表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

オーロラへの道

作者: YUKO the Sky

 そこは、真っ暗闇の世界だった。

 私の口癖は『消えたい』だった。


 でも、そんな私の凍えた手を温めてくれたのは貴方だった・・・





 季節はすっかり春の風を通し、辺りを見渡せば皆笑顔でこれからおこるだろう4月という始まりに、不安と期待を弾ませ顔を輝かせていた。

 私はというと、そんな人を横目にキャップを深く被り、挙動不審な動きをしながら本屋に滑り込んでいた。毎度のことだ。私には季節なんて、始まりや終わりなんて関係ないのだから・・・

 辺りをキョロキョロ見渡しながら『宗教』や『道徳』といったコーナーに行く。ここ何年の間にいったい何冊読んだだろう。『死』に関する本を。

 いつの間にか知識だけは豊富になったのに今だ死ねやしない。意気地なしの大馬鹿者だ。

大学も怖くて行けなくなり、気づけばニートになっていた。いつの頃からか『死』を最大の美学と捉えだしていた。心の中ではわかってた。人間としてそれは誤った考え方だと。

でも、奥底の私が決して許しはしなかった。支配していた。私は完全に暗闇の私に操られていたんだ


 時間を持て余し、何時間も本屋に居座っていた。そして今日も本を手に取り、パラパラと捲ってはそれを本棚に返す。という私の中の<習慣>を繰り返していたときだった。

 ある本の1ページに目がついた。新品の本に赤いボールペンで何かが書かれている。

目をやると、そこには『君は生きなければいけない。君はいつか気づくはずだ。この本を手にした選ばれた人なのだから』と書かれていた。そして、ページ番号19に続いて、48-7511と書き足されていた。

 何故だかわからない。だけど言いようもない鼓動を胸に感じた。動悸は時間を増すごとに早くなっていった。


 気づいたときには携帯を手にしていた。そして番号を打つ私。

ビッグウェーブを目の前にしたかのように、言いようも知れぬ鼓動の速さと妙な緊張を感じていた。

 プルルル・・・耳の先で鳴るのは、単なる機会音だけだ。私はなるべく平静を保ち、右耳に神経を集中した。

どれだけかけ続けただろう。携帯番号と予測したその数字から応答はなかった。

 私は暫くの間、呆然としていた。そこには『音』という世界は既に存在しなかった。



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ