろう。携帯番号と予測したその数字から応答はなかった。
私は暫くの間、呆然としていた。そこには『音』という世界は既に存在しなかった。