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今話題の日本のニュース  作者: 夏野みず


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2028年 外国人労働者上限約123万人?

 移民(外国人労働者受け入れ)政策の背景


 日本は少子高齢化が進む中、労働力不足が深刻な社会課題となっています。人口は減少し続け、国内の生産年齢人口(働き手の数)は急激に縮小しているため、自動化や賃金引上げだけでは補えない職種・産業で人手不足が恒常化しています。


 こうした現実を前提に、自民党を中心とする政府・与党は外国人労働者の受け入れ拡大を政策課題の一つとして位置づけ、「一定の枠で外国人労働者を受け入れる枠組み」を議論しています。その中で示されたのが 「最大約123万人までの外国人受け入れ上限案」 です。



 1. 「123万人案」とは何か

 ① 数字の意味


「123万人」とは、政府・自民党が示した 2028年度末までに国内で在留する外国人労働者の総数の上限目標とされる数字です。これは単に入国者数ではなく、在留資格を持つ労働者の上限として設定される概念であり、制度ごとに受け入れ枠を設けた累計値です。



 ② 対象となる制度


 この「123万人案」は 複数の在留資格制度の合計で構成されます。主な制度は次の通りです:


(A) 「特定技能」制度


 現在の外国人労働者受け入れの中心的な枠組み。建設、介護、農業など 特定の産業分野で必要な技能を有する外国人に対して認められる在留資格です。

 新設・拡大した技能分野を含め、2028年度末までの 上限 約80万5千人 とする案が示されています。



(B) 新制度「育成就労」(予定制度)


 技能実習制度の後継として議論されている新たな在留資格。

 対象は農業・建設・介護・製造など 17業種 が想定され、

 上限 約42万6千人とされる素案が示されています。


 両制度を合わせた上限として 約123万1千人 という計算が出されています(制度合計)。



 2. 受け入れ拡大の狙いと政策意図


 この案の背景には、主に次のような政府・自民党の政策目的があります。


(1) 労働力不足の解消


 農業、建設、介護、宿泊・飲食など、深刻な労働力不足が続く分野で 人手を確保する必要性 があります。


 日本の人口構造(出生率低下、高齢化進展)では、内需だけで人手不足を解消することが困難であり、 労働力の外部導入を進める という経済・社会政策上の判断が一つの主眼です。


(2) 経済成長の維持


 国内産業、特に中小企業を中心に人手不足がコスト高やサービス低下を招きかねないことから、生産性維持・成長のためにも受け入れ枠を一定拡大する必要があるとされています。


(3) 在留資格の多様化と制度刷新


 従来の 技能実習制度 は「技能移転」を目的としてきましたが、実態としては人手不足の吸収に使われる側面が強く、改善と整理が求められていました。新制度の「育成就労」導入は、制度設計を合理化し、より実務的な受け入れを可能にする試みと位置づけられています。



 3. 日本社会における議論の中心点


 この政策案は日本社会でも大きな論点を生んでいます。以下では主な論点を整理します。


(1) 移民と外国人労働者の扱い


「123万人」は 外国人労働者の受け入れ枠 を示す数字であり、日本政府はこれを “移民”とは呼んでいません。これまでの日本では、あえて “移民” という語を避け、在留資格制度の拡張として外国人労働者受け入れを進めてきましたが、日本語の呼称・扱いが議論を呼んでいます。


 国際的には「事実上の移民政策」と評価されることもありますが、政府は引き続き “労働力としての外国人” として扱い、永住権とは別の枠組みとして設計しようとしています。


(2) 社会的・文化的な反発


 日本国内では人口減少と労働力不足を背景に受け入れ拡大の意思はあるものの、次のような 懸念 も根強く存在します。


 ・社会統合の問題


 言語や文化の違い、生活習慣の調和といった面で議論が続いています。また受け入れ先の地方自治体や地域社会が 支援体制を整えられるか が問われています。


 ・治安・治安感情問題


 一部政治家や市民の間で「外国人が増えることで治安が悪化する」という懸念が語られることもありますが、統計上では外国人による重大な犯罪率が高まっているという明確な根拠はありません。実際、外国人による刑法犯検挙件数は過去数十年で大幅に減少しています。



 にもかかわらず、政治闘争の中ではこの点が強調される場面も見られます。


(3) 永住・定住の扱い


 政府は現在のところ「技能実習」「特定技能」「育成就労」のような 一時的・中長期的労働の枠組み を中心に議論し、永住や市民権付与については明確な方針を打ち出していません。

 しかし、長期在留者が増える中で、将来的に 定住・生活者としての権利保障や社会統合政策 をどう設計するかは大きな課題として残っています。


 4. 自民党内および政治的展開

(1) 自民党内の意見


 自民党内には受け入れ拡大を進めたい勢力と慎重な立場の勢力が混在しています。実際に党内で議論されている方向性としては、労働力不足を補完するための受け入れ制度刷新で大きく一致しているものの、 名称・制度設計・社会統合政策 については見解が分かれています。


 また、一部の議員は強硬な移民制限を主張する声を強め、日本第一主義的な主張を唱える新興政党とも競合しています。



(2) 与党内での実務的調整


 自民党は公明党と連立を組むケースもあり、受け入れ拡大に慎重な公明党の立場との調整が行われる可能性もあります。また、野党側からは 受け入れ規模が不十分・あるいは社会統合策が遅れている といった批判も出ています。


(3) 世論動向


 世論調査では、若年層や都市部では外国人労働者の受け入れに理解がある傾向も見られる一方、地方や高齢世代では慎重意見や反対意見が根強い結果が出ています。これは政策のバランス調整を困難にする要因です。


 5. 今後の展望と課題

(A) 制度設計の詳細化


「123万人案」はあくまで上限目標であり、実際の制度設計、産業分野ごとの受け入れ計画、在留資格ごとの枠組みや条件の具体化が必要です。政府は今後、有識者会議や官僚機構による調査・試算を進め、年度毎の着地や調整を進める方針です。


(B) 社会統合の政策立案


 外国人の受け入れが進むにつれ、言語教育、福祉・医療アクセス、地域コミュニティの受け入れ支援 などの政策が不可欠になります。また、子育て支援や教育機会の整備も今後の重要な課題です。


(C) 永住・市民権との関係


 外国人労働者を受け入れたとしても、上記の制度は 「一時的な就労目的」 に重きを置いているため、将来的な 永住権や定住権利のあり方 についての議論は深まる可能性があります。


 おわりに


 自民党が提示した「最大123万人の外国人労働者受け入れ案」は、日本の労働力不足を補完し、経済の持続可能性を確保するための重要な政策ステップと位置づけられています。一方で、社会統合、文化的調和、永住権との関係など、多くの課題と議論を残しており、今後の法整備・社会制度設計が問われています。


 この政策は単なる数字目標ではなく、日本社会全体が人口減少と多様性の現実をどう受け止めていくかという大きな分岐点に立っていることを示しています。

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